bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析や国語の勉強方法など。みなさんのお役に立てばうれしいです。

わたしが「わたし」を助けに行こう 自分を救う心理学 橋本翔太 サンマーク出版

わたしが「わたし」を助けに行こう 自分を救う心理学

橋本翔太 サンマーク出版

 

購入のきっかけ

・タイトルの「『わたし』を助けに」ということばに引かれて購入。

 

読み始めの印象は

・ソフトな語り口調で、すらすら読めます。

・若い女性がモデルのイラストがあり、読者の対象が若い女性に想定されているのだなとわかります。

 

内容は

・あなたの問題や悩みは「あなたを守るために」あなたの心が生み出したもうひとりのあなたが起こしている 

・それをナイト(騎士)と名づける

・ナイトとの対話を通して問題を解決する

・その具体的方法を紹介する

というものです。

読みやすくて数時間で読了しました。

 

なるほどと思った点

1部屋が片づけられない理由

部屋がスッキリすると、頭の中もスッキリして、不安や焦燥がより感じられやすくなってしまう。

だから、部屋が散らかっていることで不安や感情にふたをして自分を守っている。

 

2「時間がない」に隠された理由

時間ができると、やりたいことに取り組むことができる。でも、本気でやりたいことに取り組んでしまうと、結果が出てしまう。その結果を見るのが怖いので、「いつかやればできる」状態にしておきたい。可能性の中で生きた方が傷つかなくてすむ。

 

1も2も、自分のことだと思うくらいに納得しました。「一生懸命にやって、できなかったら落ち込むからやらない」と言う生徒は結構いたような気が・・

 

説明と方法

・ナイトくんの働きは「認知の歪み」のひとつ

心理学の専門用語はこれくらいしか出てきません。

・ナイトくんを理解し、対話すること、自分自身の謎を理解すること

・ナイトくんは幼少期の家庭の状況から誕生する。「自分でなんとかするしかなかった」経験をしたとき、自分を守ってくれる「親代わりの存在」を自らの心の中に作り出す

・ところが、大人になってからはナイトくんのやり方がうまくマッチしなくなり、問題や生きづらさを抱えてしまう

 

3章 ナイトくんと対話する方法

・具体的なワークが示されています

・実例が2例かなり詳細に示されています

 

気になったこと

・独力(一人)でナイトくんと対話するのは少し難しいかも。内省的、洞察力があり、自己分析のできる人でないとうまくいかないかも?

・専門家とカウンセリング的にするのが、初めての人にはわかりやすいのではと思いました。

 

最後に

著者の動画を見て、内容が腑に落ちる人は、うまく機能するのではないかと思いました。

 

 

ネタバレ注意 「紙の動物園」ケン・リュウ ハヤカワ文庫を読んで考えました

「紙の動物園」ケン・リュウ ハヤカワ文庫

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)


電車の中で読まないでください 涙が止まらなくなるから
ヒューゴー賞・ネビュラ賞・世界幻想文学大賞 3冠に輝いた「紙の動物園」
胸を打ち心を揺さぶる短編集
と文庫の帯に書いてあります。

また大げさなコピーだと思いながら読み始めると、涙があふれ出ました。
枯れてる爺の私にも涙を流させるものは一体何だろう。その疑問を解くために少しばかり読後に分析をしてみました。ネタバレがあります。気にする方は本編を読んでから目を通すことをおすすめします。

「紙の動物園」は一人称「ぼく」の記憶語りで描かれています。
以下に形式段落の要旨をまとめます。番号は私がつけたものです。

1母は泣きやまないぼくを台所に連れて行き包装紙で小さな虎を折る。
2父と母の出会いを父から聞く(高校生のころ)
3母の折る動物たちのエピソード
4新しい家に引っ越す(十歳)近所の女性の偏見にふれる
5近所の子マークとのトラブル。
6学校でのいじめ。母との距離が大きくなる。中国語への嫌悪
7母の入院(大学生、就活中)病室での対話、母の遺言と死
8引っ越しの片付け、ガールフレンドが折り紙の入った箱を見つける
9二年後、ぼくの前に虎の折り紙が現れ、ひざの上でほどけて一枚の紙に。母の筆跡で漢字が書き付けられていた
10ダウンタウンで中国人に手紙を読み上げてもらう。母の波乱に富む人生と息子への思いが綴られていた
11手紙に漢字の「愛」を書き、折り紙の虎に戻して家に向かう。

