bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

福田恆存「一匹と九十九匹とーひとつの反時代的考察」 慶應義塾大学法学部 2021年論述力問題を解いて考えた これってSTRAYSHEEP?

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慶應義塾大学法学部 論述力 2021年

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問題は河合塾のサイトから引用しました

https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/21/k12.html

 

 

数字は形式段落の通し番号です。

各段落で重要な箇所を引用しました。

表記を現代仮名遣いに直してあります。

 

1ぼくはぼく自身の内部において政治と文学とを截然と区別するようにつとめてきた。
「なんじらのうちたれか、百匹の羊をもたんに、もしその一匹を失はば、九十九匹を野におき、失せたるものを見いだすまではたずねざらんや」(ルカ伝第十五章)

一度も罪を犯したことのないものよりも罪を犯してふたたび神のもとにもどってきたものに、より大きな愛情を持って対するクリスト者の態度を説いたもの
2このことばこそ政治と文学との差異を恐らく人類最初に感取した精神のそれである
九十九匹を救えても、残りの一匹においてその無力を暴露するならば、政治とはいったいなにものであるかーイエスはそう反問している。
もし文学もーいや、文学にしてなおこの失せたる一匹を無視するとしたならば、その一匹はいったいなにによって救われようか。
3善き政治はおのれの限界を意識して、失せたる一匹の救いを文学に期待する。が、悪しき政治は文学を動員しておのれにつかえしめ、文学者にもまた一匹の無視を強要する。
それが政治である以上、そこにはかならず失せたる一匹が残存する。文学者たるものはおのれ自身のうちにこの一匹の失意と疑惑と苦痛と迷いとを体感していなければならない。
4この一匹の救いにかれは一切か無かを賭けているのである。なぜなら政治の見のがしてきた一匹を救い取ることができたならば、かれはすべてを救うことができるのである。

善き文学と悪しき文学との別は、この一匹をどこに見いだすかによってきまるのである。一流の文学はつねにそれを九十九匹のそとに見てきた。が、二流の文学はこの一匹をたずねて九十九匹のあいだをうろついている。

ひとびとは悪しき政治に見すてられた九十匹に目くらみ、真に迷える一匹の所在を見うしなう。これをよく識別しうるものはすぐれた精神のみである。なぜなら、かれは自分自身のうちにその一匹の所在を感じているがゆえに、これを他のもののうちに見失うはずがない。

5ぼくたちの文学の薄弱さは、失せたる一匹を自己のうちの最後のぎりぎりのところで見ていなかったーいや、そこまで純粋においこまれることを知らなかった国民の悲しさであった。

が、彼らの下降しえた自己のうちの最後の地点は、彼等に関するかぎり最後のものでありながら、なおよく人間性の底をついてはいなかった。なぜであるかーいうまでもない、悪しき政治がそれ自身の負うべき負荷を文学に負わせていたからである。

6ぼくが今まで述べてきた文学と政治との対立の底には、じつは個人と社会との対立がひそんでいるのである。

そして現代の風潮は、その左翼と右翼とのいずれを問わず、社会の名において個人を抹殺しようともくろんでいる。

7個人は社会的なものをとおして以外に、それ自身の価値を、それ自身の世界をもつことを許されない。社会は個人をその残余としてみとめず、矛盾対立するものとして拒否するのである。

8ひとびとはあらゆる個人的価値の底にエゴイズムを見、それゆえに個人は社会の前に羞恥する。

社会正義という観念の流行にもかかわらず、現実は醜悪な自我の赤裸々な闘争の場となっているではないか、いや、なお悪いことに、あらゆる社会正義の裏口からエゴイズムがそっとひとしれずしのびこんでいる。

9政治と文化との一致、社会と個人との融合ということがぼくたちの理想であることーそのことはあたかも水を得るために水素と酸素との化合を必要とするということほど、すでに懐疑の余地のない厳然たる事実である。

問題はその方法である。その理想を招来するための政治や文学の在り方、社会や個人の在りかたが問題なのである。ぼくは両者の完全な一致を夢見るがゆえに、その截然たる区別を主張する。

10ぼくたちは見うしなわれたる一匹のゆくえをたずねて歩かねばならぬであろう。

そしてみずからがその一匹であり、みずからのうちにその一匹を所有するもののみが、文学者の名にあたいするのである。

 

要約

 

百匹の羊のうち一匹をうしなえば、その一匹を探すのがイエスの教えである。

政治と文学との差異も同じで、政治では救えない一匹を救うのは文学である。

しかし、近代日本文学は、一匹に向き合えなかった。個人と社会の対立が潜んでいる。

社会正義のもと、個人のエゴイズムは排除され、個人は社会から抹殺される。

政治と文化との一致、個人と社会の融合のために、その厳然たる区別が必要だ。

 

設問

「個人と社会の緊張と対立について、あなたの考えを具体的に論じなさい」となっています。

 

最近の問題で思いつくものをあげてみます。

・コロナ禍の自粛と経済問題

・貧困、貧富の格差問題

・生活保護などセーフティネットの問題

・自己責任論

・政治家の忖度、責任回避問題

・マスコミ報道の問題

・原発事故による故郷喪失の問題

いずれの問題も、現代の日本社会が九十九匹どころか、わずかの羊しか救っていないこを示しています。

一匹を救うことの意味をしっかり考えて、具体的に意見を述べましょう。

 

河合塾のサイトに解答例が掲載されています。(冒頭のリンクを参照)

 

 

感想

なかなかの難問です。

読解が難しい。今の高校生が福田恆存の文章に触れる機会は皆無でしょう。教科書はもちろん、問題集、参考書に掲載されているのを見たことがありません。

三十数年、高校教師をしている私でも、福田恆存の名前と顔写真ぐらいしか知りませんでした。

1947年発表のこの文章を読ませる慶應義塾大学の意図は、どこにあるのでしょう。

さすが慶應義塾大学としか言いようがありません。この問題を読解して論述する力のある人は、相当優秀でしょうね。私が高校生だったら、即撃沈です。

未来の日本を開いていくであろう人材に期待しましょう。

 

さて、もう一つ気になったことがあるので、書いておきます。

冒頭に引用されている「一匹の羊」の話は、いうならばSTRAYSHEEPストレイシープ、迷える羊のことですね。

ストレイシープといえば、漱石の三四郎で有名ですが、今は、米津玄師さんのアルバムタイトルとしても知られています。

米津さんは、ひょっとしたら、この福田恆存と同じ考えでないのかと思いました。

今の日本の政治で救えない一人を音楽で救おうと考えているのではないでしょうか。

 

そういえば、米津さんのライブに行ったとき、米津さんが今までのファンを一人もこぼさずにやっていきたいという話をされていました。

今から思えば、一匹の羊と通じる話です。

 

さすが米津さん。宮沢賢治や中原中也だけでなく、福田恆存まで読んでいたとしたら、空恐ろしい人ですね。

 

 

 

高校教師が解いてみた 2021年 早稲田大学法学部 国語 第3問 今福龍太『宮沢賢治 デクノボーの叡知』

コロナ禍での大学入試が行われている中、2021年の早稲田大学の問題が興味深かったので、解いてみました。 

第3問 今福龍太『宮沢賢治 デクノボーの叡知』からの出題です。

 

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形式段落に通し番号をつけると、8段落になります。

それぞれの段落で、重要と思われる部分を抜き出しました。

読解の参考にしてください。

そして、設問への解き方を簡単に解説しました。参考にしてください。

 

