bluesoyaji’s blog

大学入試問題の分析、国語の勉強方法、受験勉強、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

こんなにおもしろい大学入試評論文、見たことない まるで短編小説のおもむきです 関西学院大学 文 2020 加藤尚武「かたち」の哲学

こんなにおもしろい大学入試評論文、見たことない
まるで短編小説のおもむきです 関西学院大学 文 2020 加藤尚武「かたち」の哲学

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形式段落に通し番号をふりました。

本文の要旨です。

1自分の顔を客観的に判断することはできない
4駅の鏡に映るみすぼらしい男の姿を一瞬自分と思わないで見ていた
6恋人のあやめは姉のかきつばたと双子の姉妹である
12私には二人の見分けがつかない
14ブリダンの驢馬は、二つのまったくおなじ干し草の山の真ん中にいる驢馬は飢えて死ぬという話
16ショーペンハウエルはどちらを選んでもいいと反論した
18結婚は、見分けがつかないからどちらを選んでも好いというわけにいかない
19問題は、存在として違う人間が認識としては違いがないという、存在と認識の不一致である
22違う存在が同じ形を持つということは、存在と形とが不可分でありながら、形が存在とは分離できるという形の本性による
23姿というものは、その本体から抜け出して、存在とは別のものになってしまう


本文分析


6スタンダール フランスの小説家
ザルツブルクの小枝 「恋愛論」恋愛によってその対象を美化させてしまう心理
ザルツブルクの塩坑で枯れ枝を投げ込み、二三か月すると、輝かしい結晶におおわれてダイヤモンドで飾られたように見えることから

8ラファエル前派 19世紀中ごろイギリスで活躍した美術家、評論家のグループ
象徴主義美術の先駆 明治時代日本にも紹介され、影響を与えた 夏目漱石 「オフィーリア」

15万葉集「ママノテコナ」 真間の手児奈(古)
16ショーペンハウエル ドイツの哲学者 ニーチェやワーグナーに影響を与えた
21パスカル フランスの哲学者 「パンセ」 人間は考える葦である

 

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設問の解説と解答です。

問一
a方針 イ辛酸  ロ羅針盤  ハ森羅万象 二虚心坦懐 ホ神妙
b偏見 イ編隊  ロ偏屈  ハ唐変木 二片鱗  ホ遍歴
c予期 イ発揮  ロ起死回生 ハ画期的 二数奇  ホ綱紀粛正
d模様 イ最寄り ロ繁茂  ハ曖昧模糊 二水面 ホ喪中

問二 e由緒  f次第  g過程

問三 自分の顔を客観的に見ることが不可能ではない
例は3段、4段
駅の鏡に映る「みすぼらしい男の姿」ー自分だと思わないで自分の姿を見ていたはず
二が正解

問四 「晴れがましくもない」
「晴れがましい」ー多くの人から祝福され、光栄に思う気持ち
イが正解

問五 直前の「ザルツブルクの小枝」がわからなくても「自分の恋人だから美しい」から考える
正解「あばたもえくぼ」ー好意をもって見ると欠点までが美点に見えること

問六 展覧会場で妹あやめと思われた姉の気持ちは
「すばらしい記憶力」には「一種の暗い影のようなものがつきまとっていた」ので、「当てつけ」か「皮肉」
「鼓舞」と「恨み」では「恨み」が適切
ホが正解

問七 14段と15段から「どちらを食べるわけにもいかなくて」「どちらを選ぶこともできずに」とある
ホが正解

問八 16段ブリダンは選択にはかならず何かの理由や原因があるという前提
ショーペンハウエルは選択に遺留が必要という前提そのものを疑う立場
イロハはブリタン、ニホヘはショーペンハウエル
「どちらでも好いという気持ち」はショーペンハウエル
へが正解

問九 「甲しないで」手当たり次第に干し草を食べればいい
「結果を気にしないで」の意ークヨクヨが正解
「胸に乙とくる重し」ー「重し」ズシンが正解

問十 19段Ⅲの直後「存在として違う人が認識としては違いがないという存在と認識の不一致」
存在として違う人ー別人格、姉と妹
認識としては違いがないー外見が同じ
二が正解

問十一 19段傍線部⑤の直後「常識」に注目する
20段「われわれの常識的な世界は」の直後が正解

問十二 
イ5段、6段から×
ロ記述なし×
ハ「形」の根本問題が×
二どんな「存在」でもその「形」の違いを見分けられる×
ホ22段「形が存在とは分離できるという形の本性」とあるので正解

 

解いてみて、どうでしたか?

