東京大学 2020年 前期 国語
出典『神の亡霊』小坂井敏晶 東京大学出版会
第一問 現代文を解いてみました。
段落の要旨を形式段落の番号順に載せています。
1学校教育で階層構造が再生産される
教育機会の均等で貧富差の解消、公平な社会にと期待
2機会均等のパラドクス
戦前-庶民と金持ちが別々の学校に行く
戦後―一律の学校制度
どちらも結果は変わらない
見かけは自由競争だが、実は出来レースーより大きなハンディキャップを弱い者が背負う
貧乏が原因で進学できないなら当人のせいではない、不平等な社会は変えるべきとなる
自由競争の下では、成功しないのは自分に能力がないから
3アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)
個人間の能力差には適用されない
人種・性別など集団間の不平等を是正すれば、あとは各人の才能と努力次第
4学校は子供に平等に知識を培う
能力別に人格を格付けし、差異化する矛盾
能力主義(メリトクラシー)自らの力で未来を開くー機会均等
かえって階層構造を固定し、閉じるイデオロギーに
近代の人間像が導く必然
5家庭条件による能力差は避けられない
6近代は個人を生み出したー自由意志に導かれる主体
家庭条件や遺伝形質(外部)から切り離された才能や人格(内部)を根拠に自己責任を問う
7 これは虚構だ
才能や人格は遺伝形質に社会影響が作用して形成→我々は外来要素の沈殿物
偶然も外因
意志や意識は記憶と外来情報の相互作用を通して形成
自己責任の根拠はない
8当人の所与である以上、当人の責任―能力差を自己責任とみなす論理
9封建制度やカースト制度―神や自然など、区別の根拠が共同体の外部にあるため、社会秩序は安定
10自由な個人が共存する民主主義社会―平等が建前
しかし現実にはヒエラルキー、貧富の差が発生―既存秩序に不満、社会は不安定
11支配関係に対する被支配者の合意がなければヒエラルキーは長続きしない
12貧困は差別や社会制度のせいではなく、自分の資質、能力が他人より劣るからー自己防衛が不可能、人間には住めない地獄の世界
13さらなる平等化の必要が叫ばれる理由
人間は常に他者と自分を比較し優劣をつける
民主主義社会では人間に本質的な差異はないとされる
お互いに比べあい、小さな格差に悩むー自らの劣等性を否認するため社会の不公平を糾弾する
14格差を正当化する必要―人間は自由であり、努力しない者の不幸は自業自得だとする
近代は不平等を隠し、正当化しただけ
要約の感想
12、13段落がわかりにくかったです。もう少し噛み砕いた説明があればわかるのですが。
解答例は、河合塾や代ゼミが公表しているので、そちらを参照してください。
https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/20/t01.html
解いてみた感想
わたしの解答は、予備校の解答例のようには要約や言いかえが出来ていなくて、本文の引用をつなぎ合わせたものになってしまいました。
受験生のみなさんは、解答例のようなきっちりとした文はなかなか書けないのではないでしょうか。
でも、がっかりしなくてもいいですよ。予備校の講師は、その道のプロですから。
解答例と少しでも近いところがあれば良しです。
さて、東大生(受験生)は、この問題文をどう読んだのでしょうか?
共通テスト風に発展問題を考えてみました。
東大を受験する人は、
親は金持ち(*下記参照)
家庭条件○
遺伝形質○
社会影響○
*「東大生の親は金持ち」は本当だった!(キャリコネ編集部)
https://news.careerconnection.jp/?p=6969
A君「自分は恵まれているなあ。感謝して、社会に少しでも貢献できるようになろう」
B君「東大に来ない人たちは、努力、意識が足りない。自己責任は当然だ」
Cさん「東大生は、国家や企業、団体のリーダー的立場になることが期待されている。社会にはそうなれない人たちが多数いるので、その人たちの境遇にも思いを馳せなければならない…」
とにかく、こういう内容の問題文を選ぶのも、ひとつのメッセージであるので、東京大学の出題の意図を聞いてみたいですね。