bluesoyaji’s blog

大学入試問題の分析、国語の勉強方法、受験勉強、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

初めてのDTM GarageBandで簡単に曲ができる?60からの手習い 2曲目はバラード

調子に乗って、2曲目はバラードです。

パソコンのキーボードでメロディを入力するのが難しかったです。

やはり入力用に専用のキーボードが必要かもしれません。

https://soundcloud.com/tsuneji-sasaki/balladeam

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初めてのDTM GarageBandで簡単に曲ができる?60からの手習い

GarageBandでループを使って簡単に作曲ができるというので、やってみました。

やり方は、ネットを検索すると、たくさんのサイトがいろいろと指南してくれています。

今回はループを使ったやり方を参考にして、リズムトラックのようなものを作ってみました。

イメージは、大好きなP-Funkです。

60過ぎたジジイでも、かっこいい曲を作ってみたい。

素人には無理、年寄りの冷や水といった声は聞かないようにして、楽しくやりましょう。

 

https://soundcloud.com/tsuneji-sasaki/funkyno1-3

 

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初めてのDTM GarageBandで簡単に曲ができる?60からの手習い

GarageBandでループを使って簡単に作曲ができるというので、やってみました。

やり方は、ネットを検索すると、たくさんのサイトがいろいろと指南してくれています。

今回はループを使ったやり方を参考にして、リズムトラックのようなものを作ってみました。

イメージは、大好きなP-Funkです。

60過ぎたジジイでも、かっこいい曲を作ってみたい。

素人には無理、年寄りの冷や水といった声は聞かないようにして、楽しくやりましょう。

 

https://soundcloud.com/tsuneji-sasaki/funkyno1-3

 

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連載を始めました。「邦裕の孤愁 くにひろのこしゅう」第4話 偽装カップル誕生

 健人が優奈を連れてきた翌週の土曜日は、珍しく健人も家に居て、三人で晩御飯を食べていた。

 健人は頼みがあると言って、話を切り出した。

「優奈を連れてきたあと、優菜が朱莉に嫉妬して酷いねん。タイプやろとか、一緒に住んでたら好きになるとか色々言ってきて」

「健人のことが心配なんやろな」邦裕がそう言うと、

「お互い愛し合ってるんでしょ?」と朱莉が意味ありげに言う。

邦裕は、朱莉の太ももを膝で突いた。

ムッとした顔で見る朱莉を無視をして、健人の言葉を待つ。

「二人に頼みがある。朱莉には悪いんやけど、こいつと付き合ってることにしてくれへんかな?そうしたら優奈も安心して、あれこれ詮索しなくなると思うんや」

「付き合うって、この人と?無理やわそんなの」

「いやいや、優奈が来てる時だけ、付き合ってることにしてくれたらいいだけや」

「嫌なのに無理に付き合ってくれと言ってるのと違うで」

「嫌なのには余分ですけど」邦裕が口を挟む。

「ね、お願い。俺を助けると思って、あいつがきた時だけでいいから」

「そんなに頼まれたら、断りにくいやん」優菜は渋々返事をする。

「本当?ありがとう!助かるわ。このお礼は絶対させてもらうから」

「調子乗ったらあかんよ。手繋いだり、ボディタッチとか絶対せんといてね」

朱莉は邦裕に釘を刺した。

「するわけないでしょ。飢えた狼みたいに言わんといてほしいわ」

「俺には強固な意思と節欲があるのをわからせてやる」

「まあ、とにかく、あいつがくる時は二人はカップルということで、お願いするわ」

健人はそういうと安心した表情を浮かべた。

 

 朱莉が食器を片付けて二階の部屋に上がったあと、邦裕と健人はリビングに残り、話し込んだ。

「優奈の嫉妬もすごいけど、だんだんとあれを求めるのが激しくなって、ちょっと困ってるんや」

「あれって、優奈、そんなに絶倫なん?」

「この頃、一回や二回ではおさまらへん。何回も求められて、俺はクタクタになってしまう。底なしの性欲や」

「あんなかわいい顔して?」

「顔は関係ない。あいつには好色の傾向があるのやろな。その蓋を開けてしまったのは俺やけど」

「健人、実は最近、部屋に声が激しく漏れてくるねん」

「ほんまか。それは悪かった。あんな声聞かれたら、恥ずかしいわ」

「始まったらリビングに行って、聞かないようにしてる」

「それは知らんかった。気を使わせて悪かったな」

「あの最中って、あんな大きな声を出すもんなん?」

「あいつは特別や。みんながあんな声出すわけじゃない。とにかく、今度から気をつけるから、漏れて聞こえてたら後で言うてくれ」

「うん、わかった」

「それと朱莉に聞かれたら、やばいからな。あいつ、純情やから、きっとショックを受けると思う」

邦裕はもう手遅れだと思いながら、

「堅物だから、聞かれない方がいい」と答えておいた。

 

