15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その5(最終回)
関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史
初めての人は、こちらを参照してください。
今回で最終回になりました。
問5 近世の学習方法と近代学校での教育方法の違いについて
12段、13段、14段を見ます。
12段 時代の変化によっても、学習における教科書の位置は変化しない
13段 近代学校教育―限られた時間、多数の生徒、大量の知識→「教科」に類別、発達段階や年齢を考慮した合理的カリキュラムやプログラムにしたがってなされる
言葉によって「教え込まれ」ていく
14段 教える主体としての教師が中心、「教え込み」の教育方法の原理
これらのポイントを確認して、選択肢を見ていきます。
a 11段にあった「教師は~案内人」の記述に注意。後半も上で見た内容と一致するので○。
b 暗記という方法は時代遅れが×。
c どのような「教科書」を教えるかが、教師の重要な素養となっていたが×。
d 異なった「教科」が教えられることになったが×。
e 「教科書で学ぶ」という構造で成り立っておりが×。
したがって正解は、aでした。
問6 近代学校における「教え込み」の原理について
これも13段、14段が該当します。
選択肢を見ていきましょう。
a 一斉授業の形式、効率的、合理的で正確に教える、概念化され理論化され言語化された知識が教え込まれるなど、すべての要素が○。
b 教える知識に段階性をもたせた「教科書」→「教科」の間違いなので×。
c 「教科書」→「教科」の間違いなので×。
d 「教科書」→「教科」の間違い、教師はさらに「教科書」の内容を補って、大量の知識を教え込むが×。
e 一定の合理的なカリキュラムやプログラムの中で追求された大量の知識が一方的に教え込まれるが×。
したがってaが正解です。
どうでしょう、選択肢の文言が微妙ですね。どうかと思うものもあります。これでは、あら探しにすぎないという見方もありますが…
気を取り直して問7です。
問7 日本の学校教育について
15段、16段を見ると、
15段 明治初期に導入された日本の近代学校は、ヨーロッパの近代学校教育を忠実に採り入れた。教育方法も「教え込み型」の原理
16段 しかし日本の学校の教科書観は明らかに教科書が重視されてきた。これは近世との連続性がはっきり見える。長い歴史のなかで形成された文化に滲み込んだもの
↓
そう気づくことで、教育の諸問題の、見えなかった「根」の部分が見えてくる。問題をときほぐす改革の手だても構想される
選択肢を見ると
a やがて欧米とは異なり独自の教科書観が浸透するところとなったが×。後半も×。
b あらたな改革の「根」の発見につながるが×。見えなかった「根」が見えてくるが正しい。
c 「教科書で教える」が×。
d 「根」から見直すべきことを示唆するが×。
e 欧米とは異質のように見える、長い歴史のなかで形成された文化~、「根」のところからときほぐす糸口ともなる、すべての要素が○。
したがってeが正解です。bとdが微妙ですね。まぎらわしい。
河合塾の解答も、(bとdも排除しがたい)と異例の注釈付きでした。
選択肢が一つ4行もあり、情報量が多いなかで、この微妙な言葉遣いの違いのみを正否の判断とするのは「いかがなものか」と思います。
これは、センター試験廃止の後の「共通テスト」を意識した設問ではないかと思われます。
端的に言うと、本質的な読解よりも、情報処理能力を重視するというものです。
これは、本当の意味の国語力ではありません。
関西私学の雄である関西大学が、この情報処理力を重視する、安易な傾向に流されてはいけないと思います。
最後の漢字問題です。
問8
あ フウチョウ 風潮 a 丁重 b 潮流 c 大和朝廷 d 調書 e 徴収 正解はb
い リンショ 臨書 a 林間学校 b 臨海学校 c 駐輪場 d 隣接 e 風鈴 正解はb
う シュウレン 修練 a 修理 b 終了 c 就寝 d 執念 e 囚人 正解はa
え ソザツ 粗雑 a 簡素化 b 粗衣粗食 c 狙撃 d 阻止 e 直訴 正解はb
お ジュンキョ 準拠 a 従順 b 潤沢 c 準備 d 巡回 e 殉職 正解はc
漢字問題は、選択肢の漢字もしっかり確認しておきましょう。他で出題されることもあるからです。
以上で、関西大学の問題は終わりました。みなさん、どうでしたか?
難しいところもありましたが、全体的には、標準的な(やさしいという意味ではなく)良問だと思います。
現代文問題の解き方の基本を学んで、どんどん他の過去問にも挑戦してみてください。
少しでも参考になれば、うれしく思います。