bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

大学入試の評論文の勉強にお薦めです「鏡の中の現代社会」見田宗介 定本 見田宗介著作集Ⅱ 岩波書店

 

国語教師として、ふだんから大学入試の国語の勉強や、論理的な思考力を身につけるために役立つ文章を探しています。

 

今回紹介するのは、見田宗介の『鏡の中の現代社会』です。

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出典は、「定本 見田宗介著作集Ⅱ 現代社会の比較社会学」岩波書店からです。

https://amzn.to/2penjfO

 

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社会学者としてさまざまな国を旅してきた著者は、自分の生きている社会を見る時に、離れた世界に立ってみて、「自明性の罠」から解放されることが必要だといいます。

 

インドやメキシコ、ブラジルなどの先進国ではない国々では、私たち日本人の「あたりまえ」が通用しないことがたくさんあるそうです。

 

時間に対する感覚であったり、人間関係に関する態度であったり、私たちが驚くようなことがそれらの国を旅すると体験するそうです。

 

いくつかのエピソードが紹介されていて、それらがとても魅力的な話です。

一つは、メキシコに住む山本満喜子さんというタンゴダンサー。小説や映画になりそうな話で、この一節だけでも読む価値あり。

 

二つめは、メキシコのインディオの「死者の日」の紹介。墓場で踊ったり、ごちそうを食べたりする風習は、日本人からすると眉をひそめそうなものですが、その意味が驚きです。(沖縄にも似たような風習があったような、シーミーでしたか?)

 

ゆかりのある死者を招いてごちそうする日で、誰からも招かれない死者のために、一人分余分にごちそうを用意するというものです。

いわば「ボッチ」の死者のために、寂しい思いをさせないために余分を作っておくやさしい心がメキシコのインディオにはある。

著者は、当然これは、生者の社会の反映だというのです。

 

一方、私たち日本社会のような現代社会は、アメリカのフランクリンが言う「タイム イズ マネー」時は金なりの精神が根本にあると言います。

 

時間を貨幣と同じように「使う」感覚で考える。時間を「生きる」メキシコなどの社会とは大きく異なってしまっている。

まさに「分刻み」の生活です。

 

そういえば、先日の台風15号の通過後、東京では電車の運行再開を待つサラリーマンの長い行列が報道されていました。

台風の余波が残っていても、職場に向かおうとする人々の姿は、私にも異常に感じられました。

台風の時ぐらい、危ないので仕事を休めば、と思ったのは、沖縄や西日本では通常の感覚だと思うのですが。

 

話を戻すと、著者は、今後の社会のあり方について、両方の社会を見ながら考えていくべきと主張しています。

 

当たり前ですが、メキシコやインドのような国のまねはできないし、日本社会の問題点を改革しないで突き進むものよくない。

 

両者を見ることで、社会の可能性を想像しましょうと述べています。

 

高校3年生の現代文の教科書に、この「鏡の中の現代社会」が載っていて、授業で取り上げると、いつもより生徒の食いつき(反応)がよかった印象がありました。

 

特にメキシコの「死者の日」には興味を持ったようです。

高校生たちも、厳しい競争社会、「ボッチ」に冷たい社会というものを感じ取っているのかもしれません。

 

ただし、教科書に載っている文章は、おもしろいエピソードがカットされてまとめられた文章なので、原典とくらべるとスカスカにされています。

ぜひオリジナルで読むことをお薦めします。

 

偏差値ランキングが通用しない 大荒れの2019年大学入試を考えた

 

偏差値ランキングが通用しない2019年大学入試


2月下旬、大学入試も前半が終わって、国公立大学の二次試験が始まります。
私学入試の合格発表から、今年の入試に異変が起こっていることがわかります。


それは、偏差値ランキングが通用しなくなっているということです。
ベネッセの模試で合否判定AやB判定が付いていても、落ちてくる。
偏差値が下の大学を抑えとして受けても不合格になり、逆に偏差値が上の大学が合格するというケースが発生しています。


関西地区の私大で言うと、神戸学院大に落ちて甲南大に受かる、追手門学院大に落ちて関西大に受かるといったケースです。
従来ならあり得なかった逆転現象が見られるのが今年の入試状況です。