 翌週の週末に、優奈が泊まりにきて、持ってきたケーキを四人で食べた。

「お二人、つきあってたんやね、お似合いやわ」

優奈はケーキを食べながら、邦裕と朱莉に笑顔でそう言った。

「いつから、つきあってるの?」

「どれくらいになるかな?」と言いながら邦裕は朱莉に目で合図する。

「半年くらいかな。去年の秋くらいから」

「ヒロくんのどこが良かったの?」優奈はさらに尋ねてくる。

「うーん、見た目は好みじゃなかったけど、優しいところかな」

「ヒロくん、カッコいいやん、見た目も」優奈は優しい。

「じゃあヒロくんは?」

「この気の強いところと、ナイスな」

言いかけたところをテーブルの下で朱莉のキックが急所に当たる。

「うっ」暫し沈黙する。

「ナイスな?」

「ナイスな笑顔が」痛さを誤魔化してなんとか言えた。

「初めてのキスはどこで?」

「えーっと、風呂場で」

「風呂場で?いきなり?」

優奈が目を見開く。

「違うねん、風呂掃除をしてるときに、ムカデが出て、朱莉が悲鳴をあげて、俺が退治して、その時、朱莉が抱きついてたからつい

「ついしたの?」

「いやいや、そうじゃなくて、そのタイミングでって言うこと」

朱莉はよく言うよという顔をして聞いている。

「今度、一緒に遊びに行かない?」

「いいね、朱莉」邦裕がそう言うと、

「うんいいよ」と笑顔をつくって答えた。

 

 健人と優奈が部屋に入ると、残った朱莉は、

「わたし、ダブルデート、行かない」

「すぐに行こうって言ってるわけじゃないから、そんなに決めつけなくてもいいんじゃない?」

「そのうち、行きたくなるかもしれん」

「絶対、ないわ」

「その、白か黒かの二分は良くないよ、ほどほどに流すってやつも必要」

「なんでよ」不満そうな顔を見せる。

「朱莉は、完璧主義だから」

「自分にも厳しいけど、他人にはもっと厳しくない?特に、俺にたいして」

「あなたは言われるようなことするからでしょ」

「そう言う決めつけがなかったらなあ」

「決めつけじゃないでしょ」

「そこで、そう言う考えもあるわね、って言う余裕が欲しいな」

「心が狭くて残念ね」

「そら、またムキになる。そこが丸くなれば

「なんなのよ、言いなさいよ」

「言い寄る男が列をなすやろな」

「このままならモテないって言いたいの?」

「いやいや、誤解せんといて。今でも十分魅力的やけど、もうちょい、丸くなれば、さらに魅力が増すって言うことや」

「褒めてるのか貶してるのか分からんわ」

「貶してなんかない」

「どっちにしてもダブルデートはお断りやわ」

「まだ言うか。そんなに嫌なら、誘われたら自分で断りや」

「俺は健人を守るために賛成しただけや。それを利用して朱莉を口説こうとしてるんじゃないから」

邦裕は本当に腹が立った。

連載を始めました。「邦裕の孤愁くにひろのこしゅう」第3話 健人と彼女 

 健人には優奈と言うかわいい彼女がいる。健人と同じようにモデルをやりながら、お芝居の勉強をしている。女優の卵といえばいいのか、しかし、少しも気取ったところがなくて、邦裕とも気さくに話しをする感じのよい子だ。健人とは、モデルの仕事を通じて知り合い、付き合って一年になる。時々、健人が週末に連れてくる。

 健人の帰りが早いときは、三人で一緒にご飯を食べにいったり、家でご飯を作って食べたりする。

 朱莉が来てから初めて優奈を連れてきた時は、だいぶ遅い時間だったので、すぐに健人の部屋に入ってしまった。

 邦裕は優奈が泊まりにくる夜は、リビングでしばらく過ごすことにしている。その日もソファで本を読んでいると、朱莉が降りてきて、「まだ起きてるの?」と不思議そうに尋ねた。

「ああ、ちょっとね」

「こんな所でいるより、部屋で読んだらいいのに」

「暗いでしょ、ここの灯り」

そう言って向かいに座る。スウェットの上下を着て、すでに睡眠態勢だ。

 邦裕は、いたずらな気持ちを起こしてしまった。

 声を小さくして、朱莉の耳に少し顔を近づけて、

「部屋にいるとよく聞こえる」

「えっ、何が?怖いものでも出るの?」

急に心配そうな顔で邦裕を見つめる。

「怖いと言えなくもないな」

勿体ぶっていると、

「何よ、教えて」

少し怯えた顔を近づける。

「声が洩れてくる」

「洩れるって」しばらく邦裕を見つめる。

そして、硬い表情になって、

「もしかして、二人?」

「そう。丸聞こえ。部屋、壁一枚やろ。だから、あれが始まると、リビングにそっと避難することにしてる」

「初めて聞いた時はびっくりした」

「興奮して寝付けへんかった」

邦裕がそういうと、朱莉は急に真顔になって、

「確かめよう」と言って、邦裕の腕を突いた。

「そっと入ればわからない?」

「おれの部屋に入る気?」

「夜中に男子の部屋に入るなんて、危険や」

「馬鹿なことしないでしょ、早く」

 仕方なく、音を立てないように、自分の部屋のドアを注意深く開けた。後ろからついて来ている朱莉に目で合図する。

 ドキドキしながら部屋に二人で入ると、朱莉は早速、健人との部屋の壁に耳を近づける。この時、邦裕は女子にも男子と同じように、セックスに関する強い関心があることを確認した。