各段落の重要箇所

 

1〜3は筆者の体験と考察
4〜8はフォークナーの小説「熊」の考察

1野生の熊に出くわした体験ーカナダと北海道
 恐ろしい獣への畏怖というよりは、むしろ不思議な昂ぶりのような感覚
 自らが失ってしまった「野生」との繋がりを深い記憶の底からさぐりだし、かつてありえた森羅万象との「一体化」の夢を熊に託していた
 人間の本源的な感覚意識の重要な部分に触れてくる、特別の喚起力をもった生き物


2人里に現れる熊の増加ー奥山と里山との関係の変化
 人の気配がなくなった中山間地域に警戒心を解いた熊が出入りするようになった
 「害獣」として認識されるようにさえなってしまい
 aを持続してきた人類の長い歴史が、いま大きな転換期にある


3人間にとってどのような存在だったのか
 人間が、おのれの自然的存在の根源について思考しようとしたときに現れるものが熊であったとすれば、熊を害獣として、あるいは危険生物として撃退するような発想は、人間という存在の本質をも否定してしまうことにつながりかねない


4ウィリアム・フォークナーの小説「熊」
 狩猟を通じて行われる一人の若者の精神形成を描いた、謙虚さと勇気の獲得をめぐる「教養小説」の姿をとっていますが、ほんとうは野生動物と人間とのあいだの深い交感と厳格な掟をめぐる哲学的な主題を持った作品なのではないか


5少年は、近代的な搾取者としての猟師であることから離れ、より深い自然との融合の場へと参入していく


6熊が死ぬと人も死ぬ。それは、つまり原生林の掟の中で生きる生命すべてが、連続した一つの命脈によってつながっていることを示唆しています。
自他融合の中の高次の理法を知ること
知らず知らず人間中心主義に染まった道徳観念を打ち立ててしまった私たち


7太古からの自然の摂理、この「森の掟」についての物語


8「古の野生」そのものの不可侵にして深遠な存在が、暗示されています
しかし、…「破砕と破壊の回廊」のなかを凶暴な獣として駆け抜けるほかなかったのです。
アイク少年は、…破壊の歴史を、インディアンと黒人という虐げられた者たちが持つ深い叡知を通じて、自らの内面においてすでに抱き取っていたのでした。

 

設問を見ていきます

問十三 漢字の書き取り
A峡谷 「狭い」と間違いやすい
B火急 火が燃え上広がるように急なこと

Bの火急がわかりにくいかもしれません。

 

問十四 「釘付けになった」の意味
 「目が」とセットで「目が釘付けになる」となって、美しさに心が引かれる、の意味になります。

これは簡単。


問十五 「不思議な昂ぶりのような感覚」の説明
傍線部2の次の行に「自らが失ってしまった『野生』との繋がりを深い記憶の底からさぐりだし、かつてありえた森羅万象との『一体化』の夢を、熊に託していたのかもしれません」とあります。
これを踏まえると、
イは「自分もそうありたいというあこがれの気持ちを〜」が×
ロは「文明化する以前の人間の生の痕跡があることを実感し、」が○、「言い知れぬ喜びがこみ上げてきた」が「昂ぶりのような感覚」とも解釈できるので、これが正解。
ハは「信仰の対象ともなっていた」「満ち足りた思いを感じていた」が×
ニは「ふてぶてしさにたじろぎながらも」「その『熊』に立ち向かうために〜」が×
ホは「わが物顔に闊歩する『野生の熊』の荒々しい様子」が×

 

問十六 aにあてはまる語句
2段落では、奥山が生息域であった熊が、近年里山にえさを求めて出入りするようになった。人間は害獣とと見なすようになったとあります。これを踏まえて
イ深い共棲の関係が○
ロ都市と農村が×
ハ恩恵に依存するが×
ニ一方的に搾取が×
ホ信仰と文化が×

これも簡単。

 

問十七 「熊を害獣として、あるいは危険生物として撃退するような発想は、人間という存在の本質をも否定してしまうことにつながりかねない」について、人間と熊との関係の説明として適切でないものを二つ選ぶ。
イ「森の主」として、君臨し、恐れられた存在が×
ニ山間部の奥地にまで人間の開発の手が伸びたことで、熊たちは本来の生息地を奪われが×
ロ、ハ、ニはいずれも本文の記述と一致する。
したがって適切でないものはイ、ニが正解

 

問十八 b、cにあてはまる語句の組み合わせ
5段落 bを撃つことではなく、過去から伝えられた自然という大いなるcを受けとめようとするアイク。
こうして少年は、近代的な搾取者としての猟師であることから離れ、より深い自然との融合の場へと参入していくのです
とあります。これを踏まえて、
bに入るのは、イ、動物 ニ、獲物。cはイ資源は×、ニ遺産は○。したがってニが正解

 

問十九 「フォークナーが『熊』で描こうとした真のもの」の説明
イは「たった一人で『オールド・ベン』に立ち向かっていく様子を描くことで」が×
ロは「他ならぬ自らの手で葬り去ろうと決意していた」が×
ハは「近代文明との戦いに敗れ去っていく『オールド・ベン』の姿を見つめる」が×
ニは「自然と共に生きる世界を作り上げてきた先駆者たちの労苦を描くことで」が×
ホは「野生の中で生きる術を決定的に失った人間の悲劇が象徴的に表現された」が○。これが正解

 

問二十 問題文の構成や表現の説明
イは「自然環境に関する一般的な理解を否定する根拠として」が×
ロは「後半部で批判することにより」が×
ハは「表現を工夫しながら思考を深めていくさまを確認することができる」が×
ニは「文学的な想像力の広がりの方を優先することで」が×
ホは3段落「熊から人は何を学んできたのか。これらの問いは、いまこそ考えてみるに足るカキュウの問いであるように私には思われます」、4段落「ほんとうは野生動物と人間とのあいだの深い交感と厳格な掟をめぐる哲学的な主題」、8段落「原生の森もまた『時代錯誤』というべき人間たちの長年にわたる所業によって侵略され続け」などから、これが正解

ハが紛らわしい。

 

出典の『宮沢賢治 デクノボーの叡知』を調べてみると、次のホームページを見つけました。

 

「考える人」というサイト

「宮沢賢治の気流に吹かれて」という題名で

今福龍太×真木悠介の対談が掲載されています。

https://kangaeruhito.jp/interview/18624

この「考える人」というサイトは注目しておくといいでしょう。

大学入試の出題者は、このサイトから出典を選んでいるように思われるからです。

あくまで憶測です。

 

源氏物語 現代語訳 話題の角田光代訳を与謝野晶子訳、谷崎潤一郎訳と比べてみました

長編小説で読了が難しい作品と言えば、「失われた時を求めて」ですが、我が国の傑作古典「源氏物語」も読了が難しいです。

 

www.bluesoyaji.com

 

長年、国語教師をしていますが、何度も読了に挑戦したものの、できませんでした。

そこで考えたのが、現代語訳ならいけるのではないかと言うことです。

今、話題の角田光代訳を購入し、読み始めてみると、これがすらすら読めてしまうのです。

 

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源氏物語 上 角田光代訳 河出書房新社

 

そこで、持っている与謝野晶子訳と谷崎潤一郎訳との比較をしてみました。

選んだのは「夕顔」の廃院の怪奇場面です。

みなさんも読み比べてみてください。

 