大学入試で、「あやめとかきつばた」のエピソードを読まされると、おかしくて解いている途中に笑ってしまいそうです。まるで短編小説みたいですね。

ただ、「存在と形」という哲学の話題なので、このエピソードをちゃんと後半の論考につなげられるかが大事です。
頭が固い人には手ごわい問題だったかもしれません。

さすが関学ですね!文章選択のセンスがいい。共通テストも見習ってほしいです。

大学入試 国語 現代文 評論問題の勉強のために 同志社大学 法・グローバル 2018年度 佐伯啓思 「経済成長主義への訣別」

大学入試の現代文を取り上げ、読解方法や設問の解法を解説します。

 

受験生が読んでおもしろいと思える内容の本文、なんらかの知的な学びがある本文を選びました。


読んでもさっぱりわからない、まったく興味を引かれない本文では、勉強のやる気が起こりません。


結構、そういう問題文が多いのが今の大学入試の問題点の一つだと思います。
複数史料を読ませるのもいいけれど、その中身がスカスカの文章では、つまらなく、やってられない…

 

今回の佐伯啓思「経済成長主義への決別」は、とてもいい文章です。


内容も当然ですが、論理の展開が特にすばらしい。受験生だけでなく、論理的な文章を読む力をつけたい人にも、ぜひ一読をおすすめします。

私が勤める学校の高3生の夏期補習で取り上げた問題です。 

 

同志社大学 法・グローバル 2018年度 佐伯啓思 「経済成長主義への訣別」

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経済成長主義への決別1

経済成長主義への決別2

経済成長主義への決別3

経済成長主義への決別4



本文の要旨をまとめました

・グローバル資本主義は人間の欲望を解放することが幸福につながると考える。キリスト教の持つ普遍的救済の焼き直しである。西洋文化の根底にある拡張と普遍性を求める意思がグローバリズムを生み出した。


・ しかし人は歴史的に与えられた自然環境や世界や精神的性向の中で生きるほかない。その中で安寧をえ、快適性を感受しようとする。


・グローバリズムや情報網の世界的な拡張を受け止めると同時に小規模な地域、組織、場、集団、仕事を保持しなければならない。 共感があり、相互に信頼でき、相手の性格や事情を了解できる組織や集団を作れない社会では、人々は神経をすり減らし、創造性に欠け、仕事への責任感を持てなくなる。


・拡張と進歩の価値に囚われない「そこそこ」で自足し、「足を知る」原理が必要となる

 

本文分析


本文を理解するために必要な語句を抜き出しました。
番号は形式段落のものです。

2グローバリズム
3ユートピア
15スミス アダム・スミス「道徳感情論」経済学の父
16シューマッハー ドイツ生まれ、イギリスの経済学者「スモールイズビューティフル」でエネルギー危機を予告
18ヘーゲル ドイツの哲学者 観念論、弁証法 「精神現象学」
21トゥクヴィル フランスの思想家、政治家

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設問の解説と解答

設問1

設問2

 

一「強調している」につながるもの

1眉に唾つけてー騙されないように用心する
2目を見開いてー目を大きく開いて
3鼻を高くしてー得意になって
4口を酸っぱくしてー忠告など同じことを何度も繰り返して
5舌を巻いてー感心したり驚き呆れたりする

 


ア直前「様々な形とサイズの」ーいろいろなもの
イ直前「世界中に同じところで生産される」ー同じようなもの
ア多様性 イ標準的 2が正解

 

三「この変化」11段「西洋近代社会は~信じたのである」
「幸福の条件」2段「物的に裕福になるもののみが幸福になる」
2が正解

 

四「人間存在の基本的な条件」=「人間というものは、小さな、理解の届く集団の中でこそ人間でありうる」
12段「常に出会い、常に傍らにあるモノや人や場所~知るだろう」
3が正解

 

五「適切な組織」とは
15段「『共感』のうちに自然と道徳心が生じるのが地域共同体」
16段「地域コミュニティは、確かにグローバリズムに対抗する『数多くの小規模単位を扱えるような構造』」
17段「組織や集団においてもまた」「相互に信頼できる仲間があって」
18段「組織と仕事は、人々の道徳性の母体にもなる」
2が正解

