「現代小説作法」大岡昇平 ちくま学芸文庫
25章まであり、たとえば、16章は「モデルについて」。実践的な内容が、語り口調で書かれています。
この本を知ったきっかけは、大学入試問題です。
武庫川女子大学の推薦入試問題で、この16章「モデルについて」が全文、取り上げられていました。
武庫川女子大学は、関西ではトップレベルの女子大学です。
問題を解いてみると、なかなかこの本文がおもしろくて、ためになる。もちろん、小説を書く上での「ためになる」です。
受験生には少し専門的すぎる題材なのかもしれません。しかし、大学生になって、一般教養の内容として、この程度の文章を読んで理解する力を求められることは十分あります。
人物が勝手に動き出したからいい作品になるとは限りませんが、人物の自分から動くに任せる、これはトルストイも「アンナ・カレーニナ」について、漱石が「明暗」執筆中に言っていることでこれは作者の経験から出た貴重な忠告なのです。
私は小説は書かないのですが、モデルの有無が作品に大きな影響を与えることがよく理解できました。
もし、小説を書く機会があれば、身近にいる人をよく観察して、モデルにして書いてみたいと思います。
著者の大岡昇平は、フィリピンで米軍の捕虜になり、そのときの体験を元に書いた小説で知られる作家です。「俘虜記」は、高校の教科書にも載っていました。
私は若い頃、「武蔵野夫人」や「レイテ戦記」を読みました。
特に「レイテ戦記」はすごかった。
いつ、どこで、だれが、どんな戦闘で死んだかを詳細に記述しています。戦闘がリアルに迫ってきます。読んでいると少し苦しくなりました。
この「現代小説作法」は、小説が好きな人、小説を書いてみたい人、小説の勉強がしたい人におすすめです。
ぜひ読んでみてください。