一番とまどっているのは受験生です。受かるはずの併願校が落とされてしまう。抑えにならない、どこも受かってこないという厳しい現状があります。

 

ベネッセや河合塾の分析によると、2019年の大学入試は、前年に引き続き、文系人気が高く、理系は低調、いわゆる文高理低の傾向だと言われていました。


たしかにそうですが、理系の大学も偏差値ランキングが通用しないほど難化するという予想はどこもしていませんでした。


従来は成績が下位層の受け皿となっていた大学も難化し、全然受かってこないのです。

その原因は、各大学が合格者を絞り込んでいること。
もちろん、文部科学省の指導が原因です。昨年度の入試も合格者絞り込みの影響は大きかったのですが、今年はそれ以上です。
定員の1.05倍を超えると補助金カットという方針に各大学が過剰に反応した結果です。

 

兄や姉が受かった大学が同じ成績、いやそれ以上でも受からない。
先輩が去年受かったところを目指したがダメだった。受験生にとっては非常に厳しい状況です。

 

偏差値という物差しでは受験指導ができない、合否の予想すらできないのが現実です。
いまや新しい物差しは、合格者数の絞り率です。対前年比で何パーセントの合格者を出すのか。
これによって大学の難易度が簡単に入れ替わってしまうのです。

 

こういった現状にどう対応するか。

受験生のみなさんは、後期試験までチャレンジを続けましょう。

国公立の合否発表が終われば、上位の大学から合格手続きをしない辞退者がたくさん出てきます。場合によっては定員割れをおこし、追加合格を出す大学も出てきます。昨年も話題になりました。最後までチャンスはあるので、あきらめずに勉強を続けましょう。

 

また、受験生のみなさんは、合格した大学で勉強を一生懸命することが大事です。

偏差値が高いとか有名大学だからとかで満足するのではなく、入学してからの勉強がちゃんとできるかどうかでその大学を評価しましょう。

 

政治によって多くの受験生と親、教師が振り回される、この現状をなんとかしたいと思います。

数年後、もっと少子化が進んで受験生が減少した時、今年のような、えげつない合格者の絞り込みをした大学は受験生から敬遠される覚悟をしておくことです。

 

 

国公立大学二次試験 2018年東京大学 入試問題 国語第二問「太平記」を解いて考えた

 

東京大学の2018年入試で、不倫を題材にした古文が出題されていた。このご時世に、なぜ不倫問題なのか考えてみた。


国語第二問「太平記」

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解答例は河合塾解答速報より引用しました


高師直は、人妻になっている女に手紙を出す。わざわざ兼好法師に書かせたが、女に読んでもらえず、庭に捨てられてしまう。師直は「今日よりその兼好法師、これへ寄すべからず」と怒り、出入禁止にしてしまうのである。

そもそも隠遁者に恋文を発注する方が間違っていると思うのだが。恋や欲を捨てて世捨て人になっている兼好からすれば、権力者師直からの恋文代筆の命令はいい迷惑だったのかもしれない。

まあ作り話としても、太平記作者が兼好法師に批判的であることが見て取れる。


さて、薬師寺次郎左衛門公義という者が現れ、師直はこの男に相談する。
公義は和歌のみ書いて女に送る。女の反応を仲立ちから聞いて公義は、これは脈ありだと判断する。師直は喜び、公義に褒美を与える。


他愛もない話だといえばそれまで。
東大がなぜこんな不倫に関する題材を出題したのかについて考えてみる。


師直の時代に不倫という現代のような概念はなかっただろうから、不倫の善悪は問題ではない。

権力者が美しい女性を、たとえ人妻であっても、求めるのはよくある話だ。


ポイントは、公義が女の本心を読み解くところだ。くどくどと手紙を書いて送るのではなく、和歌を送り、その返事から出典の新古今の和歌を想起し、歌意を読み解く。公義は武士でありながら、歌道にも心得がある点を師直は大いに喜び、賞賛する。


このことから推測すると、この古典問題には、専門バカでなく、幅広い教養を持ち、人情の機微を理解し、臨機応変に対応できる、公義のような人材になれというメッセージが込められているのではないか。