 

六 4、6、8が正解

 

七 
22段 最大化を目指すのではなく、 「そこそこ」で満足する精神、「足るを知る」の原理

解答例

適切な規模の集団の中で、最大化ではなく、自足することを覚えるべきだと考えている。

 

問題を解く時間は気にせずに、じっくりと読解をしましょう。

グローバリズムを批判した筆者の考えが理解できて、現代社会を見る新たな視点がえられます。

 

「国語の科目再編は無理がある」読売新聞3月30日朝刊社説を読んで考えた

読売新聞3月30日社説「国語の科目再編は無理がある」改め「読売新聞の変節にはウラがある」

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引用

実用的な文章を読み、論理的に書く力の育成は重要だが、その力は文学作品などに触れることで高まるのが普通だ。『実用的・論理的』な文章能力というものが別個に存在するわけではない

学校現場では論理と文学を無理に切り分けず、バランスよく学ばせることが大切だ

 

そのとおりなのだが、今までの読売新聞の主張は全く違っていた。

それを過去にツイッターで指摘した。(ツイート参照)

読売新聞の社説、今頃になって、論理国語に反対と主張 今年4月からの学習指導要領実施で現場は混乱が目に見えているので、論理国語に反対したという証拠作りかと邪推させる記事。手のひら返しですね。 #論理国語 #読売新聞… https://t.co/dTpJdtGs7X

本日の読売新聞朝刊と夕刊の記事 #共通テスト 国語問題作成委員の辞任を報じる 産経ニュース「利益相反などの疑念を指摘されて委員を辞任していた」と比べると、大したことではないとでも言わんばかりの記事内容だ 大学の先生なら、「李下に冠… https://t.co/KILkvP4in8

記述式だけでなく、新学習指導要領も注意せよ  本日の読売新聞より 「論理と文学を分けて国語力の向上につながるのか、懐疑的な見方を示す識者は多い」と書き、 立命館アジア学長の出口治明先生は「感受性の柔らかい思春期に、文学の素養を身に… https://t.co/Ae9wRnUpO6

 

読売新聞が珍しく、「高校国語改革を考える」#論理国語と文学国語 大森先生、俵万智さんの意見は、新学習指導要領に批判的。読んで納得した。 早稲田大学の幸田国広先生は、論理国語に賛成の立場。主張を読んでもピンとこない。で、調べてみて驚… https://t.co/RxPQ6oDbtx

 

読売新聞の主張が180度変化したということは、国(文科省)もこの改革の失敗を認識し、軌道修正を行おうとしていることを示しているのではないか。

 

間違いははっきり認めて、なぜそんな失敗が起こったのか、政策決定の過程とその責任の所在を調査、報道してほしい。

そして二度とこんな失敗が起こらない仕組み作りを提言してほしい。国の将来の安泰を願うなら、それが報道の責務である。失敗の被害をこうむるのは、生徒たちなのだから。

 

 

「『論理』か『文学』か」読売新聞3月30日朝刊3面を読んで考えた

読売新聞3月30日三面「『論理』か『文学』か」

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引用

 

これほど客観的な基準がない検定意見は初めてだ。桐原書店編集責任者

「文学国語」は11点全点が評論を取り上げた。新指導要領は文学国語では、文学に関連した評論を扱うことを認めているためだ。10本以上載せた筑摩書房の担当者は「文学と論理を分割するという指導要領の趣旨に違和感を抱いた。文学国語にあらゆる文章を載せた」と打ち明ける。

 

分けることへの反対意見として

日本学術会議の「古典文化と言語分科会」は20年の提言で、「『論理』と『文学』があたかも相反する領域であるかのような誤解を与える」と主張し、国語の選択科目を改善するよう訴える。

国語教育に詳しい日本大の紅野謙介・特任教授(日本近代文学)は『国語は論理と文学に分けられるものではない。文学には様々な人物の立場や理屈が絡まり、複雑な論理を捉えていくという要素がある。教科書検定の結果からも新指導要領の破綻が表れている。文科省は現場の声を聞き、実態に即した柔軟な対応を取るべきだ』と指摘する。

 