と、ざっくりとこんな要旨になっています。
なんといってもポイントは10の母の手紙の内容にあります。この小説の「泣かせる」要素が込められているので、分析していきましょう。

母の父母(ぼくの祖父母)は貧農、1966年の文化大革命で迫害され、母は自殺、父は連行され行方不明。母は十歳で孤児になる。香港のおじを頼ろうとするが人身売買の男たちに捕まり密入国して家政婦として売られ6年が過ぎる。助っ人の情報でカタログに載り、それを見たぼくの父と出会い、アメリカ人の妻になる。
孤独な生活。誰も理解してくれない。そこにぼくが生まれ、自分と父母の面影があるのがうれしかった。話し相手ができ、言葉を教えた。折り紙を作り与えた。幸せな暮らしを見つけた。
ところが、次第にぼくは中国人の目、中国人の髪を嫌い、母に話すのをやめた。あらゆるものをもう一度失う気がした。
どうして話しかけてくれないの、息子や

この手紙によってぼくは初めて母の内面の苦悩を知ります。
中国語が母のアイデンティティ、命そのものだったのです。ぼくがそれを拒絶し、母と心が通じあわなくなったのです。

ぼくの立場は、懸命にアメリカに溶け込もうとしたのでしょう。「アメリカ的な幸せ」を追求するために、自分を成り立たせている母の要素を否定したのです。それはある程度うまくいっていました。
一方、中国人としてのアイデンティティを失った母は、重病になり、折り紙に書いた手紙を通して息子に何かを伝えます。そしてそれはおそらく伝わります。(結末で「老虎」と家に向かって歩き出すことでわかります)

 まずは経済格差がもたらす悲劇(中国人同士の貧富の差、アメリカ人と中国人)があります。つぎに、歴史(飢饉、文革)に翻弄される庶民の姿があります。人種差別(ぼくに対する学校でのいじめ)、家族関係(父と母は言葉の壁による理解不足、母と息子は、ぼくが中国語を避けて母と口をきかなくなります)

ここに描かれた金の問題、親子関係の問題、社会に適合する問題、これらは大なり小なり誰もが抱える普遍的な問題です。このストーリーを読むことで、読者の抱える問題に何らかの刺激を与える、あるいは隠していたもの、意識下にあるものを揺さぶるのだと思います。

折り紙に命を吹き込んだ母の思いが清明節によみがえり、ぼくに母の愛を伝える、まるでマジックリアリズム的な折り紙のなす奇跡に、心を揺さぶられ、涙を流すのも不思議なこととはいえないのです。

 

 

小説や物語が好きな人におすすめ 「続ものがたり風土記」阿刀田高 集英社文庫

続 ものがたり風土記 (集英社文庫)

「続ものがたり風土記」 阿刀田高 集英社文庫

前回この記事で紹介した「ものがたり風土記」がたいへんおもしろく、すぐに読了したので、続編も読み始めました。

平衡感覚(岩手2)では宮沢賢治の「鹿踊りのはじまり」が紹介されています。原作を読むと、これがすばらしい。描写と言葉遣いが多彩で感心しました。

小説家の技(徳島1)は、私の故郷ということもあって、興味深く読みました。
「自日没」(にちぼつより)五味康祐の小説。これが読みたくなり、「刺客」という文庫に掲載されていたので早速購入しました(文春文庫)。ストーリー展開がおもしろく、映画化されてもいいと思います。
作者の五味康祐については、私が子供のころテレビに出ているのを観て、変わった人(奇人)だなと思ったのを覚えています。今の若い人にはほとんど知られていないでしょう。

(徳島2)「阿波の狸合戦」はジブリの映画「平成狸合戦ぽんぽこ」の原案のひとつとして知られます。徳島県人にとっては「金長まんじゅう」がお土産の定番であり、ソウルフードです。「金長まんじゅうゴールド」がおすすめ。

(徳島3)「阿波十郎兵衛」は名前を知っていたが、何をした人なのか知らずにいました。意外と複雑な事情があったことが紹介されています。
モラエスは阿波の女二人を愛したと聞いていたが、事実は異なる事を知りました。最期は孤独死のような有様だったとか。
モラエスの名は知っていても、作品を読んだことがある人は少ないでしょう。「徳島の盆踊り」講談社学術文庫がありました。早速注文。
モラエスが住んでいた家に近い町にいたことがあるので、懐かしく思いました。

