bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

国公立大学二次試験 大阪大学文学部 国語 小説『海炭都市叙景』で大学入試現代文を味わう

 

大阪大学 文学部 2016年 前期

大学入試 現代文 小説
『海炭都市叙景』 佐藤泰志

河合塾のサイトで読むことができます。

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/16/ha1.html

 

文庫本でおよそ6ページ、冒頭から半分弱の分量。

冬山に初日の出を見に行った兄と妹の物語。歩いて下山すると言って別れた兄を妹は待ち続ける。兄は決して戻ってこなかった。


妹「わたし」の視点で描かれている。
文章は簡潔で的確。非常に読みやすい。兄と妹の会話にカギカッコはつかない。

 

受験生たちはどんな気持ちでこの問題に取り組んだのだろう。
おそらく感受性の鋭い人は、物語の世界に没入して、「わたし」の心情に共鳴して泣けてしまったのではないでしょうか。


こんな「泣き」の小説、よく出したなあというのがまず思ったこと。そして受験生の何人かは悲しくなりすぎて、他の問題に手がつかなかったのではないか。


どんな状況でもクールに感情を保ち、問題の分析と解答作成が可能な人材こそ、大阪大学にふさわしいのだろう。でも、こんな悲しい小説出題するなよと目頭を押さえながら、嗚咽をこらえる受験生が、本当は文学部にふさわしい感性を持っているとも考えられる。


問題作成をした大阪大学の先生はそこまで考えていたのかな。
近年まれに見る小説問題の良素材。すばらしい。必読です。小学館文庫で読めます。

 

海炭市叙景 (小学館文庫) 

 

 「note」に書いた文章を再掲しました。