 

角田光代訳

 日が暮れてしばらくたった頃である。うとうととまどろむ光君の枕元に、うつくしい女が座っている。
「こんなにもあなたをお慕いしている私には思いもかけてくださらないのに、こんななんということのない女をここに連れこんでかわいがっていらっしゃるなんて……。あんまりです」と言い、女は、光君のそばに寝ている女を掻き起こそうとする。何かに襲われるような気が しては っと目を覚ますと、灯も消えていた。光君はぞっとして、太刀を引き抜いて魔除けのために枕元に置き、右近を起こす。右近もおそろしく思っていたようで、すぐに近くに来た。
「渡殿にいる宿直の男を起こして、紙燭をつけて持ってくるよう言ってくれ」と光君は言うが「こんなに暗いなか、とても行けません」と答える。
「子どもっぽいことを言うね」と光君は笑い、手を叩く。その音がこだまになって奥から不気味に返ってくる。

 

与謝野晶子訳

 十時過ぎに少し寝入った源氏は枕の所に美しい女がすわっているのを見た。
「私がどんなにあなたを愛しているかしれないのに、私を愛さないで、こんな平凡な人をつれていらっしって愛撫なさるのはあまりにひどい。恨めしい方」
 と言って横にいる女に手をかけて起こそうとする。こんな光景を見た。苦しい襲われた気持ちになって、すぐ起きると、その時に灯が消えた。不気味なので、太刀を引き抜いて枕もとに置いて、それから右近を起こした。右近も恐ろしくてならぬというふうで近くへ出て来た。
「渡殿にいる宿直の人を起こして、蝋燭をつけて来るように言うがいい」
「どうしてそんな所へまで参れるものでございますか、暗うて」
「子供らしいじゃないか」
 笑って源氏が手をたたくとそれが反響になった。限りない気味悪さである。

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谷崎潤一郎訳

 宵が過ぎた頃しばらくとろとろとなさいますと、おん枕上にたいそう美しい女がすわっていて、「めでたいお方よと存じ上げて、こんなにお慕い申している私を構って下さらないで、何の見どころもないこのような人をお連れなされて、御寵愛なさるとは、口惜しくも腹立たしゅう」と言いながら、お側の女君を揺り起そうとすると御覧になります。ものにおそわれた心地がして、驚いて眼をおさましになりますと、燈火も消えています。何だか厭な気持がなさるので、太刀を引き抜いてお置きなされて、右近をお起しになります。と、これも怯えているらしい様子で、寄り添って来ます。「渡殿にいる宿直人を起して 紙燭をつけて参れと申せ」と仰せになりますと、「どうして参れましょう、こんなに暗うございますのに」と言いますので、「何だ、子供らしい」とお笑いなされて、手をお叩きになりますと、山彦の答える声が、たいそう無気味に響きます。

 

一太郎の文書校正の読みやすさで調べてみました。

 

角田光代

与謝野晶子

谷崎潤一郎

総文字数

369文字

336文字

387文字

文数

10文

13文

5文

段落数

4段落

7段落

1段落

平均文長

37文字

26文字

77文字

平均句読点間隔

17文字

15文字

14文字

文字使用率 漢字

23%

27%

25%

文字使用率 カタカナ

0%

0%

0%

 

 

角田さんの訳の数値は、ちょうど与謝野晶子と谷崎潤一郎の中間くらいの結果になりました。

与謝野晶子は現代的、谷崎潤一郎は古典的な特徴があります。 

角田さんの訳も与謝野晶子と同じように敬語を使っていません。その文、すんなりと読めます。

谷崎は、わざと古文に寄せているので、敬語も使っているし、一文が長いですね。それが持ち味です。

どれが読みやすいかは個人の好みがありますが、高校生に勧めるなら、角田光代訳です。

みなさんも角田光代訳で源氏物語の読了に挑戦してみませんか?

人生の最後の日までには読み終えたい小説ナンバー1「失われた時を求めて」マルセル・プルースト 読了に挑戦しよう

プルーストの「失われた時を求めて」の読書がはかどらないので、集英社から出ている抄訳版で読んでみようと思いつきました。

改めてこの長編小説の読書に挑戦しています。

 

まずは、有名なマドレーヌの場面に行きついたので、じっくり読んでみました。

 

集英社文庫 抄訳版 マルセル・プルースト 失われた時を求めて  鈴木道彦・編訳

 

第一篇 スワン家の方へ 

集英社文庫 抄訳版  p72~p81まで

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「プチット・マドレーヌ」

 

有名なマドレーヌの記憶の場面です。

 

概略です。

・夜中に目覚め、コンブレーを思う

私の家の一部、舞台装置のよう

他の記憶は死んでいたー私たちの死があるのでのんびり待っていられない

・ケルト人の信仰

死んだ物の魂は動物、植物、無生物のなかにとらえられている

木のそばを通りかかったり、封じ込めた物を手に入れるまで失われたまま

その日になると、魂は私たちを呼び求め、こちらがわかると魂は帰ってきていっしょに生きる

・私たちの過去も同様

過去は知性の届かないところで予想もしない品物のなかに潜む→(マドレーヌの話への布石)

・ある冬の日、帰宅した私に母が紅茶を勧める

私は無意識にお茶に浸したマドレーヌをひと切れ口にする

私の内部で異常なことがおこる

原因不明の快感、力強い喜び

紅茶のなかでなく、私のうちにある

精神に向き直る

イメージー思い出 何度もやり直す

・一気に思い出があらわれる

コンブレーで叔母がお茶に浸して出してくれた

マドレーヌの味ー匂いと味だけが魂のように残っていて、

気づくやいなや、叔母の家、両親の家、町があらわれた

 

哲学的で難解な考察が続くので、私の頭では、ちょっと読みにくかったです。

読書が苦手という人には読解が厳しいのではないでしょうか。

もう少しわかりやすいものはないかと考えて、他の翻訳と比べてみました。

次の2冊です。

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岩波文庫吉川一義訳

 

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光文社古典新釈文庫 高遠弘美訳

 

特に難解だった部分を引用して比較してみましょう。

 

集英社文庫抄訳版p78

 たしかにこんなふうに私の奥底で震えているのは、イメージであり、視覚的な思い出であるにちがいない。それがこの味に結びつき、その味のあとに従って、私のところまでやってこようとつとめているのだ。だがその思い出は、あまりに遠いところで、あまりにぼんやりとした姿でもがいている。かすかに認められるのは、その鈍い反映だけだが、そこには多くの色彩がかきまぜられ、とらえがたい渦をなして溶けこんでいる。けれども形態は見分けがつかないし、たった一人だけそれを通訳できる者に向かって頼むように、この反映に向かって、それと同時にあらわれた引き離すことのできない伴侶ーすなわちあの味ーの発する証言を翻訳してくれと頼むわけにもいかない。またどんな特別な状況のなかで、過去のどんな時期にこれが生まれたのかを、教えてくれと求めることもできないのである。

 

岩波文庫p114

このように私の奥底でかすかに震えているのは、たしかにイメージであり、視覚的な想い出にちがいない。それがあの風味と結びつき、その風味を追って私のところまでやって来ようとしているらしい。しかし想い出は、あまりにも遠いところで、あまりにも混沌とした状態でうごめいている。微かに見えてくるのは冴えない光で、そこにいろいろな色彩をかきまぜたような捉えがたい渦巻きが認められる。しかし私には、その形が判然としないうえ、それを通訳できるたったひとりの者たるその想い出に、同時代の切り離しえない伴侶である風味の証言を私に翻訳してくれるよう頼むこともできない。それがどんな特殊な状況の、どんな過去の時期のものなのか、私に教えてくれるよう頼むことができないのだ。