権力者に忖度することだけが部下のあり方ではないだろう。


「太平記」は、岩波文庫で全六巻 兵藤裕己校注ででています。

 

2019年センター試験国語の第1問、評論の本文が、問題集ですでに使われているものだった やってた人は超ラッキー 出題者はもっとリサーチしてください #センター試験 #センター試験国語 

 

今年2019年のセンター試験国語の第1問、評論の本文が、問題集ですでに使われているものだった

 

センター試験の問題はここから。

https://nyushi.sankei.com/center/19/1/exam/3910.pdf

 

桐原書店「現代文アチーブ2三訂版」18番の問題
「翻訳をめぐる七つの非実践的な断章」沼野充義

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センターの本文の範囲は、問題集の本文に前後が加えられた形となっています。

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出版されていない文章の上に、さらに切り取るところが同じなんて、どんな確率ですか。


普通はこんなことはありません。


センター試験の問題作成者は、この問題集を見て作ったのではと疑います。

 

設問も「ヒンシュツ」すると「翻訳を回避する技術」の2箇所が同じ。


漢字の書き取りの「ヒンシュツ」が被っているなんて悪い冗談かと思いますよ。

 

この問題集で、この文章をやっていた人はラッキーでした。一度読んだ文章が出ると、楽勝です。

 

今年の国語は易しかったという評判で、平均点も16点上昇(1月25日の中間発表)したらしいです。

 

受験生にとっては、国語で点が取れたことはよかったと思いますが、出題の公平性に難ありだったことは残念でした。

 

来年でセンター試験は廃止されます。
大学入試共通テストでは、記述問題も出題されます。

 

大学入試センターは、今回のような既存の問題集などと被りがないよう、十分に準備して問題の作成をしてください。

 

大学入学共通テスト 2018年試行テスト 国語 記述問題を解いてみてわかったこと

 

センター試験が廃止され、共通テストが始まります。

2018年11月に全国で行われた試行テスト(プレテスト)の国語の記述問題を解いてみました。

問題はこちらにあります。

https://www.dnc.ac.jp/sp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h30_1110.html

 

結論を言うと、恐るるに足りず、ということです。

 

実際に問題を読んでみてください。それを前提に説明します。

 

問1は「傍線部A~とはどういうことか。三十字以内で書け」という説明問題。

傍線部A「指差しが魔法のような力を発揮する」

 

下書き

ことばの通じない国で指差しで相手に頼んだり尋ねたりするコミュニケーションが十分とれること

 

Aの直前、直後の文から抜き出しました。

これを三十字以内にします。

 

ことばの通じない国で指差しでコミュニケーションがとれること。

これで三十字です。

 

解答例はこうなっています。

 

例1 ことばを用いなくても意思が伝達できること。

例2 指さしによって相手に頼んだり尋ねたりできること。

例3 ことばを用いなくても相手に注意を向けさせることができること。

 

正答の条件は次の3つ

 

① 30字以内で書かれていること。

② ことばを用いない、または、指さしによるということが書かれていること。

③ コミュニケーションがとれる、または、相手に注意を向けさせるということが書かれていること。

 

自己採点してみると、①はクリア、②も「指差し」でOK、③「コミュニケーションがとれる」でOKでした。

 

下書きにあった「相手に頼んだり尋ねたりする」を使っていてもOKですね。

ただ、「ことばの通じない国で」という状況設定の部分は必要なかったみたいですね。

 

問1は傍線部の前後の部分だけで解答ができあがりました。難しくないでしょ。

参考に問題を解いた時の画像を乗せておきます。

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問題を読む時に注目する部分に線を引いたり、囲みをつけたりすることを心がけてください。

 

問2以降は次回に。

 

 

東京医科大学 不正入試について考えた その2

 

東京医科大学のホームページに掲載されている入試結果です。

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一般入学の、一般入試の項目で、第1次試験合格者が第2次試験にどれだけ合格したのか、その比率を計算してみました。

 

男子 303→141 合格者46.5%

 

女子 148→30  合格者20.3%

 

女子が極端に絞られているのがわかります。

ちなみに、1次は学力試験(理科、英語、数学)、2次は小論文、面接、適性検査。

 

 

