東大2026年度 前期文科 国語 第四問(小説)「宿雨のあとで」を解いてみた
*以前の投稿を編集し直したものです
問題文はこちら(東大サイトへのリンク)
出典は仲谷実織「宿雨のあとで」。設問は全部で4問、すべて「説明せよ」という記述式です。
このタイプの問題は、いきなり解答を見て内容を理解するより、「本文のどこに注目したか」を先に押さえたほうが、次に似た問題が出たときに使える力になります。ここでは設問ごとに、着目ポイント→解答の考え方の順で見ていきます。
設問(一):なぜ翔子は草を踏みつぶしたのか
傍線部は「クリスマスツリーのようにも見えるそれを、彼女はやがて踏み潰した」
着目ポイント
- 翔子は親の都合で引っ越しをさせられ、住み慣れた環境や人間関係から急に切り離された
- 牛舎の匂いや見慣れない草など、新しい生活になじめず嫌悪感を抱いている
考えてみよう:この2点だけから、あなたなら「なぜ踏みつぶしたのか」をどう説明する?
自分の言葉で書いてみよう(以下の設問も同じ)
解答の考え方
翔子は自分の意思とは関係なく生活が変わってしまい、気持ちの整理がついていない。慣れない場所への戸惑いやいら立ちが、目の前の草を踏みつぶすという行動に出た、とまとめられます。
設問(二):弥生はなぜ悪戯っぽく笑ったのか
傍線部は「彼女——弥生さんは、目尻に皺を浮かべ、悪戯っぽくほほ笑んだ」
着目ポイント
- 弥生さんの畑は、周りのきれいに手入れされた畑と違い、雑草も混じった自然な状態
- 弥生さん自身はその畑に自信を持っている
- 犬のアンバーとなら気が合いそうな翔子に、この畑を見せたいと思っている
考えてみよう:もし弥生さんの畑が周りと同じようにきれいに手入れされていたら、この「悪戯っぽい笑み」は生まれただろうか?
解答の考え方
弥生さんは、他とは違う自分の畑を誇りに思っており、翔子ならきっと気に入るはずだと考えて見せようとしている。その企みが成功しそうな予感に、思わず表情がゆるんだ、と読み取れます。
設問(三):なぜ「わたし」の声もはずんだのか
傍線部は「そう答えるわたしの声もはずんだものになっていた」
着目ポイント
- 翔子から「授業参観には来ないで」と言われていた
- 夫に相談しても曖昧な返事しかもらえなかった
- 思い切って、授業参観の代わりに弥生さんとアンバーに会いに行こうと提案した
- 翔子が予想以上に驚き喜んだ
考えてみよう:「わたし」が声を弾ませたのは、翔子のためだけだろうか? 自分自身の気持ちも関係していないか、想像してみよう。
解答の考え方
気が進まない授業参観をやめて、弥生さんの畑に行くという提案をしたところ、翔子が思った以上に喜んだ。その反応を見て「わたし」自身も、この選択でよかったと安心し、声が弾んだと考えられます。
設問(四):なぜ思わず翔子を見てしまったのか
傍線部は「彼女の言葉に思わず翔子を見てしまう」
着目ポイント
- 弥生さんが口にした「無理にやらせなくても育つ」「手をかけすぎるとかえってうまくいかない」という農作業の話
- その言葉が、そのまま子育てにも通じるものだった
考えてみよう:農作業の話が子育てのヒントに聞こえたのはなぜだろう? 二つに共通する何かを言葉にしてみて。
解答の考え方
弥生さんの何気ない一言が、「わたし」にとって翔子への接し方のヒントのように響いた。親の都合で子どもを追い詰めすぎてはいけないのでは、と気づかされ、思わず翔子の様子をうかがってしまった、とまとめられます。
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読み方のコツ
この小説のように、登場人物の言葉や行動の変化に注目すると、心情の理由が見えてきます。特に「なぜ◯◯したのか」を問われたら、その直前の会話や出来事を本文中から探す、という手順を崩さないことが大切です。
最後にひとつだけ
もしあなたが翔子の立場で、親の都合で知らない土地に連れてこられたら——新しい場所になじむまで、何を手がかりにすると思う? 答えは出さなくていい。次に誰かの気持ちを説明する設問に出会ったとき、ふと思い出してもらえたら十分です。
参考
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出典の仲谷実織「宿雨のあとで」はこちらに掲載されています
