bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

小説 連載を始めました。「邦裕の孤愁 くにひろのこしゅう」第1話 朱莉がやって来る

 高校二年生が始まった日朱莉は突然、邦裕と健人の住む家にやって来た。

 邦裕と健人は、三宅さんの所有するシェアハウスに住んでいる。そこから高校に通っている。

 邦裕は小学校六年生の時、突然両親が死んでしまい、叔父に引き取られて、二人で暮らしていた。中二の時に、叔父が結婚することになり、ここに来た。

 健人は裕福な家で、何自由なく過ごしてきたが、モデル業と芝居に夢中になり、親と衝突して実家を離れ、ここで一人暮らしをしている。

 邦裕と健人は一緒に暮らして二年になる。大きな喧嘩もなく、仲良くやってきた。

 そこへ、突然、朱莉が加入することになった。

 三宅さんに連れられてやって来たのは、今日、同じクラスになったばかりの朱莉だった。

学年一の美人との評判で、しかも成績優秀、しっかり者ときている。

 邦裕は、なぜ、朱莉がここに来たのだろうと思った。お互い事情は詮索しないのが邦裕たちのルールなので、彼女に直接聞くことはしない。事情よりも大切なのは、うまく同居をやっていくことだ。健人とは同性同士だったからやって来れたが、一人っ子だった邦裕には、女子と暮らすのははじめてだ。健人は彼女がいるので、女子のことはよくわかっているのが頼りだ。

 こんなことは、後から思ったことで、朱莉が三宅さんとリビングに入って来たときには、邦裕は、驚いてしばらく思考が停止してしまった。

 朱莉は、邦裕を見るなり、大きな目をさらに見開いて、

「あら、海城くん、ここに住んでるの?」

信じられないという顔で口を開けている邦裕の顔を眺める。

「今日からよろしくね」

そう言って白い歯を見せた。

邦裕の頭の中は現実感を失ったままだ。

三宅さんは、

「海城くん、今日からここで、一緒に住んでもらう、高島朱莉さん。仲良くしてあげてな」

その言葉に我に返る。

「もちろんです。僕たち、同じクラスなんです」

「そうか、それなら安心だ。健人くんにも、帰ったら、よろしく言っといてくれ」

「わかりました」

「部屋は二階の奥を使ってもらう」

「男子二人に女子が一人では、やりにくいかもしれんが、ゆずりあって気持ちよく暮らしてほしい」

三宅さんはそう言うと、朱莉を連れて二階へ行った。

 

 三宅さんが帰った後、リビングで邦裕と朱莉が話していると、健人が帰ってきた。

「こちらが長澤健人。僕らと同じ高二で、大阪の高校に行ってる」

「健人、今日からここで暮らすことになった高島朱莉さん。同級生なんよ」

邦裕が二人を紹介した。朱莉は健人を見るなり、大きな目をさらに見開いて、「カッコいい」とつぶやいた。邦裕はすかさず、「あかんよ、彼女がいてるから」と注意した。

健人は、「よろしく。仲良くやろうね」と言って、椅子に腰を下ろしながら、

「朱莉さんみたいにかわいい人は大歓迎」爽やかな笑顔を向けた。

「調子に乗って」邦裕が言うと、朱莉は満更でもない表情を浮かべている。

 

「ねえ、決まり事とかあるの?」

「自分の食器は自分で洗う、冷蔵庫に入れるものには名前を書く、洗濯物は自分で干して自分で入れる、トイレと風呂の掃除は順番で、共有スペース、リビングには、私物を置きっぱなしにしない、くらいかな」

「お金の貸し借り禁止もあるよ」健人が付け足す。

「そうそう、パンツはよく邦裕のを借りてるけどな」

「あれはやめてや」邦裕が突っ込むと、

「パンツは除外や」と健人が答える。

朱莉は笑顔でスルーする。