2017年 宮城教育大学 入試問題「活字中毒者は電子書籍で本を読むか?」内田 樹
宮城教育大学の入試問題で、内田達樹先生の電子書籍に対する意見が出題されていたので、読んでみました。
以下は要点のまとめです。
電子書籍の出現によって紙の本の命脈がつきるのではないか
結論ー紙の本はなくならない、紙の本という確固とした基盤抜きには電子書籍は存立できない
理由
電子書籍の第一の難点ーどこを読んでいるかわからない
全体のどの部分を読んでいるかを鳥瞰的に絶えず点検することー読書に必須の作業
マッピング(自分の位置を記すこと)は、人間が生きてゆく上で必須の能力
物語を読み終えた未来の私という仮想的な消失点を想定
↓
電子書籍は読み終えた私への小刻みな接近感をもたらすことができない
第二の難点ー宿命的な出会いが起こらない
書店では、題名も著者名も知らない本に、引き寄せられるように近づき、「自分が今まさに読みたいと思っていたその本」に出会う。
理由
・本の送り手が敬意と愛情を込めているー固有のオーラ
・「たまたま」手に取ってしまったという偶有性の保証ー「宿命の本」
電子書籍は、直感はなく、実需用対応の情報入力源
紙の本ー人間の本然的な生きる力の死活にかかわる
電子書籍の哲学的考察となっていました。大変興味深く読みました。
私自身は、ネット記事でブロガーがすすめていたamazonのkindleを購入し、使用しています。
それらの記事では、割引だ、何冊も持たなくて身軽だ、SNSに投稿しやすい、家が本に占拠されなくなったなど、kindleの多くのメリットが謳われています。
しかし、活字中毒といってよい私の感想は、内田樹先生が書かれているものと同じです。
私にとってkindleの難点は、ハイライトがうまくできないこと。他の人はどうなんでしょうか。私は一回で、ねらった部分をうまくなぞって設定できたことがほとんどありません。
何度か繰り返すうちに読書の集中力が切れてしまいます。
また、ページをめくる動作がうまくいかないことも多く、イライラしてきます。
この二点は使っているうちに慣れるだろうと思っていましたが、ダメでした。
最大の難点は、内田先生のいう「どこを読んでいるかわからない」ことです。
先が気になって、少しめくってみることや、全体のどのあたりを読書中なのか確認するといったことがやりにくいです。目次を見ても、ピンとこないのです。
実用書であれば、先に図やまとめのページに目を通しておいて、前から説明を読んでいくと理解しやすいこともあります。電子書籍ではそれができません。ページを自動でパラパラめくるモードがあればいいのに。
また、寝転がって読むことが多い私は、kindleのwhitepaperですら、片手で持つのは重く感じます。手首がだるくなる。kindleを支えるために、自撮り棒のようなアームが必要かもしれません。
デメリットばかりでなくメリットも当然あります。
部屋のあちこちに積み上げた本の山から、読みたい本を見つけ出すという作業が必要ありません。狭い自室を片づけるのに本の山が邪魔をすることもなくなるでしょう。
しかし、紙の本も読み終えたら、ブックオフやバリューブックスに売り払うという方法もあり、私もたまに利用しています。手軽にできます。
kindleは、おすすめの本を友達に貸してあげるということができません。
私は自分が読んでためになった健康関係の本を、帰省したときに母に読んでもらいたくてあげています。
kindleは、SNSに引用を投稿するのには便利ですが、友達に本をすすめるときは不便です。
若い頃、LPレコードを収集するのが好きで、数百枚集めました。たまには中身を知らずにジャケットがかっこいいから買うというジャケ買いをしました。はずれもありますが、たまに大当たりして、すばらしい音楽に出会ったこともありました。
kindleは漫画や雑誌が読みにくいです。特にカラーのものは、kindleが白黒なので、読む気にならず残念です。
現在はkindleで買っている方が多いですが、これは大事だと思う本は、紙の本を買っています。
人それぞれ、何を優先的に考えるかで、電子書籍の価値が違ってきます。