 隣からは濃厚な気配と物音が、リズミカルな喘ぎ声とともに聞こえてくる。

興味津々の顔で聞き耳を立てる朱莉。邦裕は複雑な心境になった。目の前に、パジャマ姿の女子がいて、隣からは興奮した声が漏れてくる。ここは理性を強く持って、衝動を抑えつけるのみだ。

 そんなことを思っている間も、朱莉は隣の音に意識を集中している。

 今日の健人たちはいつも以上に長いな、そんなことを思っていると、激しい泣き声がした後、低く大きな呻き声がしたので、流石に邦裕もびっくりしてしまった。

 朱莉は驚きの顔を邦裕に向けて、声を出さずに「だいじょうぶなの?」と言ったのが口の形で判読できた。黙って頷いて、ドアの方を指さして、「リビングへ行こう」と邦裕も声を出さずに大きく口を動かして伝えた。

 リビングに二人で戻ると、朱莉は「ふーっ」と大きなため息をついた。顔が赤く上気している。

「スゴイ、わね」

スゴイを一音ずつ区切って発音する。

「あれをたびたび聞かされる俺の辛さ、わかるでしょ」

「愛し合うのって、大変ね」

「ちょっと意味違うと思うけど」

邦裕が注意すると、朱莉は正気を取り戻したようで、

「私には無理」と言った。そして「いつもあんな声聞こえてくるの?」と聞いてきた。

「いつもじゃないけど、今日は格別に」

「健人くんの彼女って、いくつ」

「俺らと一緒」

「ずいぶん大人ね、二人とも」

そう言って、邦裕の顔をチラッと見て、

「変なことしたら警察呼ぶから」

「それくらいの理性はありますよ」

邦裕は、ちょっとムッとした。

 

 翌朝、邦裕と朱莉がリビングで朝食を食べていると、優奈がシャワーを終えて、健人とリビングに入ってきた。

「紹介するわ、優奈。こちらは、朱莉。四月から一緒に住んでる」

「初めまして、佐藤優奈です。健人がいつもお世話になっています」

 邦裕は昨日の声の一件が頭にあるので、優奈の顔をまともに見ることができない。

朱莉は、むしろ目を輝かせて、

「こちらこそ、よろしくお願いします。高島朱莉です」と挨拶して、邦裕の横に腰を下ろした。

健人と並んで腰掛けた優奈に、

「昨夜は遅かったの?」と尋ねた。

邦裕は、横から朱莉の太ももを足で突いた。

笑顔を邦裕に向けた朱莉は目で、「何するのよ」と非難する。

「昨夜は仕事で遅かったんでしょ」と邦裕がフォローをする。

「仕事が長引いて、来るのが遅くなって、挨拶できなくてごめんなさいね」

「気を使わなくても、いいよ」

邦裕がそう言うと、

「いつからお付き合いしてるんですか?」と朱莉が聞く。

  今度は朱莉の太ももを思い切りつねった。

急にこちらに顔を向けて、笑顔のまま「邪魔するな」と目で言っている。

邦裕は目で「聞くな」と合図した。

朱莉は渋々、お茶入れて来ると言って立った。

 

 健人と優奈が出かけたあと、リビングで朱莉と話した。

「あんな話題を振ったらだめでしょ」邦裕がそう嗜めると、

「だって、気になるもん。どんなふうに付き合ってるのか」

「たんに羨ましいだけじゃない?」

「わたしが?そう見えた?」

「張り合おうとしてるんじゃない?」

「ええ?どう言うこと?」

「健人みたいな恋人がいて、週末には愛し合って、楽しそうにしてるから」

「そんなつもりはないんだけど、そう見えたのね」

「朱莉は美人だし、男なんていくらでも近寄ってくると思う」

「でも、今まで付き合ったことないもん」

「それは

 邦裕は、それは気が強い性格のせいだとは言えなかった。

「朱莉さえよければ、いつでもお付き合いするよ」

「無理やわ。そんな目で見られへんから」

「そうはっきり言われると、応えるなあ。で、恋人ができたらできたで、色々あるんやから」

「まるで恋人がいたような口ぶりね」

「そら、ないけど。健人のところもあれで、大変なことも」つい口をすべらせた。

「何かあるの?教えてよ」

身を乗り出してくる。

「ここだけの話やで。優奈さんの嫉妬がすごい」

「健人はモテるから、心配なんやろな」もっと聞きたそうだ。

「健人も人がいいから、近寄ってくる子には優しくしてしまう。それで喧嘩になるみたいやな」

「優奈は、朱莉のことを気にしたはずや」

「そんなものかな」そう言って、朱莉は首をかしげた。

「朱莉は大学行ったら、キャンパスクィーンとかに選ばれると思う。男選び放題やろうな」

「そうだといいけど」

 