 

光文社古典新訳文庫 p119

私の奥底でこうして震えているのは、たしかに、あの味に自らを結びつけ、味のあとをたどって私のところまで来ようとしているイメージであり、視覚的な記憶ではあるだろう。だが、それはあまりに遠いところで、およそ漠然とした形でもがいているばかりで、私の目には、さまざまな色がかき混ぜられて、はきとわからぬ渦巻となって溶け込んでいるくすんだ反映がかろうじて見える程度にすぎない。しかも私には形さえ判別できないそうした反映に向かって、ただひとりしかいない通訳として、同じ時間を生きている分かちがたい伴侶であるあの味から発せられる証言を私のために翻訳してくれと頼むことも、また、あれはいったい、過去のどんな個別的状況や時代に関わっているか教えてくれるように頼むこともできないのだ。

 

読みやすさを客観的に分析するために、「一太郎」のツール「文章校正-読みやすさ」を使ってみました。

 

集英社

岩波

光文社

総文字数

361文字

321文字

331文字

文数

6文

6

3

段落数

1段落

1段落

1段落

平均文長

60文字

54文字

110文字

平均句読点間隔

17文字

18文字

18文字

文字使用率 漢字

19

23

22

文字使用率 カタカナ

1

1

1

 

 

総文字数は集英社が一番多く、岩波が一番少ない。

文数は、集英社、岩波の6文に対して、光文社の3文が目を引きます。そのため平均文長は光文社が110文字で最長、岩波の54文字の倍です。

漢字の使用率は、大差なしです。

 

この結果からみると、文長が長い光文社が読みにくそうに思うかもしれません。しかし、私個人の実感では、光文社が一番読みやすかったです。次いで岩波。集英社はかなり読みにくかったです。

 

もし、「失われた時を求めて」を読んでみたいという高校生がいたなら、私は光文社の高遠弘美訳を勧めます。

 

みなさんはどの訳で全巻読破に挑戦しますか?

第2日程の方が簡単だった!?大学入学共通テスト国語 第2日程 第1問 評論を国語教師が解いてみた

共通テスト 第2日程 国語 第1問 評論「『もの』の詩学」多木浩二

 

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高校教師が解いてみました。

各段落の要旨です。

 

1椅子の「座」と「背」の二つの問題

 椅子の面に接触ー体重による圧迫、血行阻害

 上体を支える筋肉の緊張ー苦痛

 椅子は身体に生理的苦痛

 

2一七世紀ー椅子の背の後傾ー筋肉の緊張の緩和のため

  リクライニング・チェア、車椅子の発明

 

3一七世紀ースペイン王フェリーペ二世の車椅子ー後脚を斜め後ろに、キルティングで覆った背は傾き調整でき、横臥に近い姿勢

 

4椅子からの圧迫を和らげる努力ークッション

 ステータスを表示する室内装飾の一つー政治的特権、階層性と結びつく

 

5椅子とクッションの結びつけの技術ー一七世紀に発達

 硬かった椅子のイメージを軟らかくしたー椅子の概念の変化=近代化ー身体への配慮から

 

6椅子を成立させた思考、技術ー限られた身分の人間の身体への配慮で形成された

社会的な関係、身分に結びつく政治学をもつ

身体という概念ー文化の産物、文化的価値

 

7着物をまとった身体ー椅子の形態に影響

 衣装ー宮廷社会という政治的な記号

 

8ブルジョワジーー宮廷社会の文化を吸収する

 支配階級の身体を引き継ぎ、働く身体に結びつけ、固有の身体技法を生み出すー身体は政治過程を含む

 

読解のポイントは、一七世紀、政治的な記号です。

論旨は単純でつかみやすいが、具体例が多いので細かい部分の読み取りが煩雑です。

 

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問1漢字

 

(ア)イダかせ 「抱く」なので2「抱負」が正解

(イ)センイ 「繊維」1「維持」が正解

(ウ)コジ 「誇示」3「誇張」が正解

(エ)ミオトり 「見劣り」4「卑劣」が正解

(オ)ケイフ 「系譜」2「譜面」が正解

 

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問2「もうひとつの生理的配慮も、背の後傾とどちらが早いともいえない時期に生じている」どういうことか。

 

傍線部「もうひとつの生理的配慮」とは座面の圧迫のこと。「どちらが早いともいえない時期」とは一七世紀を指します

根拠は2段落「一七世紀の椅子の背が後ろに傾きはじめたのは」、4段落「椅子から受ける圧迫を和らげる努力は古くから行われてきた」「古代からクッションが使われてきた」、5段落「椅子とクッションが一六世紀から一七世紀にかけてひとつになりはじめた」

散らばっているので、見落とさないように注意。

2が正解。4が紛らわしいが、「エジプトやギリシャにおいて~」は古代からあるので×

1は車椅子のことだけをいっているので×

3は椅子の背のクッションのみなので×

5は「それ自体が可動式の家具のようにさえなったクッション」が×

 

これは間違いやすい問題なので、注意です。

 

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問3「実際に椅子に掛けるのは『裸の身体』ではなく『着物をまとった身体』なのである」どういうことか。

 

根拠は、7段落「衣装は一面では仮面と同じく社会的な記号としてパフォーマンスの一部である」「文化としての『身体』は、さまざまな意味において単純な自然的肉体ではないのである」「衣装も本質的には宮廷社会という構図のなかに形成されるし、宮廷社会への帰属という、政治的な記号なのである」

1は「身体に配慮する政治学の普遍性」が×

2は文化的な記号としての側面もあったとあるので、これが正解

3は「解剖学的な記号として」が×

4は「仮面のように覆い隠そうとする政治的な記号」が×

5は「生理的な快適さを手放してでも、社会的な記号としての華美な椅子が重視」が×

 

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問4「『身体』のしくみはそれ自体、すでにひとつの、しかし複雑な政治過程を含んでいるのである」どういうことか。

 

根拠はこれまでの主張に8段落のブルジョアジーについての言及を踏まえて考える。

ブルジョアジーは「宮廷社会がうみだし、使用していた『もの』の文化を吸収するのである」、支配階級の所作のうちに形成された『身体』を引き継いで、はたらく『身体』に結びつけ、充分に貴族的な色彩を持つブルジョワジー固有の『身体技法』をうみだしていた」

 

1は「実用的な機能ではなく、貴族的な装飾や快楽を求めるようになった」が×

2は「宮廷社会への帰属の印として」が×

3は「宮廷文化を解消していくという側面」が×

4は「働く『身体』には『もの』の機能を追求し、それに応じて『もの』の形態を多様化させる潜在的な力があるということ」が×

5は「社会的要素がからみ合い、新旧の文化が積み重なっている」が根拠の内容と合っているのでこれが正解。

 

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問5 文章の構成と内容に関する説明

 

選択肢を順に吟味します。

1は「本文での議論が最終的に生理学的問題として解決できるという見通しを示し」が×

2は「6段落以降でもこの変化が社会にもたらした意義についての議論を継続」が×

3は「社会的あるいは政治的な記号という側面に目を向ける必要性」が論旨に合っているのでこれが正解。

4は「5段落までの『もの』の議論と6段落からの『身体』の議論の接続を行っている」が×

 

