東京医科大学の不正入試問題が報道されて、いろいろ考えるところがありました。
次の図は、ベネッセが公表している入試結果から、成績の各層における合否数を抜き出して比較したものです。
全受験者の合否結果ではないので、そこはご注意ください。
私立大合否分布(一般入試 募集単位集計) | ||||||
ベネッセ 2018入試結果調査 私立大・短大・専修学校・各種学校 | ||||||
偏差値は2017年度進研模試3年生7月記述と10月記述 | ||||||
合格者数、不合格者数はこの調査で集計できた数 | ||||||
東京医大 | 東京女子医 | 大阪医大 | ||||
偏差値 | 合格 | 不合格 | 合格 | 不合格 | 合格 | 不合格 |
80~85 | 7 | 6 | 2 | 1 | 26 | 8 |
75~79 | 24 | 45 | 10 | 3 | 53 | 32 |
70~74 | 38 | 120 | 21 | 34 | 20 | 92 |
65~69 | 22 | 173 | 18 | 78 | 9 | 90 |
比較対象として、東京女子医大、大阪医大を選んだ。
東京女子医大は女子学生のみということで、性別による偏りが一切発生しない。
大阪医大は、ベネッセの偏差値が東京医科大と同じ66である。
数値を見るポイントは、成績が上位すなわち偏差値が高い割に、不合格となるケースがどのくらいあるか、逆に、成績が下位の割に合格となったケースを調べてみた。
そこに学力成績以外の要素が入り込む余地がどの程度あるかを見るためである。ただし、あくまで可能性である。
まず目に付くのは、東京医科大の成績が最高位(偏差値80以上)の合否が7人対6人、ほぼ対等の割合であること。
東京女子医大は2人対1人、大阪医大は26人対8人である。
ちなみに東京大学理科Ⅲ類(医学部)は、35人対30人である。
東京医科大では偏差値80以上の成績でも、けっこう不合格になっていることが気になった。
次に、偏差値75~79の層の合否を見てみる。
東京医科大 24人対45人
東京女子医大 10人対3人
大阪医大 53人対32人
この層では東京医科大は不合格が2倍、他校は合格者のほうが多い。
さらに気になる数値は、東京医科大の偏差値65~69の合格者数が22人。
東京女子医大18人対78人、大阪医大は9人対90人。
大阪医大と比べると、東京医科大はけっこうな合格数があることが気になった。
つまり、東京医科大は、成績上位者でも不合格となり、下位者でも合格する割合が一定数見られるということである。
これらの傾向は、医学部受験を指導する立場の人(予備校、塾、進学校の教師、情報産業の従事者)なら、気づくことではないか。
このデータは、男女比率がわからない数字なので、正確ではないことはお断りしておく。
本来、学力成績が上位にもかかわらず、女子であること、多浪生であることを理由に点数を操作され、不合格になった人が大勢いるというこの事実に、今まで誰も気づかなかったのだろうか。気づいていても、声を上げず黙認してきたのだろうか。
実際に東京医科大を受験し、不合格になった女子、多浪生の心中を思うと、何とも言えない気持ちになる。
医学部を目指すような優秀でこころざしの高い若者を愚弄する今回の問題をどう解決するのか。大学と国の責任が問われている。