「風呂入ってくるわ」

風呂は朱莉が一番に入ることになっている。

「ムカデが出ても助けへんから」

「そんなこと言われたら怖くなるでしょ。また出たら助けにきてね」そう言って、わざと困ったような表情をつくる。あざといなと邦裕は思いながら、

「今度助けを呼ぶときはバスタオル巻いとけよ。俺はムカデよりも朱莉の方が怖いわ」

「ふふっ」と笑いを漏らして風呂に行った。

 

連載を始めました。「邦裕の孤愁 くにひろのこしゅう」第2話 風呂場の悲鳴

 朱莉が来て三日目の夜のこと。

 邦裕が自分の部屋で、明日が提出期限の課題をやっていると、風呂場から「ぎゃーっ」と言う叫び声が聞こえてきた。朱莉の入っている時間だ。

 不審者が侵入したのだろうか、助けないとと思い、慌てて風呂場に駆け込むと、また、「ぎゃーっ」と言うさっきより高い声がした。

「大丈夫か、朱莉」と言って夢中で浴室のドアを開けると、朱莉はバスタブから、「そこ、そこ」と言って必死な顔つきで指を差す。ぞの先を見てみると、壁に、二〇センチはあると思われる真っ黒のムカデがじっと張り付いていた。

「うわっ、でかっ」

邦裕は、思わず一歩たじろいだ。見たことのない大きさだ。

「外へやって、早く、早く」

急かされても、素手で掴むわけにはいかない。

 こいつに噛まれると、激痛が襲い、しばらくは痺れて大ごとになる。邦裕は小学生の時、もっとサイズが小さいムカデに左腕を噛まれたことがあった。その痛さといったら二度と思い出したくないくらいだ。この世で、蛇と同じくらい嫌いな生き物だ。

とにかく朱莉を助けるために、こいつを始末しないと、邦裕はそう思って、風呂の中を見渡すと、風呂の腰掛けが目に入る。プラスチックだが、これの脚で潰してやろうと思って、腰掛けを手にした途端、ムカデは急に百本の足を動かして、壁を上り出して、朱莉の方に移動した。

「ぎゃーっ、早く、早く、助けて、助けて」

朱莉は浴槽から立ち上がり、ぬれたまま必死で邦裕の身体にしがみつく。

邦裕は壁のムカデに狙いを定めて、腰掛けの脚を思いっきり黒光りのする胴体に押し付けた。

「きゃっ、グロい」

朱莉はそういって顔を逸らした。

邦裕は力をさらに加えて、ムカデの胴体を二つに引きちぎった。風呂の床に落ちた二つの胴体はクルクル回って、頭の方はさらに逃げようとしてこちらに向かって進んでくる。邦裕は足元のムカデの頭部分を、腰掛けで狙ってガツンと叩いた。うまい具合いにムカデの頭に腰掛けの脚が当たり、そのまま力を押し付け続けた。

もう一方の胴体は床でクルクル回っている。今度はそちらを同じように押さえつけて始末した。

邦裕の鼓動は耳に響くぐらい大きな音を立てている。息も上がっている。

「やっと死んだ。もう大丈夫」

と言って、朱莉を見ると、彼女と視線があって、裸体で立ちすくむ朱莉を見つめる形になった。

一瞬、朱莉と邦裕の目が合って、わずかな間ができた。

「ぎゃ|、この変態」

「見ないで、すぐ出て」

そう言って湯を両手ですくって何度も邦裕の顔に浴びせかけた。

 

 慌てて風呂場から飛び出すと、ちょうど帰宅した健人が、朱莉の悲鳴を聞いて風呂場に駆けつけて来たところだった。

「お前、何やってるんや」と言って、邦裕の顔面をいきなり正拳で殴りつけた。邦裕は軽く吹き飛ばされ、廊下に倒れ込んだ。

「朱莉を入浴中に襲うなんて、お前は最低な男や」

健人は興奮して、失神している邦裕にのしかかり、さらに殴ろうとする。

「やめて、違うの」

バスタオルを身体に巻きつけた朱莉が、健人を背後から引き止めた。

「こいつ、許さん」

「違うのよ、この人は、ムカデを退治してくれたの、私を助けてくれたのよ」

「でも、さっきの悲鳴は?変態って叫んでたでしょ?」

「あれは、言葉のあやというか、ムカデを殺した後、この人と目が合って、気づいたら私、素っ裸だったからつい

「じゃあ、こいつが覗きや痴漢をしたのではなかったってこと?」

「そうなの、大丈夫かな海城くん」

「ヒロくん、起きろ、大丈夫か」

 