国(文科省)は、PISAの成績が低迷したことと、経済界などからの実用的な国語力の要請とを理由として、論理と文学を分けた。

PISAのテスト内容については専門家からの批判もあり、順位の上下だけを見て国語教育の改革をするのは早計である。

 

経済界も実用的な国語力を新入社員に求めるなら、入社後に教育すればすむことであり、その手間とコストを教育現場に押しつけるのはお門違いだ。

教育の中身に文句をつけるよりも、必要とするプログラムを用意し、教育現場に無償で提供するくらいのことを考えましょう。アイデアも金も出さずに要求だけしても、多忙な学校現場は無理ですよ。

 

 

高校国語 論理・文学分割 読売新聞3月30日朝刊1面記事を読んで考えた

読売新聞3月30日一面記事「高校国語 論理・文学分割」

 

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引用

 論理国語と文学国語に小説、評論が混在した理由としては、限られた授業時間数の中で、学校現場には小説と評論の双方を学んでほしいという強いニーズがあるほか、教科書会社自体にも両者(*論理と文学)の切り分けは難しいという意見があるためだ

*は筆者がつけました

 

なぜ国(文科省)は論理と文学に分けることにこだわったのか。誰が言い出し、誰が賛成して決定されたのか、それを調査し分析するのが報道の役割ではないでしょうか。

 

参考 中央教育審議会 教育再生実行会議

参考資料1 名簿(中央教育審議会委員、教育再生実行会議構成員):文部科学省

 

「模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書」佐宗邦威 さそうくにたけ PHP研究所を読んで

「模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書」佐宗邦威 さそうくにたけ

PHP研究所

 

読了しました。参考になった点を3つあげておきます。

 

1 模倣、想像、創造の3章に分けて、想像力を身につけるための具体的な方法が示されています。

 

2 人間の知能が8種類あり、大学までは、言語、論理的・数学的、人とのコミュニケーションが得意な人が、成績が良いとされている。それ以外の知能には、音感、空間、身体・運動、自分とのコミュニケーション、自然との共生があげられる。これらの知能がすぐれた人はたくさんいる。

 

 学校教育(小学校から高校まで)の限界がよくわかり、納得しました。

 

3 キャリア教育の見直しが提言されています。

 

未来のために我慢するよりはいまを楽しむほうがいいし、絶対的な正解がないのなら、自分なりの成功でいい。これがいまの子どもたちが生きる前提なのです。

誰もが自らのキャンパスを選び、自分を表現していく生き方をすることで希望をつくれるようになる。

 

自分の将来がまだつかめていない中学生、高校生や定年後に自分探しをしている中年?に特におすすめします。

著者の「直感と論理をつなぐ思考法」も参考になりますが、こちらの方がより具体的で読みやすいです。

模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書

東京大学 2022年 前期 国語 第一問 鵜飼哲「ナショナリズム、その〈彼方〉への隘路」

東京大学 2022年 前期 文科 鵜飼哲「ナショナリズム、その〈彼方〉への隘路」

 

この大学入試が行われた直後に、プーチンの命令でロシアがウクライナに軍事侵攻をしました。アメリカやヨーロッパはもちろん、世界中の多くの国がこの「暴挙」に反対しています。日本でも「核武装の議論を始めよ」などと元首相や一部の政治家が言い出す始末。まさに「ナショナリズム」の発言を目の当たりにしています。現実に進行している世界情勢と照らし合わせながら、日本の「ナショナリズム」について考えるいい機会かもしれません。

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形式段落の要旨をまとめました。

1 カイロの考古学博物館で日本人ガイドから、説明を聞く資格はないと言われた

2 エジプトで日本人が日本人にそこにいる権利はないという

3 日本以外の国のツアーではありえない。客以外の人が聞いて、ガイドにどんな不都合があるのか

4 日本人が排外的に振る舞うことを忘れていたため、日本人から追い払われ逆説的に帰属を確認させられた

5 同じ日本人だからと甘える私と、たとえ日本人でもよそ者は切り捨てるガイドとどちらがナショナリストか。日本のナショナリズムはガイドのように振る舞える人材を養成してきた。国民の一部を非国民とし排除する能力がナショナリズムには必要だ