海道の町(広島1)志賀直哉と尾道の関係がわかりました。「暗夜行路」のあらすじが参考になりました。この高名な作品を未読だったので、読んでみたい気になりました。

ほかの章も、物語に関するエピソードが興味深く紹介されています。
小説が好きな人、物語が好きな人には必携の本でした。

 

 

 

小説のネタ探しに役立つかも ものがたり風土記 阿刀田高 集英社文庫



ものがたり風土記 阿刀田高 集英社文庫 筆者が、文学に詳しい「市さん」とふたりで各地を巡り、その地に関わる物語について対話しながら考察するという形式で書かれている。 ふたりはまるで芭蕉と曾良の旅を思わせる。 筆者と市さんの博識と推理が興味深く、読み手を飽きさせない。 私は、特に滋賀県、琵琶湖畔に伝わる民話が恐ろしくもあり、面白かった。よく知られている「皿屋敷」も学ぶことが多かった。 物語がどのように作られ、変化して伝わっていくのか、その分析がすばらしい。 大岡政談、シンデレラ、千夜一夜物語、グリム童話など、ストーリーの共通性を巡っての考察は、推理が見事で、読んでいて心地よかった。

ものがたり風土記 (集英社文庫)



「インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。」 菅付雅信 ダイヤモンド社

 

「インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。」 菅付雅信 ダイヤモンド社


・クリエイターに必要なことはインプットの質と量 ・分野ごとのおすすめリストが充実している。
第 2 章 読書編 美大生に薦めるクリエイションを学ぶための 100 冊

第 3 章イメージ編 映画ベスト100、アート・写真ベスト100

第 4 章 音楽アルバムベスト100


私なら、読書編に近代文学も入れて、夏目漱石、宮沢賢治、谷崎潤一郎を薦めます。

音楽アルバムベストのブラックミュージックには、サム・クックが必聴ですね。


・AI の影響に触れているのも参考になります。

・クリエイティブな方面に関心があるが、どうやれば才能を開いていけるのか、伸ばしていけるのかわからない人に、実践方法を示してくれるおすすめの本です。

 

 

化石採集を4年ぶりに再開したら、アンモナイトが取れました

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4年ぶりに化石を採集しました

和泉層群のバキュリテス
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少しクリーニングしてみると
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10倍のトリプレットルーペで拡大してみました
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他にもバキュリテスが入っています
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全部で5体はありました
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手のひらに収まる小さな石なのにアンモナイトが密集しています

 

阿部公彦「文章は『形』から読む」を読んで、「論理国語」の問題点を考えた

阿部公彦「文章は『形』から読む」 集英社新書より
学習指導要領を読む を読み、考えをまとめてみました

 

 

「論理国語」論争

社会から「社会に出たときに接するような文章」をもっと扱えという声が高まり、駐車場の契約書、著作権についての法律の条文が例として示される

新学習指導要領で「論理国語」論争が起こる
「論理国語」ー「社会に出たときに接するような文章」を国語教育に取り入れる科目
これは「論理的な文章」や「実用的な文章」を中心に、文学的な文章を排除するもの
生徒は文学作品に接する機会が減るー批判
筆者は
「論理的なもの」と「文学的なもの」と分けられるのか
行政との認識のずれがある

 

「学習指導要領」の印象

引用
共通必履修科目により育成された資質・能力を基盤とし、主として「思考力・判断力・表現力等」の創造的・論理的思考の側面の力を育成する科目として、実社会において必要となる、論理的に書いたり批判的に読んだりする資質・能力の育成を重視して新設した選択科目である。
                  (高等学校学習指導要領 解説 国語編)


・余計な色がついていない
・ストレートで単純明快
・無味乾燥だが、必要なことは伝わる

「実社会において必要となる」文章の特徴を備える

 

筆者の批判

透明で明晰か
文章がどのように語られるかという表現形式
・内容が列挙的、箇条書き的にならべられている
   |
複数の語がセットになって出てくる
「資質・能力」「思考力・判断力・表現力等」「創造的・論理的思考の」
「論理的に書いたり批判的に読んだりする」
連用形が多用される
「を基盤とし」「を重視して」
・一本調子に文章が進む
・文言の重複がある

 

なぜこのような形をとるか
・様々な会議での討議や行政的な手続きなどがあり、その「まとめ」として書かれている  |
漏れのなさ、「たしかに言ったからな」という一種のアリバイ作り
 |
効果
「どうだ、言うことを聞け」と言わんばかり、君臨し、規定し、従属を命ずる構えが見え隠れする

