『発酵文化人類学』小倉ヒラク 木楽舎
「碁石茶」というものが紹介されています。
一部を引用します。
高知県北部、四国のほぼ真ん中にある嶺北と呼ばれる山間地に、「碁石茶」と呼ばれる不思議な発酵茶がある。製造されているのは日本でただ一箇所。
碁石茶は(中略)発酵カビによって発酵させる。これこそが碁石茶が「最澄の茶の子孫」であり、大陸から伝わった薬茶の祖先である証拠だ。
碁石茶は二段階の発酵プロセスを経て完成する。むしろの上でのカビ付けと、樽のなかでの発酵だ。前者は酸素のある場所で発酵カビを増殖させ、後者は酸素のない場合で乳酸菌を増殖させる。つまり環境を切り替えて、異なる発酵菌たちをバトンリレーさせていく。
碁石茶を飲んでみると、ただの酸味ではなく、お茶っぽくない旨味をかすかに感じる。これはなんぞや?と思って碁石茶を発酵させる乳酸菌を調べたところ、すんきの旨味をつくり出す乳酸菌(L・プランタルム)がいることがわかった。
発酵カビがつくりだす熟成した風味と、乳酸菌のつくる酸味と旨味が相まって、碁石茶はもはや調味料のような風情がある。そして実際に、瀬戸内の諸地域には「碁石茶の茶粥」のレシピが残っている。
おもしろく思い、アマゾンで販売していたので即購入しました。
ひとかけらが3cm四方程度で、茶葉なのに固形物という感じがします。
湯を注ぎ、5分ほど待つと、紅茶よりも薄い色合いのお茶が出来上がります。
飲むとやや酸っぱさとお醤油に似た味が感じられます。
緑茶とは全く違う味わい。個性はあるが飲みにくさはありません。おいしく飲みました。
私は出身が徳島で、阿波晩茶を飲んで育ってきました。
碁石茶と味を比べてみると、阿波晩茶の方が酸っぱさが強いと思います。
うちの子どもに阿波晩茶をすすめると、一口含み、酸っぱいといってそれ以上飲みませんでした。晩茶の個性になれると癖になるのですが。
私が子どものときには、風邪の予防のためといって晩茶に塩を入れてうがいをしていました。
また、母が晩茶の出がらしを床に散らして掃き掃除をしていたのを思い出します。
身近にあった阿波晩茶ですが、近年は徳島でも手に入れるのが難しくなっています。
夏の盛りに収穫し、製造するには人手がたくさん必要だそうです。徳島も人口減少で若い働き手が少ないのでしょう。
徳島在住の私の友人も、上勝町の晩茶の生産者に頼まれて、晩茶作りの手伝いに行っていると言っていました。
阿波晩茶を残していこうとする人が増えないと、味わえなくなる日が来るかも知れません。
晩茶作りのワークショップをすると人手が集まるかも。貴重な体験ができますから。
阿波晩茶の産地 上勝町の紹介はこちら
http://www.kamikatsu.jp/kankou/
ウィキペディアに「阿波晩茶」の項目があります。
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=阿波晩茶&oldid=66006484
発酵のつながりで、「碁石茶」と「阿波晩茶」について書きました。
関心を持たれた人は、ぜひ『発酵文化人類学』を一読されることをおすすめします。