 邦裕はしばらくの間、気を失っていた。遠くから健人の呼ぶ声がしていたが、まだ朝じゃないから寝ていようと思って、目を開けなかった。

「ヒロ、起きろ」

健人は今度は平手で何度も邦裕の顔を叩くので、ようやく意識が戻った。

 目を開けると、健人と朱莉が、心配そうな顔で覗き込んでいるのが下から見えた。

「ああ、目が覚めたか」

「よかったわ」

健人は笑顔で邦裕に手を差し出し、体を引き起こす。朱莉は白のバスタオルを体に巻きつけている。でも、屈んでいるので、胸の谷間があらわに見えている。足の脛の白さが目に入る。

 立とうとすると、ちょっとふらつくので、健人が止める。

「すぐに氷枕で冷やそう。私、着替えてくるから」

「そうだな、冷やしたほうがいい。ヒロくん、ソファで横になれ」

健人はそう言って邦裕の脇を抱えてリビングのソファアまで運んだ。

「ごめんな、ヒロくん、俺はてっきり、朱莉を襲ったのかと」

「襲うわけないやろ。同級生やで。ありえへん、あかん、喋ると顔が痛い」

「冷やすから寝とき」

朱莉が服を着てきた。

「病院行かなくて大丈夫かな?」

「これくらいなら心配ないやろ」と健人が言う。

「骨にヒビが入ってるかもしれへん」邦裕が言うと、

「お前は大袈裟や」

「いや、お前が言うか」

「三宅さんに相談して、病院連れて行ってもらおうか」と朱莉。

「行ったほうがいいよ、海城くん」

「よっしゃ、俺が相談してくるわ」

健人は隣に住む三宅さん宅へ行った。

 

 三宅さんが知り合いの病院に電話してくれて、邦裕を車で連れて行った。

診察の結果、打撲だけで心配ないということで、邦裕は安心した。

 

翌朝、邦裕は起きて鏡を見ると、腫れがひどく、顔の右半分が痣になっていた。見るだけで、気分が悪くなった。大きめのマスクをするとほとんどが隠せたので、学校にはこれを付けていった。

 

 クラスに入ると、マスク姿が注目されて男子の何人が、どうしたのかと驚いた。

 邦裕は、説明が面倒なので、自転車で転んで顔面を打ったと答えた。鈍臭いなあとからかわれたが、かえって気が楽になった。とてもじゃないが、朱莉の全裸を見てしまって、そのせいで殴られたとは言えない。そんなことが知られると、二度と学校には来られなくなってしまうだろう。

 担任にも自転車事故で怪我をしたというと、お大事にと言われただけだった。

 邦裕はそれでよかったのだが、朱莉は色々とうわさ話を耳にして辛かった。クラスの女子は、あれは絶対、ケンカでしょと言った。

 海城くんはおとなしそうに見えて、意外とやんちゃなのかも、カッコつけてボコボコにやられたんじゃないのなど、ひどい決めつけが話されていた。その話の輪の中にいるだけで、朱莉は責任を感じて、気が重くなった。

 

 帰宅してきた健人が、リビングで本を読んでいた邦裕に言った。

「で、ヒロくん、どうやった?」

「腫れは大分引いた。アザは大きいまま」

「そうか、すまん。で、どうだった?」

「何が?」

「朱莉さんのボディや」健人は急に声を潜めていった。

「見たんやろ?」

「うん。グラビアでも見たことないくらい。すごくきれいだった。」

「ほんまか。もっと詳しく教えて」

「あかん、お前には優奈さんがおるやろ」怒った顔をしていうと、

「それとこれは別や」

健人はそう言って、邦裕の肩を叩いて部屋に入った。

 邦裕は一人リビングで、物思いに耽った。やむを得ないとはいえ、他人に、しかも若い男に自分の裸を見られたら、いやだろうな。でも、邦裕が謝れば謝るほど、朱莉の気持ちはやり場のない怒りに満たされていき、どう振る舞ったらいいのかわからなくなるんだろうな、そう思って沈んだ気持ちで自室に戻った。

小説 連載を始めました。「邦裕の孤愁 くにひろのこしゅう」第1話 朱莉がやって来る

 高校二年生が始まった日朱莉は突然、邦裕と健人の住む家にやって来た。

 邦裕と健人は、三宅さんの所有するシェアハウスに住んでいる。そこから高校に通っている。

 邦裕は小学校六年生の時、突然両親が死んでしまい、叔父に引き取られて、二人で暮らしていた。中二の時に、叔父が結婚することになり、ここに来た。

 健人は裕福な家で、何自由なく過ごしてきたが、モデル業と芝居に夢中になり、親と衝突して実家を離れ、ここで一人暮らしをしている。

 邦裕と健人は一緒に暮らして二年になる。大きな喧嘩もなく、仲良くやってきた。

 そこへ、突然、朱莉が加入することになった。

 三宅さんに連れられてやって来たのは、今日、同じクラスになったばかりの朱莉だった。

学年一の美人との評判で、しかも成績優秀、しっかり者ときている。

 邦裕は、なぜ、朱莉がここに来たのだろうと思った。お互い事情は詮索しないのが邦裕たちのルールなので、彼女に直接聞くことはしない。事情よりも大切なのは、うまく同居をやっていくことだ。健人とは同性同士だったからやって来れたが、一人っ子だった邦裕には、女子と暮らすのははじめてだ。健人は彼女がいるので、女子のことはよくわかっているのが頼りだ。

