bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

『夏目漱石』十川信介著 岩波新書 を読んで

 

『夏目漱石』十川信介著 岩波新書

 

ロンドン留学中の漱石は、下宿の部屋にこもり、勉強ばかりしていた。そのためか精神が不安定になったが、その危機を克服したのは、なんと自転車に乗ることだった!

 

自転車に乗る
女主人のミス・リールの勧めで、漱石は自転車の練習をすることになった。もともと「発狂」ではなく強迫神経症ともいうべき病気なので、戸外に出て運動することは健康回復に役立った。というより、それに取り組む気になったこと自体が、回復の兆しが見えはじめたことを意味する。


その無様な曲乗りのような姿を女学生に笑われたり、巡査に場所を選べと注意されたり、曲がり角で後続の乗り手を落としたり、鉄道馬車と荷車の間をすり抜けようとして落車したり、「大落五度 小落は其数を知らず」というていたらくであった。

 

私も体調がすぐれないとき、かかりつけの先生から、「人間も動物だから、体を動かさないといけない」と言われたことがあります。


ゲームやパソコン漬けだったり、本ばかり読んでいたりすると、漱石のように不調になるのでしょう。

自転車で克服したとは驚きました。

現代的というか、文豪のイメージとかけ離れているところがおもしろい。


夫婦別居
漱石の精神状態は6月の梅雨を迎えて悪化した。夜中になると癇癪を起こし、枕やら何やら手当たり次第に投げ、子供が泣いたと言っては怒った。鏡子はまた妊娠し、悪阻で苦しみ、肋膜炎で少し熱もあった。彼は女中も気にいらずに追い出し、鏡子一人を集中攻撃した。実家へ帰れとしきりに言うので、鏡子はひとまず子供を連れて中根家へ帰ることにした。ロンドンでは他人目を憚り部屋に籠ったが、自宅では一番親しいものに当たり散らすのが彼の病気の特徴である。講義の受けの悪さや、年度末試験の採点、面接の立ち会いなど彼にとっては愚にもつかない仕事の連続で、癇癪のこぶがどんどん大きくなっていたのだろう。

 

自転車のくだりは気軽に読めましたが、夫婦関係については、かなり深刻な内容でした。


奥さんの名前は「鏡子」さん。
漱石の振る舞いは、ちょっと言葉が出ないです。小説を書くような人は、こういう激しい一面を持ち合わせているのでしょう。


漱石は癇癪持ちですが、鏡子さん、さぞ苦労しただろうなと思わせる記述です。
漱石のダークな面を知りました。