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問6 六人の生徒が、具体的な例にあてはめた意見を発表し、本文の趣旨に合致しないものを二つ選ぶ。

 

1は「それぞれの環境に抵抗して心地よく暮らしていくための工夫がいろいろ試みられ」が×なので、これが合致しないもの。

2は「一体感を生み出す記号としての役割も」は○

3は「その扱い方には様々な『身体』的決まり事があって、それは文化によって規定されている」は○

4は「西洋の貴族やブルジョアジーの『身体』にまつわる文化的な価値を日本が取り入れようとしたこと」は○

5は「スマートフォンの登場によって」「新しい『もの』がそれを用いる世代の感覚やふるまいを変え、さらには社会の仕組みも刷新していく」が×。これが合致しないもの。

6は「帽子には日射しを避けるという機能とは別の『身体』のふるまいに関わる記号としての側面もあるのではないでしょうか」が○

 

選択肢の分量があるので、限られた時間内であら探しをするのが大変です。内容は簡単でした。

 

まとめ

 

出典は多木浩二「『もの』の詩学」です。

抽象度はさほど高くないですが、論理の展開に感心する内容でもなく、文章はやや読み取りにくかったです。

 

選択肢の細かいあら探しをするという解法は、従来のセンター試験と同じものです。

問6の話し合いの導入も目新しいものではありません。

共通テストに変わって、ここが新しいといえるものが見当たらない、残念な印象を受けました。

 

次は多少変えてくるでしょうが、この路線のままなら、対策はセンター試験の過去問をやることが効果的だと思います。

高校教師が解いてみた 大学入学共通テスト国語 第2日程 第2問 小説「サキの忘れ物」津村記久子

共通テスト第2日程 国語 第2問小説「サキの忘れ物」

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本文の読解

 

登場人物は主人公「千春」と常連客の「女の人」が中心で、ほんの少しだけ店長とアルバイトの菊田さんが終盤に登場する。

千春と女の人の会話も、複雑な内容ではなく、量も少ないのでつかみやすい。

ただし、千春が心の中でつぶやく内容を会話と勘違いしないように注意。

 

本文は一読ですっと頭に入って来る。

いくつかの場面に分けてみる

 

1~19行

・本を店に忘れた女の人が問い合わせる。

千春が本を渡す。

注文を聞く

20~44行

・千春が話しかける。

女の人との対話

45~60行

・「サキ」の本を買いに行く。

64~終わり

・翌日、女の人がブンタンをくれる。

昨日の、本を読んでみての気づき

ブンタンを持ち帰り、部屋に置く。

 

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問1 語句の意味

(ア)居心地の悪さを感じた

 千春が黙り込んでしまい、女の人は、「もしかしたら~ごめんなさいね」と頭を下げる。1所在ない感じは「手持ちぶさた、特に何もすることが無い」の意味なので×。正解は4.

 

(イ)危惧した

 直前「正直、それだけの情報では、なんとかサキだとか、サキなんとかいう人の本を出されるのではないか」と心配するので、4が正解。

 

(ウ)むしのいい

 自身にとって都合のいいというのが辞書的な意味。本を読むと、「高校をやめたことの埋め合わせが少しでもできるなんて」とあるので、1が正解。

 

いずれも簡単ですね。

 

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問2「何も言い返せないでいる」千春の状況や心情の説明

 

38行に「千春は自分が少しびっくりするのを感じた」とある、これが根拠です。「意表をつかれて」と言い換えている2が正解。

1は「彼女の境遇を察し、言葉を失ってしまった」が×

3は「何か話さなくてはならないと焦ってしまった」が×

4は「その皮肉に言葉が出なくなった」が×

5は「話題をうまくやり過ごす返答の仕方が見つからなかった」が×

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問3「とにかく、この軽い小さい本のことだけでも、自分でわかるようになりたいと思った」千春の心情の説明

 

58行目「おもしろいかつまらないかをなんとか自分でわかるようになりたいと思った」

59行目「何にもおもしろいと思えなくて高校をやめたことの埋め合わせ」が根拠です。

5の選択肢が二つの根拠を満たします。ただ、「何かが変わるというかすかな期待をもって」の部分は、本文に根拠がありません。46行目「サキの本のことがどうしても気になって」本をわざわざ買いに行くという行動を取っていることから、本を読むことに「かすかな期待」があったと考えられます。常識的に考えて、あり得ることだと判断できます。したがって5が正解。

 

1は「すぐに見つかるほど有名だとわかり」が×

2は「その本をきっかけにして女の人とさらに親しくなりたいと思った」が×

3は「苦労しながらはじめて購入した本」「内容をそれなりに理解できるようになりたいと思った」が×

4は「女の人から教えてもらいたかったのに」「そのおもしろさだけでもわかりたいと思った」が×

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4「本は、千春が予想していたようなおもしろさやつまらなさを感じさせるものではない、ということを千春は発見した」千春は読書についてどのように思ったか説明

 

76行目「牛専門の画家というのがそもそもいるのか~ありえないと思ったが、千春は、自分の家の庭に牛がいて~ちょっと愉快な気持ちになった」

79行目「ただ、様子を想像していたいと思い、続けて読んでいたいと思った」

これが根拠です。

 

5の選択肢が根拠と合致します。「いかにも突飛なもの」「それを自分のこととして空想」「自ら想像をふくらませてそれと関わること」の箇所が合致するので、これが正解。

1は「画家の姿勢には勇気づけられた」が×

2は「苦労して読み通すその過程によって生み出される」が×

3は「事実を知ることができた」「世の中にはまだ知らないことが多いと気づくことにある」が×

4は「おもしろいとは思わなかった」「それを読むに至る経緯や状況によって左右される」が×

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5「すっとする、よい香りがした」ブンタンの描写と千春の気持ちや行動との関係の説明

 

82行目「ブンタンをもらったその日も、家に帰ってからどれか読めそうな話を読むつもりだった」

85行目「お茶を淹れて本を読みたいという気持ち」

この二つが千春の心情の根拠です。

5はブンタンが千春と女の人の姿を結びつけ、その香りが「本を読む楽しさを発見した清新な喜び」につながると解釈しています。無理のない常識の範囲内なので、これが正解。

1はブンタンは「千春が一人前の社会人として認められたこと」を示すというのが×

2はブンタンは女の人への「千春の憧れの強さを表している」が×

3はブンタンを「本を読むときに自分のそばに置きたいと思った」が×「自分にしか関心のなかった千春がその場しのぎの態度を改めて周囲との関係を作っていこう」も×

4は「交流のなかった喫茶店のスタッフに」が×

 

ブンタンの香りは「すっとする」「良い香り」なので、前向きなもの、明るいもの、良いものを連想します。それを踏まえて、根拠は少ないですが、ある程度、常識的に推測して答えましょう。

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6「女の人」について、(1)どのように描かれているか、(2)千春にとってどういう存在として描かれているか、グループで話し合います。

お約束の問題形式ですね。

1)「うれしそうに笑っている」「笑顔で応じている」「自分の事情をざっくばらんに話して」

   「職場で配るために持って帰るのも重いとわざわざ付け加え」「もしよろしければ」

これらから、気さくかつ気遣いが認められるので、2が正解

 1は「自分の心の内は包み隠す」が×

 3は「内心がすぐ顔に出てしまう」が×

 4は「どこかに緊張感を漂わせている」が×

 5は「自分の思いもさらけ出す」が×

 