 こんなことは、後から思ったことで、朱莉が三宅さんとリビングに入って来たときには、邦裕は、驚いてしばらく思考が停止してしまった。

 朱莉は、邦裕を見るなり、大きな目をさらに見開いて、

「あら、海城くん、ここに住んでるの?」

信じられないという顔で口を開けている邦裕の顔を眺める。

「今日からよろしくね」

そう言って白い歯を見せた。

邦裕の頭の中は現実感を失ったままだ。

三宅さんは、

「海城くん、今日からここで、一緒に住んでもらう、高島朱莉さん。仲良くしてあげてな」

その言葉に我に返る。

「もちろんです。僕たち、同じクラスなんです」

「そうか、それなら安心だ。健人くんにも、帰ったら、よろしく言っといてくれ」

「わかりました」

「部屋は二階の奥を使ってもらう」

「男子二人に女子が一人では、やりにくいかもしれんが、ゆずりあって気持ちよく暮らしてほしい」

三宅さんはそう言うと、朱莉を連れて二階へ行った。

 

 三宅さんが帰った後、リビングで邦裕と朱莉が話していると、健人が帰ってきた。

「こちらが長澤健人。僕らと同じ高二で、大阪の高校に行ってる」

「健人、今日からここで暮らすことになった高島朱莉さん。同級生なんよ」

邦裕が二人を紹介した。朱莉は健人を見るなり、大きな目をさらに見開いて、「カッコいい」とつぶやいた。邦裕はすかさず、「あかんよ、彼女がいてるから」と注意した。

健人は、「よろしく。仲良くやろうね」と言って、椅子に腰を下ろしながら、

「朱莉さんみたいにかわいい人は大歓迎」爽やかな笑顔を向けた。

「調子に乗って」邦裕が言うと、朱莉は満更でもない表情を浮かべている。

 

「ねえ、決まり事とかあるの?」

「自分の食器は自分で洗う、冷蔵庫に入れるものには名前を書く、洗濯物は自分で干して自分で入れる、トイレと風呂の掃除は順番で、共有スペース、リビングには、私物を置きっぱなしにしない、くらいかな」

「お金の貸し借り禁止もあるよ」健人が付け足す。

「そうそう、パンツはよく邦裕のを借りてるけどな」

「あれはやめてや」邦裕が突っ込むと、

「パンツは除外や」と健人が答える。

朱莉は笑顔でスルーする。

50年ぶりに太陽の塔に再会して、思ったこと。


岡本太郎の本を読んで、太陽の塔を見に行きたくなったので、子どもと一緒に行ってきました。

 

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50年ぶりの対面です。

1970年の万博に連れてきてもらったのが、小学校3年生くらい、9歳だったと思います。

それから50年、今年還暦を迎えたので、半世紀ぶりの太陽の塔との再会です。

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広大な万博公園のなか、そびえ立つ太陽の塔。

そのマス、巨大な塊に圧倒されました。

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50年前は夏でしたが、今は桜が開花し出すころです。

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熱気の残る夜空に、太陽の塔の金色の顔からサーチライトの光線が二本、かなたまで貫いていたのを思い出しました。

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ふだんは会話も少ない子どもに、(といってもとっくに成人していますが)当時の様子を熱心に語っていました。

アメリカ館やソ連館は待ち時間が長くて行けずに、アフリカの名も知らない国の小さなパビリオンをたくさん見て回ったこと、未来が本当に輝いて見えたこと、たくさんの人人人。

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今回は、岡本太郎の本を読んでいたので、その思想、エネルギーに触れてみたくての訪問でした。

太陽の塔が、これまでのイメージとは違って見えました。

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生命の根源というか、生と死の象徴というか。うまく言葉が見つかりませんが、50年の歳月を経てもなお立ち続ける塔は、確実にわたしの残りの人生に影響を与えてくれました。

「自分の運命に楯を突け」岡本太郎 こころに強烈にひびく言葉がたくさんありました。

岡本太郎の「自分の中に毒を持て」を紹介しましたが、さらに「自分の運命に楯を突け」を読んでいます。

 

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まだ読み出したばかりですが、こころにひびく言葉がつぎつぎと現れてきました。

いくつか紹介します。

興味を持ったかたは、ぜひ一読をお勧めします。

 

 

生きがいは自分の運命と闘うことだ。寂しい寂しいというのは、自分に甘ったれてごまかしているだけだ。それじゃあ本当の闘いはできない。

 

「自分の運命と闘う」という積極性、「自分に甘ったれてごまかしている」という厳しい認識。岡本太郎に叱られているような気になりました。思わず背筋が伸びる言葉です。

 

人間の世界は絶望的だ。でも、だからダメだと考えず、その絶望のなかに生きることこそがおもしろいと思って生きる以外にない。それがほんとうの生きがいになる。

 