6 外国では日本人の団体に近づかない自由があるが、日本ではどうか

7 日本にいる人はみな、ただひとり日本人に取り囲まれている

8 ナショナリズムの語源はラテン語「生まれる」という意味の動詞である。一方自然を意味する名詞も同じ動詞から派生した

9 「生まれ」が同じものの間で「自然」=「当然」として主張される平等性と「生まれ」が違うものへの排他性という性格がナショナリズムの不変の性格である

10 しかし、生地も血統も少しも「自然」ではない

11 ナショナリズムが主張する「生まれ」の同一性の自然的性格は仮構されたものだ。自然ではなく一つの制度である。国籍の付与は自然でないものを自然なものとする操作つまり自然化によってなされる

12自然化は決して完了することがない。非自然化はいつでも起こりうる

 

設問を見ていきましょう。

(一)から(四)はすべて「説明せよ」という問題です。

 

(一)「その『甘さ』において私はまぎれもなく『日本人』だった」とはどういうことか

「その『甘さ』」とは国内では集団に分かれて壁を築いているが、国外では同じ日本人だから排除されることはないだろうと認識していたことを指しています。

日本人同士でなあなあで許してもらえるという感覚が「油断」だったのです。

 

(二)「その残忍な顔を〈外〉と〈内〉とに同時に見せ始めている」とはどういうことか

5段落の内容をまとめます。「その残忍な顔」は日本のナショナリズムがこのガイドのように「よそ者」をめざとく見つけ容赦なく切り捨てることを示しています。〈外〉とは日本国民以外の人、〈内〉とは日本国民のこと。ナショナリズムの排他性が内外ともに発揮され始めているということです。

 

(三)「文字通りの『自然』のなかにはもともとどんな名も存在しない」とはどういうことか

本来の自然には「フランス」「日本」といった名は存在しておらず後から恣意的に名付けられたものであるということです。

参考までに鈴木孝夫「ものとことば」によると、唯名論と実念論という概念があり、言葉によって初めて世界は認識できるという唯名論と、言葉より先に世界が実存するという実念論とが対立する。鈴木は唯名論の立場であり、この(三)は実念論の立場ということができます。

ちなみにこれは高校1年生の教科書に載っている評論を参考にしました。ちゃんと現代文の授業を受けていれば、この東大の問題を解く時にもその知識が役に立ちますね。

 

(四)「日本人であることに、誰も安心はできない」とはどういうことか、本文全体の趣旨を踏まえて一〇〇字以上一二〇字以内で説明せよ。

端的に言うと、ある日突然ナショナリズムのキバが自分に向けられることが起こりうるということ。

日本人という「生まれ」の同一性は自然ではなく、仮構された制度であるため状況によって変化しうるものであり、誰でも排除されることがあり得るのです。

 

(五)漢字の書き取り

ユルんで  緩んで

コッケイ  滑稽

シンチョウ 深長

「意味深長」なので「×深重、×慎重」などとしないように

 

模範解答は、河合塾や駿台の解答速報で見ることができます。参考にしてください。

京都大学2022年前期国語 高橋和巳「〈邪読〉について」 国語教師が解いてみたら、とてもいい内容だった

2022年京都大学 前期 国語 文系学部

第二問 高橋和巳『〈邪読〉について』

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形式段落の内容をまとめました

 

1 「千夜一夜物語」の語りは、物語が物語を生み、登場人物が語り出した物語の中の人物がまた一つの物語を語り出す

2 これはアラビア文化圏特有の存在論が背後にある

3 私は青春の一時期、この発想に近い読書の仕方をしていた

4 死の誘惑から逃れるため手当たり次第に読書した。読んでいる時の思念は気ままな膨張をした

5 当時、的確精密な要約をする友人がいたが、私はそれができず妄想的読書にのめり込んだ

6 これは邪読であり、自己を一たん無にして他者の精神に接するべきであり、確実で体系的な知識を身につけるために読書すべきである

7 しかし、邪なるものには悪魔的魅力があるものだ

8 ある領域に長じるための唯一の方法は、それに耽溺することである。それは客観的精神の芽生えと矛盾しない

9 耽溺のあと忘却がやってくるが、これにも意味がある

10 創造的読書は必ず忘却を契機とする

11 読書は大部分の消失がなければ、精神の自立はなくなる

12 ものごとは失いかけた時にそのことの重大さを意識する。邪読についても同じである

13 邪読は一つのあり方で、他の読書のあり方を排除するものでない

14 求道型や生活の知識、知恵を得るため、存在の奥底から発するものなど、その人の個性にあったかたちを造り出せばいい

15 理想はさまざまの読書の型をそれぞれの人生の時期に経過することにある。しかし、人は一つの読書のあり方に比重をかけたまま人生を終わらざるをえない

 