・立派な文言のオンパレードを続けると、残念ながら文章としてはひどく内容が空疎な、こけおどしのようなものに見えてしまう
・「思考力」「判断力」「論理的」といったことばは、いかにも論理的風情を漂わせているように見えるが、こうした語彙を用いさえすれば明晰な、論理的な議論ができるとは限らない
・「君臨の論理」が先に立ちすぎ、「説明の論理」「伝達の論理」がなおざりにされている・必要な文言をもれなく盛り込みアリバイを完成させることが何より大事、読み手を説得しようなどとは考えていない
・「資質」「論理」「思考」がくりかえされることで、かえって読み手は注意を払わなくなる。力を失い、意味が希薄になる

 

まとめ
文章の「形」に注目すると、文章全体の背後にある意図や構えが見えてくる
・「実社会において必要となる」文章を読むためには、文学作品を読むことで鍛えられるような「形」への意識が必要だ
・誤っていたのは「論理的な文章」「実用的な文章」といった概念そのものだ
・「形があらかじめある文章」と「形が毎日新しく提案・更新される文章」という線引きをするべきだ
・「形」に興味を持つことを通して、文章一般とのつきあい方も深まる

 

なお、本書には、「本章のまとめ」もあります。要旨の確認に役立ちます。

 

次に、私が考えたことを書きます。

「論理国語」と「文学国語」について

論理国語と文学国語に分けられたのは、現場の国語教師の意見を取り入れず、上から新指導要領として下りてきたという印象があります。
「論理国語」の前段階として「現代の国語」を1年生で学ぶのが大半ですが、「現代の国語」で小説5作品を掲載した教科書が検定合格し、他の教科書会社から批判がわき起こりました。あいまいな検定基準が問題になったのです。
また、「論理国語」の教科書に文学作品を掲載した2社が検定に合格しています。
そもそも論理国語と文学国語に厳密に分けることに無理があり、この方針も今後見直されるでしょう。
なお、大学入学共通テストの2025年度では、国語の大問が1問増えます。その内容は「実用的な文章」になる予定です。
新学習指導要領で学んだ高校生が受けることになります。

新学習指導要領は、国語教師だけでなく、全国の高校生に大きな影響を与えています。
大きな改革にはなじみにくい国語科の科目の特性に対して、無理矢理「実用的な文章」という概念を導入したことで、得られるものと失われるものを吟味して対応する力が教師にも高校生にも求められています。

自分の才能を見つける方法、伸ばす方法が学べます

凡人が天才に勝つ方法―自分の中の「眠れる才能」を見つけ、劇的に伸ばす45の黄金ルール

「凡人が天才に勝つ方法」つんく 東洋経済新報社


日頃、高校生に接している私は、彼らの才能の見つけ方、伸ばし方に興味があり、参考になる本を探しています。
また、自分自身が還暦を過ぎても、眠っている才能?を探して伸ばしたいと思っています。
そこで出会ったのが、音楽家、プロデューサーとして活躍する「つんく」が「才能」について語ったこの本です。

読みやすいように工夫されていて、色で強調したり、見やすいレイアウトになっていたりします。読書が苦手な人にもお勧めです。

私の心に響いた一節を一部紹介します。

 

「自分は天才なんかじゃなく凡人である」と認めること
夢を見ることと「自分が天才だ」と思い込むことはまったく違う
そのうえで、自分の能力を高めていくのが「努力」である

 

「好き」の要素・要因を徹底的に自己分析し、自分なりのアイデアをプラスして、オリジナルに変えていくことが重要です

 

「中2のころ、好きだったもの」を思い出すと、自分の原点が見つかるかもしれない

 

上達したければ「反復練習」あるのみ

 

アイドルやミュージシャンといった芸能活動だけでなく、一般の仕事にも生かせる内容がわかりやすく書かれています。


よくある成功者の本で、俺のやったとおりにすればあなたも成功できるといった、とんでもない内容とはまったく異なります。
ひとことで言うと、つんくは「努力の人」、その努力の仕方を教えてくれる内容となっています。

気になった人は、つんくのnoteにこの本の紹介が載っているので、目を通してみるといいかもしれません。

 

おまけ
米津玄師さんについて触れられた箇所が三カ所あります。
米津さんが「KICK BACK」でモーニング娘。の歌詞を引用したことを紹介し、「うれしいですね」と書いています。


稀代の「名プロデューサー」つんくと「天才」米津玄師の出会いが、今後何かに繋がっていくとすばらしいものが生まれそうです。楽しみですね。