bluesoyaji’s blog

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人生の最後の日までには読み終えたい小説ナンバー1「失われた時を求めて」マルセル・プルースト 読了に挑戦しよう

プルーストの「失われた時を求めて」の読書がはかどらないので、集英社から出ている抄訳版で読んでみようと思いつきました。

改めてこの長編小説の読書に挑戦しています。

 

まずは、有名なマドレーヌの場面に行きついたので、じっくり読んでみました。

 

集英社文庫 抄訳版 マルセル・プルースト 失われた時を求めて  鈴木道彦・編訳

 

第一篇 スワン家の方へ 

集英社文庫 抄訳版  p72~p81まで

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「プチット・マドレーヌ」

 

有名なマドレーヌの記憶の場面です。

 

概略です。

・夜中に目覚め、コンブレーを思う

私の家の一部、舞台装置のよう

他の記憶は死んでいたー私たちの死があるのでのんびり待っていられない

・ケルト人の信仰

死んだ物の魂は動物、植物、無生物のなかにとらえられている

木のそばを通りかかったり、封じ込めた物を手に入れるまで失われたまま

その日になると、魂は私たちを呼び求め、こちらがわかると魂は帰ってきていっしょに生きる

・私たちの過去も同様

過去は知性の届かないところで予想もしない品物のなかに潜む→(マドレーヌの話への布石)

・ある冬の日、帰宅した私に母が紅茶を勧める

私は無意識にお茶に浸したマドレーヌをひと切れ口にする

私の内部で異常なことがおこる

原因不明の快感、力強い喜び

紅茶のなかでなく、私のうちにある

精神に向き直る

イメージー思い出 何度もやり直す

・一気に思い出があらわれる

コンブレーで叔母がお茶に浸して出してくれた

マドレーヌの味ー匂いと味だけが魂のように残っていて、

気づくやいなや、叔母の家、両親の家、町があらわれた

 

哲学的で難解な考察が続くので、私の頭では、ちょっと読みにくかったです。

読書が苦手という人には読解が厳しいのではないでしょうか。

もう少しわかりやすいものはないかと考えて、他の翻訳と比べてみました。

次の2冊です。

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岩波文庫吉川一義訳

 

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光文社古典新釈文庫 高遠弘美訳

 

特に難解だった部分を引用して比較してみましょう。

 

集英社文庫抄訳版p78

 たしかにこんなふうに私の奥底で震えているのは、イメージであり、視覚的な思い出であるにちがいない。それがこの味に結びつき、その味のあとに従って、私のところまでやってこようとつとめているのだ。だがその思い出は、あまりに遠いところで、あまりにぼんやりとした姿でもがいている。かすかに認められるのは、その鈍い反映だけだが、そこには多くの色彩がかきまぜられ、とらえがたい渦をなして溶けこんでいる。けれども形態は見分けがつかないし、たった一人だけそれを通訳できる者に向かって頼むように、この反映に向かって、それと同時にあらわれた引き離すことのできない伴侶ーすなわちあの味ーの発する証言を翻訳してくれと頼むわけにもいかない。またどんな特別な状況のなかで、過去のどんな時期にこれが生まれたのかを、教えてくれと求めることもできないのである。

 

岩波文庫p114

このように私の奥底でかすかに震えているのは、たしかにイメージであり、視覚的な想い出にちがいない。それがあの風味と結びつき、その風味を追って私のところまでやって来ようとしているらしい。しかし想い出は、あまりにも遠いところで、あまりにも混沌とした状態でうごめいている。微かに見えてくるのは冴えない光で、そこにいろいろな色彩をかきまぜたような捉えがたい渦巻きが認められる。しかし私には、その形が判然としないうえ、それを通訳できるたったひとりの者たるその想い出に、同時代の切り離しえない伴侶である風味の証言を私に翻訳してくれるよう頼むこともできない。それがどんな特殊な状況の、どんな過去の時期のものなのか、私に教えてくれるよう頼むことができないのだ。

 

光文社古典新訳文庫 p119

私の奥底でこうして震えているのは、たしかに、あの味に自らを結びつけ、味のあとをたどって私のところまで来ようとしているイメージであり、視覚的な記憶ではあるだろう。だが、それはあまりに遠いところで、およそ漠然とした形でもがいているばかりで、私の目には、さまざまな色がかき混ぜられて、はきとわからぬ渦巻となって溶け込んでいるくすんだ反映がかろうじて見える程度にすぎない。しかも私には形さえ判別できないそうした反映に向かって、ただひとりしかいない通訳として、同じ時間を生きている分かちがたい伴侶であるあの味から発せられる証言を私のために翻訳してくれと頼むことも、また、あれはいったい、過去のどんな個別的状況や時代に関わっているか教えてくれるように頼むこともできないのだ。

 

読みやすさを客観的に分析するために、「一太郎」のツール「文章校正-読みやすさ」を使ってみました。

 

集英社

岩波

光文社

総文字数

361文字

321文字

331文字

文数

6文

6

3

段落数

1段落

1段落

1段落

平均文長

60文字

54文字

110文字

平均句読点間隔

17文字

18文字

18文字

文字使用率 漢字

19

23

22

文字使用率 カタカナ

1

1

1

 

 

総文字数は集英社が一番多く、岩波が一番少ない。

文数は、集英社、岩波の6文に対して、光文社の3文が目を引きます。そのため平均文長は光文社が110文字で最長、岩波の54文字の倍です。

漢字の使用率は、大差なしです。

 

この結果からみると、文長が長い光文社が読みにくそうに思うかもしれません。しかし、私個人の実感では、光文社が一番読みやすかったです。次いで岩波。集英社はかなり読みにくかったです。

 

もし、「失われた時を求めて」を読んでみたいという高校生がいたなら、私は光文社の高遠弘美訳を勧めます。

 

みなさんはどの訳で全巻読破に挑戦しますか?