問一 傍線部1(こうした発想法)はどのような発想法か、説明せよ。

「こうした」は直前を指します。1段の「物語が物語を生み~」と、ある物語から別の物語が次々と派生していくような発想法のこと。

 

問二 傍線部2(しばしば自分の読書の仕方に対するある後ろめたさの念におそわれた)について、筆者が「ある後ろめたさ」を感じたのはなぜか、説明せよ。

友人との対比を説明します。

的確精密に理解したことを要約する友人の読書法に対し、自分はそんな仕方ができず、妄想的読書にのめり込んでいるから。

 

問三 傍線部3(これはむろん読書の態度としては、いわば〈邪読〉であって)のように筆者が言うのはなぜか、説明せよ。

本来は、自己を無にして他者の精神に接し、確実で体系的知識な知識を身につけるべきだが、筆者はそれに反する妄想的読書を行っていたから。

 

問四 傍線部4(その〈忘却〉にも、意味がある)のように筆者が言うのはなぜか、説明せよ。

創造的読書は、読んだ大部分を顕在的な意識の上からいったん消失することで精神に自立をもたらすため。

 

問五 傍線部5(読書の本質)について、筆者にとっての「読書の本質」とはどのようなものか、本文全体を踏まえて説明せよ。

「本文全体を踏まえて」とあるのが難しい。

段落要旨をつないでみました。

読書は、思念が気ままに膨張し妄想が広がり耽溺させるものだ。ある領域に長じるには耽溺が必要で、その後の忘却によって精神の自立がなされる。多様な読書のあり方をそれぞれの人生の時期に経過すればよいが、一つの型に比重をかけたままにならざるをえない

 

河合塾と駿台の解答速報を見てみましょう。

河合塾は語句やまとめ方が高レベルで、受験生はなかかけない解答です。むしろ駿台の解答例が本文に即した言葉遣いになっています。

どちらがよいということではなく、両方目を通して参考にしましょう。

 

まとめ

読書、邪読のすすめといった趣旨の文章です。京都大学が学生に求める智のあり方が具体的に示されていると思います。

筆者のいうように、私も読書の内容はほとんど忘れてしまっています。しかし、的確な要約や知識の蓄積ができていなくてもいいのだと筆者に認められたように感じて、うれしくなりました。

 

出典 『高橋和巳全集』全20巻(河出書房新社、1977.5~1980.3)第14巻 評論 4

 

高橋和巳全集〈第14巻〉評論 (1978年)

 

京都大学2022年前期国語 岡本太郎「日本の伝統」 国語教師が解いてみたら大変面白かった

2022年京都大学 前期 国語 文系学部

第一問 岡本太郎『日本の伝統』

 

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本文の内容をまとめました。

 

1 今日の若い世代は日本の古典芸術よりも西洋の古典芸術の方を理解している。

2 法隆寺金堂壁画の焼失のニュースは、十大ニュースの9位でしかない。

3 失われたものを嘆くよりも、悔いと空虚を逆に作用させ、すぐれたものを作り、伝統としていけばよい

4 そんな気魄こそ伝統継承の直流だ

5 今までの伝統主義に終止符を打ち、新しい世代に、とらわれない新しい目で伝統を直視するチャンスを与えるべきだ

6 竜安寺の石庭で「イシだけ」「タカイ」と言った人は、即物的な再発見によって権威や伝統をたたきわったと言える

7 そんなむぞうさな気分でぶつかって、伝わってくるものが本物、芸術の力であり伝統の本質だ

8 小林秀雄に骨董コレクションを見せられたとき、言い当てると小林は感激し次々と秘蔵品を持ち出した

9 その姿を見て気の毒でもの悲しい気分になった

10 美に絶望し退屈している者こそ本当の芸術家だ

 

岡本太郎の主張が絶好調?の文章です。

伝統に対する考えがはっきりとつかめます。

小林秀雄のエピソードは、小林をありがたがる文学関係者真っ青の内容で、おもしろいですね。小林の本質を突いた筆力がすばらしい。

 