 コロナ禍で、この一年間は日本中が絶望的な気分で過ごしてきたように思います。

国も知事も誰も救ってくれない。でも「ダメだ」と思わず、「おもしろいと思って生きる以外にない」。つまり、思い切れと言うことです。なかなかそういう境地になれないのが現状ですが。

 

人間の一生がみじめであるなら、だからこそ生きよう、とことんまで自分自身に挑んで。

「自分自身に挑む」という考えが岡本太郎の中に一本の太い柱として通っています。 

 

悩みのない人間なんていない。もしいたら、阿呆だ。悩みとのつきあい方を洗練させるんだよ。

 「悩みのない人間は阿呆」と言い切るところがすごいです。

「悩みとのつきあい方を洗練させる」という発想が斬新です。

「洗練」ですよ!そんなこと、考えたこともありませんでした。参考になりました。

 

現実即空想、空想即現実。ほんとうの生き方とは、空想と現実のからみあいのなかで生きること。

ここで言う「空想」とは「夢」を持つことです。現実に対し、空想を広げることの大切さを言っています。 

 

いちばんおもしろい人生とは、苦しい人生に挑み、闘い、そして素晴らしく耐えること。逆境にあればあるほど、おもしろい人生なんだ。

「逆境」にへこみがちな私たちですが、むしろ、逆境にあるほどおもしろい人生と言いきれる確信に満ちた言葉が力強く励ましてくれます。

 

5章あるうちの1章の一部を紹介しました。

まだまだ力強い言葉に出会えそうです。

太陽の塔を見に行きたくなりました。

 

 

自分の運命に楯を突け (青春文庫)

自分の運命に楯を突け (青春文庫)

  • 作者:岡本 太郎
  • 発売日: 2016/04/09
  • メディア: 文庫
 

 

石川淳「山桜」は上田秋成「青頭巾」、谷崎潤一郎「蘆刈」と同じ結末の構造だった 創作の秘密を探ってみました。

今年2021年の京都大学の入試問題に出題された石川淳「すだれ越し」がおもしろかったので、石川淳が読みたくなり、まず「山桜」を読んでみました。

これがとてもおもしろい小説だったので、紹介します。

 

石川淳「山桜」

 

構成を見ましょう。

 

金を借りに行ったわたし

山桜の下で夢うつつに見た白昼夢

京子の思い出

京子とのあいだに不義があった前提で話が進む

京子の顔を見られないわたし

どうしても見たい 絵に描きたい

愚かなことばを口走ると、京子の姿は消えうせていた

 

つまり

京子に執着するわたしの心が生み出したまぼろしのお話です。

 

本文を書かれている順に見ていきましょう。

本文の引用もあります。

内容理解のため、項目をつけています。

 