2)「女の人の言葉をなんだか変な表現~千春の心に変化」「文庫本もきっかけ」「女の人から~千春の心は揺り動かされている」「わかるようになりたい」

  これらを踏まえて選択肢を見ると、

 「他の人や物事に自ら働きかけることのなかったこれまでの自分」という4が正解

 1は「目をそらしてきた悩みに」が×

 2は「後悔するばかりだった」が×

 3は仕事に意義や楽しさを積極的に見出して」が×

 5は「自分に欠けていた他人への配慮」が× 

 やや話し合いの中の根拠が希薄ですが、これも常識的に推測して考えましょう。

 

まとめ

 

高校を中退して喫茶店で働く女性の心情の変化がテーマなので、受験生にとっては感情が推測しやすい、わかりやすい題材だったでしょう。

設問は、本文中の根拠の部分が、傍線部の直近にあるケースがほとんどで、簡単でした。もう少し全体から考えさせてもいいのではないかと思いました。

 

主人公の微細な心の動きをくみ取る力が求められています。

本文は良い小説だと思います。しかし、設問内容は繊細すぎませんか?

 

1日程の小説問題「羽織と時計」と比較すると、こちらの「サキの忘れ物」が易しいです。

従来のセンター試験では、追試験の方が難しいというのが定評でした。私自身もセンター試験の過去問を解いてみて、追試験の方が難しいと感じてきました。

推測ですが、第二日程ありと公表されたのが、昨年(2020年)6月です。その頃からあわてて作問したのであれば、難易度に差が出たことも理解はできます。

いや、もっと前から準備していた問題だというのであれば、休校で勉強の遅れが出た受験生や、コロナで第1日程が受けられなかった受験生に易しめの問題を充てるという配慮(?)なのかなと勘ぐってしまいます。

 

参考に

こんなサイト記事を見つけました。

好書好日インタビュー津村記久子さん「サキの忘れ物」インタビュー 選ばれるより、自ら選ぶ人生 2020.7.21

https://book.asahi.com/article/13553134 

 

 

「運命の出会い」がなくたって、「選ばれた存在」でなくたっていい――。作家、津村記久子さん(42)の新刊『サキの忘れ物』(新潮社)は、読めばそんな励ましが聞こえてきそうな短編集。

表題作は、誰かに選ばれるのではなく、自分の人生を自ら選ぼうと、小さな一歩を踏み出す女性を見つめた物語だ。

 

 

「自分の人生を自ら選ぼうと、小さな一歩を踏み出す女性」これを読んでいたら、設問もばっちり解けたでしょうね。一読をお勧めします。

この記事を見て作問したのでは、と思ってしまいました。

これはアウト!共通テスト国語 第3問古文「栄花物語」が早稲田大学の過去問と酷似していました

大学入学共通テスト 第3問 古文「栄花物語」を解いてみたら、なんと早稲田大学人間科学部で出題された問題(2012年度)と酷似していました。驚愕の内容を報告します。

 

共通テスト国語第3問はこちら

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早稲田大の問題がこちら

(旺文社 全国大学入試問題正解 国語 私立大編 2013年受験用)

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問題文の(中略)以降が共通テストの問題文と重なっています。赤の矢印を参照(早稲田の最後の二行は削除されている)

見づらいので、大きな画像を載せておきます

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しかも、設問部分が重なっている問題がありました。

早稲田大の問十五の傍線部分「よろしきほどは『今みづから』とばかり書かせたまふ」

(黄色の矢印)

 

これは
共通テストの問2「『今みづから』とばかり書かせたまふ」

とかぶっています。


完全にオリジナル問題をつくる場合、普通はこんなに問題の場面、設問部分まで一致することはありません。

あまたある古典の中から、しかも問いまで同じ箇所である確率は、仏教説話の「一眼の亀」レベルです。



これはアウトですね。

 

大学入試問題、しかもセンター試験廃止後の共通テストで、よく知られた大学の入試問題を使うなんて、ありえないことです。

 

早稲田を志望している受験生は過去問をさかのぼって勉強しているので、中にはこの早稲田の問題を解いた人もいたでしょう。

 

一度勉強した古文が出れば、はっきり言って楽勝です。

喜んだ人もいたでしょうね。


一方で、全国で五十万人もの受験生が受ける入試です。公平性の点から問題はないでしょうか。

私はおおありだと考えます。

 

問題作成委員の先生は、早稲田大のこの問題を見たうえで、共通テストの問題を作成していませんか?

それなら大問題になりますよ。

 

「下衆の勘繰り」はこれくらいにして、

大学入学共通テスト分科会委員の先生方には、今後、こういう疑念が生じない、良問の作成を要望します。

 

ただでさえ、今年の受験生は、国語と数学の記述問題の導入と中止、英語外部試験の導入と延期、コロナによる突然の休校、共通テストの試験日程の変更などで、大概迷惑を被ってきています。

 

これだけ大変な変更が重なった学年は、今までありませんでした。

 

みんな大変な思いをしてきたのです。

せめて共通テストぐらいは公平な問題にしてあげてほしかった。

残念でなりません。

大学入学共通テスト 国語 第2問 小説 「羽織と時計」加能作次郎を高校教師が解いてみた

大学入学共通テスト 国語第2問 小説 「羽織と時計」加能作次郎

 

問題へのリンクはこちら(毎日新聞)

https://mainichi.jp/exam/kyotsu-2021/q/?sub=NTL 

 

この小説が発表された1918年は大正7年。第1次世界大戦の終了年です(大戦の開始は1914年)。今から100年前に書かれた小説です。

なんともマイナーな出典ですね。この作者のことは、初めて知りました。

 

さて、小説問題のねらいは、登場人物の心情とその変化を読み解くことです。

心情は直接書かれていることは少なく、行動やセリフで推し量る必要があります。

 

では問題を解いていきましょう

 

小説問題を解くときは、特に前書きが重要です。

時代背景や登場人物の説明、あらすじなどが書かれているためです。

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私の同僚のW君は、妻子、従妹と同居し、生活は苦しい。病気で休職したとき、私が同僚から見舞金を集め贈ったことがある。

 

本文はそれに続く場面とあるので、W君が休職から復帰した時から始まります。

本文を内容からいくつかの場面に分けて、それぞれタイトルをつけておきます。

 

初め~12行目 羽織を作ることになったいきさつ

13行目~28行目 羽織を誉める妻の反応

29行目~44行目 退社の記念品の時計

46行目~73行目 W君を見舞いに行けない心情(W君の妻君を恐れる)

74行目~終わり 妻をW君のパン屋に買いに行かせる

 

この小説は「私」の自意識が中心に描かれています。

W君から受けた恩恵を自意識が邪魔して見舞いに行けないのです。

私の独りよがりの妄想でW君の見舞いができず、それにこだわり続ける心情が描かれています。

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問1 語句の意味を問う問題です。

辞書的な意味を知っていれば簡単ですが、知らない場合は文脈(話の流れ)で考えましょう。

ア 術もなかった 「術」は手段、方法のことなので、「手立てもなかった」が正解です。文脈を見ると、「W君は独りで首肯いて」とあるので、私が辞退できない早い展開で話を決めてしまったことがわかります。

 