さて、設問を見ていきましょう。

5問すべて「説明せよ」という潔い?設問です。さすがですね。

 

問一 傍線部1(どっちがこれからの世代に受けつがれる伝統だか分からなくなってきます)はどういうことか、説明せよ。

 

「どっち」とは、コーリンとかタンニュー、つまり日本の古典芸術と西洋の古典芸術を指しています。

西洋の古典芸術を見知っている若い世代にすれば、日本の古典芸術に魅力を感じなくなっていることです。

 

問二 傍線部2(自分が法隆寺になればよいのです)はどういうことか、説明せよ。

「法隆寺」が指すものとは何かをつかみましょう。

伝統だと評価されたものが失われたことを嘆くよりも、自分がよりすぐれたものを創作し、伝統にする姿勢が大事だということです。

 

問三 傍線部3(どうもアブナイ)のように筆者が言うのはなぜか、説明せよ。

直前に「うっかり敵の手にのりかかっていたんじゃないか」とある。これがアブナイの内容。

今までの伝統主義にとらわれない新しい目で伝統を直視しようとしていたのに、逆に伝統にからめとられてしまいそうになっていたから。

 

問四 傍線部4(それこそ芸術の力であり)はどういうことか、説明せよ。

「それこそ」は直前の内容を指す。さらにその前2行分を加えて考えましょう。

権威や伝統的価値から離れて、無造作な気分で対象にぶつかり伝わってくるものが本物の芸術ということです。

 

問五 傍線部5(美に絶望し退屈している者こそほんとうの芸術家なんだけれど)について、「ほんとうの芸術家」とはどういうものか、本文全体を踏まえて説明せよ。

本文全体とあるので、石庭や小林秀雄のエピソードから読み取れる筆者の考えを盛り込む。

伝統や世間の評価にとらわれず、自分が新たな美を作り出し伝統にするという気魄をもち、芸術に取り組む者。これを軸として、言葉を足してください。

 

模範解答は、河合塾や駿台のサイトに発表されています。

河合塾は、大変参考になりますが、解答の文言が難解で、高校生にはこの文章を書くのは、ちょっと無理やろと思います。

駿台の方は、比較的親しみやすいです。河合塾の模範解答を見て自分には無理と絶望しないで、どちらも見て吸収しましょう。

 

ちなみに理系学部は、問四が削除されていて、後はすべて文系学部と同じ設問です。

理系を目指す人も、高いレベルの記述力が求められています。

 

まとめ

権威、伝統に逆らい、新たな美を打ち立てる岡本太郎の精神を読み取らせることで、若い学生に必要な教養を示しています。

京都大学の学生には、岡本太郎の思想を引き継ぎ発展させてほしいと願います。

 

 

 

 

 

 

ウクライナで起こっていることを理解するために 戦争を描いた文学作品を読むことをおすすめします

ウクライナへの侵略が発生してから、日本では、核武装を議論しようとか、軍備を増強せよとかいった勇み足、勇ましい発言が報道されています。
そんな発言をする人は、自分は決して最前線に一兵卒で行かないと思い込んでいるのではないでしょうか。
なぜ、最前線で悲惨な思いをして、死ぬということを考えられないのか。
自分は特別な存在だから、そんなことは他の国民がやればいいと思っているのでしょう。

 

文学に描かれた戦争を読んで想像力を働かせることが大事だと思います。

 

そこで、私が今までに読んで、戦争について考えさせられた文学作品を紹介します。

 

大西巨人「神聖喜劇」
戦闘場面は出てきませんが、日本の軍隊内部が克明に描かれていて、参考になります。
小説として大変面白い作品です。

 

大岡昇平「レイテ戦記」
どこで、どんな戦闘があり、誰が死んだかといった記録に圧倒されます。
勇ましい発言をする政治家、コメンテーターは、是非これを一読をして、実際の戦争というものを理解してから発言してください。

 

古山高麗雄「プレオー8の夜明け」「断作戦」「フーコン戦記」など
作者自身の従軍体験から描かれたリアルな内容からは、戦争の実像が伝わってきます。

 

戦争への想像力を身につけるため、こういった文学作品を読むことをおすすめします。