・わたしは地図を見て国分寺の駅から歩き、櫟林のほとりで若草の上に寝転ぶ

・一本の山桜とジェラール・ド・ネルヴァルのマントのせい

回想

・本にあった文句が体内にしみいり、ネルヴァルにであったかのように想像する

・身体が中につり上げられ、外へ駆け出てしまう

・巡査に声をかけられる

・青山の親戚の元判事を訪れ金を借りる。十円札に略図

・吉波の別荘「善太郎が病身でな」

・金策はどうともなれ、あおむけにふり仰ぐ、山桜のすがた

山桜の因縁 

・十二年前、青山の判事の家、山桜の下、京子を立たせて写真

・遠縁の吉波善作、騎兵大佐、肥料会社重役に嫁ぐ前の記念のため

・山桜の下にたたずむ、写真機の亡霊、花びらよりほか見えなくなる

・略図を忘れ、浮かれごこちになり、ふわふわここまで迷い込んだ

・吉波家を訪ねることは気がすすまない

・赤い自転車にもたれる子供、小学生「ぼく、おじさん識ってるよ」

・ほとんどわたし独りで歩いて行ったようなもの、どうもおぼろげなのだ

・茫然たる沈静の底に吸い込まれていた

異常な出来事

・立木のあいだを歩きつつ額がじりじり焦げつくような感じ、二つの目が爛々とこちらを睨んでいた

・その視線の鋭さ激しさに突然魔物にでも出逢ったごとく狼狽しかけたとき

・同時にぴしゃりという音がひびいた、それはまさしく憎悪をもって人間の生身を打つ音、打たれたのは京子にほかならない

善太郎

・今まのあたりに見る顔はわたしの顔よりほかのものではない

・かかる怖ろしい秘密がいつの間にわたしを待ち受けていたのか

・このときわたしの想像の中でわたしは善太郎の手を振りきってまっしぐらに門外に駆けだしていたにも係わらず、あれよと見る間にすべりのぼる自分をどうしようもなかった

善作と対峙

・「金を貸してくれませんか」、わたしは屈辱に歯ぎしりしはじめた

京子

・こうして二人きりになってもやはり京子は声をかけるはおろかふり向いてさえくれないのだ

・わたしはときどき独り紙を伸べて京子の姿を描きかけることがあるのだが、

・「京子さん、ちょっとこっちを向いて下さい。ぼくはあなたの顔を見なければならないんだ」

善作

・てのひらにくちゃくちゃとにぎっていたものをわたしの面上に投げつけると、大声にさけびながら階段を駈けおりて行った

善太郎 

・小さな機関車を走らせる支度 「おじさん邪魔だよ。引いちゃうよ、ぽう、ぽう」

善作

・すぐ下の池のそば 善作がこちらに背中を向けて石の上に腰かけ、鞭をふるってぴしゃりぴしゃりと水の面を打っていた

京子

・「京子さん、お宅ではいつもああして鯉に運動させるんですか」

・うしろをふり向くと、とたんに京子の姿は籐椅子の中から拭いたように消えうせ、下枝の葉が二三片風に落ちているばかりであった

・そのときはっと、そうだ、京子は去年のくれ肺炎でたしかに死んでしまっているのだ、まったくそうだったと

・わたしは襟もとがぞくぞくしてその場に立ちすくんでしまった

 

「山桜の因縁」から続く「今」で、「写真機の亡霊」にとりつかれたあたりから怪異の世界に入り込みます。

善太郎の登場で、京子と私のあいだに深い関係があったのかと思わせます。

嫉妬で怒り狂う善作と顔を見せない京子。

わたしが声をかけると…

 

結末部に注目しましょう。

 

これは、上田秋成「青頭巾」と同じ構造になっています。

 

「青頭巾」あらすじ

美少年に愛着した僧が、死んだ少年の肉を食い、狂って村人を襲う。

通りかかった禅僧が、村人のためにこの僧と対峙し、偈を授ける。

一年後再び訪れると、僧はまだ座禅を組んで偈を唱えていた。

禅僧が一括すると、僧の姿は消えて人骨と青頭巾が残っていた。

 

「青頭巾」結末部 一部引用 https://japanese.hix05.com/Ugetsu-monogatari/ugetsu.index.html

 

 

 

さてかの僧を座らしめたる簀子のほとりをもとむるに、影のやうなる人の、僧俗ともわからぬまでに髭髪もみだれしに、葎むすぼふれ、尾花おしなみたるなかに、蚊の鳴くばかりのほそき音して、物とも聞こえぬやうにまれまれ唱ふるを聞けば

   江月照松風吹

   永夜清宵何所爲

 

 禪師見玉ひて、やがて禪杖を拿りなほし、作麼生何所爲ぞと、一喝して他が頭を撃ち給へば、忽ち氷の朝日にあふがごとくきえうせて、かの青頭巾と骨のみぞ草葉にとゞまりける。現にも久しき念のこゝに消じつきたるにやあらん。たふときことわりあるにこそ。

 

 

声をかけると相手が消えてしまうという構造が、「山桜」と同じですね。

実は、この「青頭巾」の結末は、谷崎潤一郎も「蘆刈」で用いています。

ただし、蘆刈は昭和7年、山桜は昭和11年発表なので、谷崎が先ですね。

ちなみに石川淳の文体が、谷崎によく似ていて、一文が異常に長いです。

 

谷崎潤一郎「蘆刈」

 

引用は青空文庫から https://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/56875_58210.html

 

 

いやおもしろいはなしをきかせていただいてありがとうぞんじます、それであなたが少年のころお父上につれられて巨椋おぐらの池の別荘のまえをさまよってあるかれたわけは合点がてんがゆきました、ですがあなたはそののちも毎年あそこへ月見に行かれると仰っしゃったようでしたね、げんに今夜も行く途中だといわれたようにおぼえていますがというと、さようでござります、今夜もこれから出かけるところでござります、いまでも十五夜の晩にその別荘のうらの方へまいりまして生垣のあいだからのぞいてみますとお遊さんが琴をひいて腰元に舞いをまわせているのでござりますというのである。わたしはおかしなことをいうとおもってでももうお遊さんは八十ぢかいとしよりではないでしょうかとたずねたのであるがただそよそよと風が草の葉をわたるばかりで汀みぎわにいちめんに生はえていたあしも見えずそのおとこの影もいつのまにか月のひかりに溶け入るようにきえてしまった。

 

 

 

「お遊さん」という美しい女性を親子で慕う話です。息子の方が話を語って聞かせるのですが、「でももうお遊さんは八十ぢかいとしよりでは」という声をかけられると、姿を消してしまいます。

愛執が妄念の人の姿となって現れたという構造。考えてみると、「源氏物語」にもありました。

「夕顔」の巻で、光源氏が夕顔を別荘に連れ出した夜、美しい女が生き霊となって姿を現します。これも愛執の話なので、先に述べた3作と同じ系統といえるかもしれません。

 

石川淳「山桜」は日本の古典に根ざした、怪異を語る名作だといえるでしょう。

 

焼跡のイエス・善財 (講談社文芸文庫)

焼跡のイエス・善財 (講談社文芸文庫)

  • 作者:石川 淳
  • 発売日: 2006/11/11
  • メディア: 文庫