イ 言いはぐれて 「つい」とあるので、なんとなく、「今だに妻に打ち明けてない」のです。タイミングを失してということです。

 

ウ 足が遠くなった 「自然と遠ざかって了った」「一層」とあるので、W君の見舞いに行くことを指していることがわかります。

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問2「擽られるような思」とはどのような気持ちか。

 

「今でもそれが私の持物の中で最も貴重なものの一つ」「ほんとにいい羽織ですこと、あなたのような貧乏人が、こんな羽織をもって居なさるのが不思議な位」「妻が私が結婚の折に特に拵えたものと信じて居るのだ」「よくそれでも羽織だけ飛び離れていいものをお拵えになりましたわね」

このように妻から羽織を誉められながらも、W君からもらったと言いそびれているので、うれしい反面、後ろめたい気持ちでいるということがわかります。正解は、3

1は「笑い出したいような」が×

2は「不安になっている」が×

4は「羽織だけほめることを物足りなく思う」が×

5は「自分を侮っている妻への不満」が×

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問3 「何だかやましいような気恥ずかしいような、訳のわからぬ一種の重苦しい感情」とはどういうことか。

 

W君を非難、邪推する社内の声に対し、私は「非常に不快を感じた」「W君に対して気の毒でならなかった」「W君の厚い情誼を思いやると、私は涙ぐましいほど感謝の念に打たれるのであった」

「それと同時に」「常に或る重い圧迫を感ぜざるを得なかった」「私の身についたものの中で最も高価なものが、二つともW君から贈られたものだ」

「感謝の念と共に」→「やましいような気恥ずかしいような」「一種の重苦しい感情」を起こすとあるので、「感謝」しつつ「重い圧迫」を感じていることがわかります。正解は1

 

2は「実はさしたる必要を感じていなかった」「評判を落としたことを、申し訳なくももったいなくも感じている」が×

3は「高価な品々をやすやすと手に入れてしまった」が×

4は「情けなく感じており、W君の厚意にも自分へ向けられた哀れみを感じ取っている」が×

5は「見返りを期待する底意も察知」が×

 

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問4 「私はW君よりも、彼の妻君の目を恐れた」とあるが「妻君の目」を気にするのはなぜか。

 

「病気が再発して、遂に社を辞し」「自分は寝たきりで」「交友の範囲もおのずから違って行き、仕事も忙しかったので、一度見舞旁々訪わねばならぬと思いながら、自然と遠ざかって了った」

『〇〇さんて方は随分薄情な方ね、あれきり一度も来なさらない。こうして貴郎が病気で寝て居らっしゃるのを知らないなんでしょうか、見舞に一度も来て下さらない』「私を責めて居そうである」

この二点から、正解は1

2は「転職後にさほど家計も潤わずW君を経済的に助けられないことを考えると」が×

3は「妻君に偽善的な態度を指摘されるのではないかという怖さ」が×

4は「妻君の前では卑屈にへりくだらねばならないことを疎ましくも感じている」が×

5は「自分だけが幸せになっているのにW君を訪れなかったことを反省すればするほど」が×

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問5 「私は少し遠廻りして、W君の家の前を通り、原っぱで子供に食べさせるのだからと妻に命じて、態と其の店に餡パンを買わせた」とある「私」の行動の説明として適当なものを選ぶ。

 

「私は何か偶然の機会で妻君なり従妹なりと、途中ででも遇わんことを願った」

「実はその折陰ながら家の様子を窺い、うまく行けば、全く偶然の様に、妻君なり従妹なりに遇おうという微かな期待をもって居た為であった」

この二点から正解は5

1は「かつてのような質素な生活を演出しようと作為的な振る舞いに及んでいる」が×

2は「逆にその悩みを悟られまいとして妻にまで虚勢を張るためになっている」が×

3は家族を犠牲にしてまで自分を厚遇してくれたW君に酬いるためのふさわしい方法がわからず」が×

4は「W君の家族との間柄がこじれてしまったことが気がかりでならず」が×

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問6 「資料」 発表当時の新聞に掲載された批評(宮島新三郎)を踏まえて問いに答えます。

 

)「羽織と時計とに執し過ぎたことは、この作品をユーモラスなものにする助けとはなったが、作品の効果を増す力にはなって居ない」

直前の長い一文に注目。「若し此作品から小話臭味を取去ったら、即ち羽織と時計とに作者が関心し過ぎなかったら、そして飽くまでも『私』の見たW君の生活、W君の病気、それに伴う陰鬱な、悲惨な境遇を如実に描いたなら、一層感銘の深い作品になったろうと思われる」とあります。

5では「羽織と時計とに執し過ぎたことは」=「挿話の巧みなまとまりにこだわったため」、「作品の効果を増す力にはなって居ない」=「W君の生活や境遇の描き方が断片的なものになっている」と言い換えられています。これが正解

1は「W君の描き方に予期せぬぶれが生じている」が×

2は「実際の出来事を忠実に再現しようと意識しすぎた」が×

3は「W君の一面だけを取り上げ美化している」が×

 

)「羽織と時計-」の繰り返しに注目し、評者とは異なる見解を提示した内容として最も適当なものを選ぶ。

 

評者は、「見た儘、有りの儘を克明に描写する」点に作者の「大きな強みがある」と考えています。いわば「自然主義」の「私小説」的な特徴を評価しています。

私小説とは、「人生の暗黒、醜悪な面のことさらな強調」という特徴があります。

評者はこの視点から批評しています。これとは異なる見解を提示した選択肢を考えるには、消去法で見て行きましょう。

1は「かつてのようにはW君を信頼できなくなっていく『私』の動揺」が×

2は「複雑な人間関係に耐えられず生活の破綻を招いてしまったW君のつたなさ」が×

3は「好意をもって接していた『私』に必死で応えようとするW君の思いの純粋さを想起させること」が×

4は「W君の厚意が皮肉にも自分をかえって遠ざけることになった」、「『私』が切ない心中を吐露している」がどちらも読み取れる内容なのでこれが正解。

 

感想

・資料として当時の文芸批評を引用している点が目新しい。複数資料を読解するという条件には適っている。

・100年前の小説で、題材も地味なもので、読み手(受験生)にはおもしろい小説ではなかったのではないか。(感情移入しにくい内容)

・しかし、考えようでは、

「私」の考えの基準は、自分が他人からどう見られるか(思われるか)が重要となっている。そういった他人の思惑を無視して、友人W君を見舞に行けば喜んだだろうに、それを優先できないところが「私」の「自意識過剰」であり、現代人の心情に近いともいえる。

・「わかるわ、この気持ち」と思った人は、満点を取れるかもしれません。

 

大学入学共通テスト 国語 第1問評論「江戸の妖怪革命」を解いてみた 解き方と感想も書きました

2021年度 大学入学共通テスト 国語 第1問 評論

出典『江戸の妖怪革命』香川雅信

 

問題へのリンクです。(毎日新聞)

https://mainichi.jp/exam/kyotsu-2021/q/?sub=NTL

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第1問の段落の要旨をまとめました。

 

