bluesoyaji’s blog

読書、化石採集、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、文学、音楽、学び方などを書いています。少しでも高校生や受験生のみなさんの役に立てばうれしいです。

『生き心地の良い町』岡 檀著 講談社を読んで考えた

 

 

『生き心地の良い町』
岡檀 講談社

本日、読了しました。偶然、こんなニュースを目にして、考えることがあり、書いておきます。

 

成人の4人に1人が自殺を考えたことがあることが、厚生労働省の調査で分かった。21日に発表された意識調査で、過去に実施した2008年と12年の調査と比べて増加傾向にある。別の統計によると自殺者数は減っているが、厚労省は自殺に陥るリスクは根強いとみて対策を検討する。

朝日新聞デジタルよりhttp://www.asahi.com/sp/articles/ASK3P3QR5K3PUTFK005.html

 

この本で取り上げられた海部町は徳島県海部郡にあります。私が育った市が海部郡と隣接します。

若い頃の感覚で言うと、由岐町、日和佐町、宍喰町は観光や漁業でよく知られているけれど、海部町って何があったっけ?という感じでした。

通り過ぎたことはあっても、海部町に遊びに行ったことはありませんでした。


その海部町が、自殺のもっとも少ない地域として筆者の研究に取り上げられていることに関心を持ち、読んでみました。

著者の考える「自殺予防因子」として、5点が上げられています。
・いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい
・人物本位主義をつらぬく
・どうせ自分なんて、と考えない
・「病」は市に出せ
・ゆるやかにつながる

 

詳しくは本を読んでもらうとして、ざっくり紹介すると、海部町のコミュニティは、多様性を重視し、年長者が威張らず、政治に参画する人が多く、悩みやトラブルは早めに周囲に相談する、コミュニティの人間関係が固定していないで、人の出入りが容易であるといった特徴を持ちます。


いくつかのエピソードが紹介されているので、それを手がかりにして、これらの特徴を理解することができます。

 

そのルーツは海部町の歴史にあり、江戸時代に多くの移民が流入してできあがったという町の成立事情によるということです。近隣の町との際だった違いは、そこにあるそうです。

 

私が育った町も海部町と同様、海沿いの港町で、漁師もいて、人口の密集した町内がありました。


おおらか、のんびり、気前がよいといった気風はありましたが、海部町のような、人間が「賢い」という印象は感じません。やはり、海部町には独特のものがあるのでしょう。ちょっと住んでみたい気持ちになりました。

 

自殺やうつの原因を取り除くことは不可能だけど、自殺を予防する因子を見つけて、それを強化することで自殺やうつを減らしたり防いだりすることはできると思います。本書は大いにその参考となります。

 

最近は、若い人のあいだで、田舎暮らしや、田舎へ移住することがブームになりつつあるそうです。

でも、田舎といっても、海部町のような自殺の最少地域もあれば、自殺発生率の高い地域もあります。

もし、その地の特徴をよく知らずに移住してしまうと、地域にとけ込めず、転住を余儀なくされるでしょう。


その地域の気風、コミュニティの結びつきのありよう、人心、価値観などをできるだけ調べて理解した上で、田舎に移住する必要がありそうです。


そういう意味でも、本書は移住を考えている若者にも参考になります。

 

生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある