2018年 センター試験 国語 第1問 評論は難しくなかった その傾向を分析しました
評論の出典は 『デザインド・リアリティー集合的達成の心理学』有元典文・岡部大介
国語の問題は http://nyushi.nikkei.co.jp/center/18/1/exam/3910.pdf
本文の要旨をまとめました。 番号は各段落(形式段落)の番号です。
1 「後でテストする」
2 整理してノートを取る、用語を繰り返し唱えるー暗記に向けた聴き方へ
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学習や教育の場のデザイン
3 講義ー語りの部分だけでも多様な捉え方が可能
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世界は多義的でその意味と価値はたくさんの解釈に開かれている
4 「後でテストする」は授業の持つ多様性をしぼり込む→記憶すべき一連の知識として設定
5 デザインとはーある目的を持って意匠・考案・立案すること
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意図的に形づくること、その構造
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ひとのふるまいと世界のあらわれについて
6 私たちーデザインという概念をどう捉えようとしているのか
7 デザインの語源は印を刻むことー自分たちが生きやすいように自然環境に印を刻み込み、自然を少しづつ文明に近づけた
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今ある現実に「人間が手を加えること」
8 環境の改変ー人間の何よりの特徴
デザインーまわりの世界を「人工物化」することーアーティフィシャル
9 今ある秩序を変化させるーことなる意味や価値を与える
例ー本にページ番号をふる→任意の位置にアクセス可能
・一日の時の流れを二四分割すること
・地名をつけて地図を作り番地をふること
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こうした工夫によって現実は人工物化され、これまでと異なった秩序として知覚されるようになる
10 今とは異なるデザインー現実の別のバージョンを知覚
あるモノ、コトに手を加え、新たに人工物化し直すこと=デザインすることで、世界の意味は違って見える
例ー湯飲み茶碗に持ち手をつけると珈琲カップになる
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モノから見て取れるモノの扱い方の可能性=アフォーダンスの変化
11 モノは、たたずまいの中に、モノ自身の扱い方の情報を含んでいる
鉛筆ー「つまむ」 バットー「にぎる」
12 モノの物理的形状の変化は、ひとのふるまいの変化につながる
13 ふるまいの変化はこころの変化につながる
たくさんのカップー可搬性の変化ー知覚可能な現実そのものが変化
14 デザインー「対象に異なる秩序を与えること」
物理的な変化、アフォーダンスの変化、ふるまいの変化、こころの変化、現実の変化
例ーはき物をデザインー自然の摂理が創り上げた運命を簡単な工夫が乗り越えてしまう
15 私たちの住まう現実ー文化的意味と価値に満ちた世界
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文化や人工物の利用可能性や文化的実践によって変化する自分たちの身の丈に合わせてあつらえたオーダーメイドな環境
人間が「デザインした現実」を知覚し、生きてきた
16 デザインによって変化した行為を「行為(こういダッシュ)」と呼ぶ
例ー本の読みかけの箇所を探す時
素朴な探し出し「記憶」→ページ番号に助けられた「記憶(きおくダッシュ)」活動
17 人間になまの現実はなく、すべて自分たちで作ったと考えれば、すべての人間の行為は人工物とセットになった「行為(こういダッシュ)」だといえる
18 人間ー環境を徹底的にデザインし続け「環境(かんきょうダッシュ)」を生きている
心理学への批判ー「記憶(きおくダッシュ)」を人間本来の「記憶」と定めた無自覚さ
19 人間の現実をデザインするという特質ー本質的、基本的な条件
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人間性ー社会文化と不可分のセットで成り立つ
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「原心理」は想定できず、文化歴史的条件と不可分の一体である「心理学」として再記述される(べき)
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「文化心理学」ー人間を文化と深く入り交じった集合体の一部であると捉える
*「記憶(きおくダッシュ)」以下の(~ダッシュ)は、「ダッシュ記号」が表示できなかったため、記入しています。
問題文の分析をしました。設問の分析は予備校や塾などのものを参考にしてください。
例としてあげられた項目が受験生にとって身近なものなので、内容が理解しやすい。
・授業内容のテスト
・本にページ番号をふる
・湯飲み茶碗に持ち手をつけると珈琲カップになる
・鉛筆、バット
・ビーチサンダル
・(自転車、電話、電子メール)
・台所ブーツ
・買い物の暗算、百マス計算、そろばん、表計算ソフト
8、15、16段落の要旨が重要。
「行為(こういダッシュ)」という考えを理解し、心理学が批判されている理由をつかむ
長文なので、本文に目印を付けたり(線を引く)、メモをとったりすることが必要。ただし、時間がかかる
アフォーダンスという概念は初めて聞く者が多かったのでは。
引用の人名は「ヴィゴツキー」一人だけなので、知らない名前からくる不安も小さい。
(やたらとロラン・バルト、レヴィストロース、フーコーが云々と引用されても困ります)
新傾向の設問(問3)は容易、大学入学共通テストに向けての変化でしょう。
それから考えると、今後、求められる国語力、知力は、哲学的、抽象的な論理の世界を読み解く力ではなく、ある程度の量の情報の意味を理解する力といえるのではないでしょうか。
「デザインすることで、世界の意味は違って見える」という知は、受験生にとって、おもしろい(示唆的)ものだったでしょう。
国公立大学の文系学部廃止の流れに対して、この評論は、広義で「文化」を重視し、文系を援護したものと読めるのですが。そうであるなら、出題者(大学入試センター)の良識?がうかがえる問題文であったといえます。
センター試験としてはあと2回で終わりなので、今後もぜひ良問を期待します。