2021年から実施される大学共通テストの出題方法などについて、大学入試センターから発表がありました(2020年1月29日)
大学入学共通テストについての資料はここにあります。
https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/index.html
特に注目の国語、数学、英語については、
国語 マーク式 80分 200点
数学Ⅰまたは
数学Ⅰ・数学A マーク式 70分 100点
数学Ⅱ または
数学Ⅱ・数学B マーク式 60分 100点
英語 マーク式
リーディング 80分 100点
リスニング 60分 100点
ただしリスニングは、60分のうち解答時間30分、作動確認、音量調節が30分
国語は記述問題がなくなり、センター試験と同じ80分、数学Ⅰまたは、数学Ⅰ・数学Aが70分に、英語はリーディングとリスニングがそれぞれ100点の配点になりました。
問題作成方針
注目の文言を一部抜粋します。
第Ⅰ 問題作成の基本的な考え方
〇 知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視する
〇 「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場面設定
高等学校における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮し、授業において生徒が学習する場面や、社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等を基に考察する場面など、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する。
「授業改善のメッセージ性も考慮し」とあるが、入試で高校の授業を改善するという発想がそもそも間違っていると思います。
ちゃんと高校の現場の意見を聞き、教師数を増やすなど地道なことをまずやらないと、改善などできません。
「場面設定を重視する」とありますが、すぐにネタ切れになる、あるいは、問題がパターン化されるでしょう。
そうなると「深い学び」を問うはずが、すぐに受験テクニックに組み入れられてしまうでしょう。
第2 出題教科・科目の出題方法、問題作成のねらい、範囲・内容等
〇 問題作成のねらい、範囲・内容
「なお、高等学校における通常の授業を通じて身につけた知識の理解や思考力等を新たな場面でも発揮できるかを問うため、教科書等で扱われていない資料等も扱う場合がある」
「新たな場面でも発揮」とは、応用力があるかを問いたいということ。センター試験など従来の入試問題は、知識偏重だと批判されていたので、変えたいのでしょう。学びの基礎としての知識は大事だと思うのですが。
「教科書等で扱われていない資料」を出すというのは、センター試験が教科書から出されると言い続けられてきたことへの反動でしょうか。あるいは、出題内容への批判をかわすねらいがあるのかもしれません。
第6 大学への成績提供等
〇 「科目ごとの9段階の段階表示および国語における大問別得点を提供する」
「9段階の段階表示」の内容がわかりません。ベネッセのGTZ(学習到達ゾーン)のようなものを想定しているのでしょうか。謎です。まさかベネッセのシステムに丸投げではないでしょうね。
出題教科・科目の問題作成の方針
国語について
「文章から得られた情報を多面的・多角的な視点から解釈したり、目的や場面等に応じて文章を書いたりする力などを求める」
これは、「実用化」を求めているからでしょう。実用文を書く力をわざわざ大学入試で求める必要があるのか疑問です。
「情報」を解釈するとなっている点に注目です。深い思考力や創造的な発想力を求めているのではなく、結局は大量の情報を手際よく処理する力を求めているのです。
共通テストで求める「国語力」がこれでいいのかなと疑問に思います。
「問題の作成に当たっては、大問ごとに一つの題材で問題を作成するだけでなく、異なる種類や分野の文章などを組み合わせた、複数の題材による問題を含めて検討する。」
これは、試行テストにあったような問題形式のことで、契約書やグラフ資料など複数の資料を読ませて「思考力」を問うもの。
現在の高校生が使っている国語の教科書には、このような文章はないです。しいて上げるなら、「国語表現」の教科書に、プレゼンテーションやポスターなどの「実用的」な資料は載っています。
率直に言うと、グラフや契約書など、無味乾燥の資料を読んでおもしろいと思う高校生がどれだけいるのでしょうか。
生徒に学習への関心を持たせる重要なポイントは、その文章が知的におもしろいかどうかです。
共通テストで出される問題文がどんな内容になるのか大いに注目したいですね。
感想
共通テストの難易度は確実に上がります。国語だけを見ても、センター試験と同じ80分の中で、複数の資料や文章を読み、多角的な考察が求められる設問がなされる。
どう考えても時間が不足します。センター試験でさえ、大問4問をそれぞれ20分で解くと、マークの確認時間がありません。
それ以上に共通テストは、時間不足になる可能性が高いです。しかも、試行テストは、新たにはやらない。実際に受験してみないとわからないのです。
受験生には酷な試験となるでしょう。
あくまで私見ですが、国公立大学が第一志望ではない、私大志望の受験生は、共通テストを敬遠するのではないでしょうか。
上位校はともかく、中堅校以下の大学を受験する人は、その大学のAO入試、公募推薦入試から受験し、一般入試は大学の個別の入試を受けることで、共通テストを受けなくてもチャンスが複数回あります。
どんなものか予想できない共通テストの対策に時間をかけるより、今まで通りの勉強に時間をかける方がいいと考える人が出てくるでしょう。
来年度の共通テストが難しくなり、ややこしい問題が増えると、それ以降の受験生は減少し、共通一次試験の初期のように、国公立大学を目指すものしか受けない試験になっていくかもしれません。
共通テストを受験する人が減少すると、国公立大学の競争率は下がり、ベネッセなど模擬試験を行っている教育産業は打撃を受けるでしょうね。