1フィクション、娯楽の対象としての妖怪が生まれた背景は

2フィクションの世界に属する存在としては近世中期から

3妖怪は日常的理解を超えた不可思議な現象に意味を与えるもの

日常的な因果了解で説明できない現象ー不安と恐怖を喚起

なんとか意味体系の中に回収するため生み出された文化的装置が妖怪

4リアリティを帯びた存在ーフィクションとしての妖怪は生まれない

5妖怪に対する認識の変容とその歴史的背景は

6フーコーの「アルケオロジー」を援用する

7知の枠組みの変容ー一つの枠組み(エピステーメー)を通して事物の秩序を見る

         |

    時代とともに変容する

8フーコーのエピステーメーの変貌ー物、言葉、記号、人間ー関係性による

9(10)アルケオロジーの方法で日本の妖怪観の変容を見る

11中世ー妖怪は凶兆ー神秘的存在からの警告(言葉)、一種の記号

12近世ー物そのものとしてあらわれる

     博物学的な思考、嗜好の対象に

13記号ー人間が作り出せるものに

神霊の支配から人間のコントロール下に

記号=表象

14表象ー名前、視覚的形象による弁別=キャラクター

リアリティの喪失、フィクショナルな存在、人間の娯楽の題材へ

15近代ーリアリティのなかに回帰する

16人間の絶対性に懐疑

人間ー容易に妖怪を見てしまう不安定な存在、コントロール不可能な内面を抱えた存在

妖怪ーフィクショナルな存在から人間の内部に棲みつく

17私という思想ー謎めいた内面を抱え込む

           |

         私は不気味なもの、未知なる可能性を秘めた神秘的な存在

  妖怪は私を投影した存在

18以上がアルケオロジー的方法による妖怪観の変容 

 

設問を解説します。

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問1 漢字問題

(ア)ミンゾクー民俗 「民族」ではないので注意。ただし他の選択肢に「族」を使う字はない

(イ)カンキー喚起 選択肢4「交換」の「換」と間違えないこと

(ウ)エンヨウー援用 この語を知らないとできないかも。学問するには必須の語。「先行の論文を援用する」

(エ)(オ)は簡単でしょう

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問2 傍線部Aの後に「そうした存在だった」と続く。傍線部の前の部分、3段落の内容で考える。

1 「理解を超えた不可思議な現象に意味を与え」、「日常世界のなかに導き入れる」=「意味の体系のなかに回収する」の言い換えなので、これが正解。

2 「フィクションの領域においてとらえなおす」が× 

3「目の前の出来事から予測される未来への不安」が×

4「リアリティを改めて人間に気づかせる」が×

5「危機を人間の心に生み出す」が× 紛らわしいが、危機を生み出す現象を妖怪とした

 

・3段落の読み取りができていれば、簡単です。

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問3 フーコーのアルケオロジーを援用するので、その説明をしている部分です。ある意味「複数資料」的な設問です。

関連する7、8、9段落のうち、7段を吟味しましょう。

1「考古学の方法に倣い」が×

2 7段落「事物のあいだに何らかの関係性をうち立てるある一つの枠組みを通して、はじめて事物の秩序を認識することができる」とある。この部分のまとめが選択肢の前半。「この枠組みがエピステーメーであり、しかもこれは時代とともに変容する」のまとめが選択肢後半。したがってこれが正解。

3 「要素ごとに分類して整理し直す」が×

4 「同じ認識の平面上でとらえる」が×

5 「大きな世界史的変動として描き出す」が×

・選択肢は言い換えではなく、まとめになっているので簡単です。

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問4 妖怪の「表象」化について、12、13、14段落を読みましょう。

神霊から人間のつくるものへー「記号」から「表象」へー「物」そのものとしてあらわれるーキャラクター化―架空の存在、娯楽に 

この流れをつかむ。

1「人間が人間を戒めるための道具になった」が×

2「神霊の働きを告げる記号」から「人間が約束事のなかで作り出す記号」になり=13段落、「架空の存在として楽しむ対象」=フィクショナルな存在として人間の娯楽の題材へ とあるので、これが正解

3 「人間世界に実在するかのように」が× 「リアリティを喪失」とある

4 「あらゆる局面や物に及ぶきっかけ」が× 「帰結である」とある

5 「人間の性質を戯画的に形象した娯楽の題材」が× 本文になし。

・段落要旨をしっかりつかんでいれば難しくない。

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問5 これは新傾向の設問です。「ノートを作る」というアイデアは予想問題集などにもない形でしょう。作問の工夫がうかがえます。

)()は段落要旨を参考にして解きましょう。

同じ内容の選択肢は印をつけておく。2段落「歴史性を帯びたもの」、5段落「認識がどのように変容したのか。そしてそれは、いかなる歴史的背景から生じたのか」とあるので、4が正解。

・文章構成を考えさせる問い。段落要旨をつかんでいれば簡単です。

 近世は12、13、14段落を見る。14段落「視覚的形象によって弁別される」「キャラクターであった」とあるので3が正解。1「恐怖を感じさせる」が×。2「神霊からの言葉を伝える記号」が×。4「人を化かす」が×

  近代は15、16、17段落を見る。16段落「内面というコントロール不可能な部分を抱えた存在」とあるので、正解は4。1「合理的な思考をする」が×。2「自立した」が×。3「万物の霊長」が×

・これも選択肢が短く単純なので簡単です。 

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は小説「歯車」芥川龍之介の引用と考察です。複数の資料問題の新たなバリエーションです。

17段落の内容―「私」は私にとって「不気味なもの」、「未知なる可能性を秘めた神秘的な存在」

ノート3の内容―「仕合わせにも僕自身に見えたことはなかった」、「死はあるいは僕よりも第二の僕に来るのかもしれなかった」、「ドッベルゲンガーを見たものは死ぬ」

1「別の僕の行動によって自分が周囲から承認されているのだ」が×

2「ひとまず安心」、「もう一人の自分に死が訪れるのではないか」、「自分自身を統御できない不安定な存在であること」いずれも○。したがってこれが正解。

3「会いたいと思っていた人の前に別の僕が姿を現していた」が×

4「自分が分身に乗っ取られるかもしれないという不安」が×

5「他人にうわさされることに困惑していた」が×

・段落と引用の要旨を踏まえて、選択肢のあら探しをする。簡単です。

 

 

第1問の感想

・複数資料と言われていたため、グラフや図表の多用を想定していた人は、肩すかしを食らったかもしれません。

 

・試行テストで不評だった「契約書」「生徒同士の話し合い」が出題されませんでした。その分、最近のセンター試験の傾向を延長したような印象を受けました。

 

・対策としては、段落要旨をまとめる練習をする、新書レベルで幅広く読書をするなどがおすすめです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再起動のトラブルを解決できました 原因はソフトでした Karabiner-Elementsを削除でOK  還暦からのMac mini

還暦でMacを初めて購入しました。Mac miniです。

 

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 ところが、システム終了のたびに、再起動が起こる現象が続きました。

原因がわからず、エラーメッセージが出るたび、間違ったことをやっている不安に駆られてしまいます。

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しばらく続くとストレスになってしまい、Macを使うことがつらくなり始めてしまいました。

 

サポートのホームページを見たり、同じような再起動のケースを調べたりするうちに、ソフトを削除するのが一番簡単だと思うようになりました。

 

思い当たるソフトは、キーボードの配列をMac用に変換するソフト、Karabiner-Elementsです。

 

私は手持ちのキーボードを使い回しするためにこのソフトを入れました。

 

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思い切って削除すると、システム終了後に再起動が起こらなくなりました。

エラーメッセージも出なくなり、モヤモヤした心が一気に晴れました。

Macを使うのが楽しくなってきました。

がんがん文章を書いていきます。

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もし同じような症状に悩んでいる方は、参考にしてください。