次に、現浪別統計表です。

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受験者数と入学者数を比べて見ると、「誰でもわかるやん」と思わせる結果に唖然としました。

あきらかに女子と多浪生に厳しいことがわかります。

よく堂々と公表していますね。ある意味、感心します。

隠す(公表しない大学)よりましですか。

 

これはあかんでしょ。どんな理由をつけてもダメ。

 

将来の日本を支える人たちを翻弄しておいて、大学としてどう対処するのか。

また、文部科学省は東京医科大に対してどういう指導をするのか。注目していきます。

 

東京医科大学の不正入試問題を考えた

 

東京医科大学の不正入試問題が報道されて、いろいろ考えるところがありました。

次の図は、ベネッセが公表している入試結果から、成績の各層における合否数を抜き出して比較したものです。

全受験者の合否結果ではないので、そこはご注意ください。

 

私立大合否分布(一般入試 募集単位集計)      
ベネッセ 2018入試結果調査 私立大・短大・専修学校・各種学校  
偏差値は2017年度進研模試3年生7月記述と10月記述    
合格者数、不合格者数はこの調査で集計できた数    
             
  東京医大 東京女子医 大阪医大
偏差値 合格 不合格 合格 不合格 合格 不合格
80~85 7 6 2 1 26 8
75~79 24 45 10 3 53 32
70~74 38 120 21 34 20 92
65~69 22 173 18 78 9 90

 

比較対象として、東京女子医大、大阪医大を選んだ。

東京女子医大は女子学生のみということで、性別による偏りが一切発生しない。

大阪医大は、ベネッセの偏差値が東京医科大と同じ66である。

 

数値を見るポイントは、成績が上位すなわち偏差値が高い割に、不合格となるケースがどのくらいあるか、逆に、成績が下位の割に合格となったケースを調べてみた。

そこに学力成績以外の要素が入り込む余地がどの程度あるかを見るためである。ただし、あくまで可能性である。

 

まず目に付くのは、東京医科大の成績が最高位(偏差値80以上)の合否が7人対6人、ほぼ対等の割合であること。

東京女子医大は2人対1人、大阪医大は26人対8人である。

ちなみに東京大学理科Ⅲ類(医学部)は、35人対30人である。

東京医科大では偏差値80以上の成績でも、けっこう不合格になっていることが気になった。

 

次に、偏差値75~79の層の合否を見てみる。

東京医科大 24人対45人

東京女子医大 10人対3人 

大阪医大 53人対32人

この層では東京医科大は不合格が2倍、他校は合格者のほうが多い。

 

さらに気になる数値は、東京医科大の偏差値65~69の合格者数が22人。

東京女子医大18人対78人、大阪医大は9人対90人。

大阪医大と比べると、東京医科大はけっこうな合格数があることが気になった。

 

つまり、東京医科大は、成績上位者でも不合格となり、下位者でも合格する割合が一定数見られるということである。

 

これらの傾向は、医学部受験を指導する立場の人(予備校、塾、進学校の教師、情報産業の従事者)なら、気づくことではないか。

 

このデータは、男女比率がわからない数字なので、正確ではないことはお断りしておく。

 

本来、学力成績が上位にもかかわらず、女子であること、多浪生であることを理由に点数を操作され、不合格になった人が大勢いるというこの事実に、今まで誰も気づかなかったのだろうか。気づいていても、声を上げず黙認してきたのだろうか。

 

実際に東京医科大を受験し、不合格になった女子、多浪生の心中を思うと、何とも言えない気持ちになる。

 

医学部を目指すような優秀でこころざしの高い若者を愚弄する今回の問題をどう解決するのか。大学と国の責任が問われている。

 

2018年 センター試験 国語 評論を解いてみたら、難しくありませんでした

 

2018年 センター試験 国語 第1問 評論は難しくなかった その傾向を分析しました

 

評論の出典は 『デザインド・リアリティー集合的達成の心理学』有元典文・岡部大介

国語の問題は http://nyushi.nikkei.co.jp/center/18/1/exam/3910.pdf

 

本文の要旨をまとめました。 番号は各段落(形式段落)の番号です。

1 「後でテストする」
2 整理してノートを取る、用語を繰り返し唱えるー暗記に向けた聴き方へ
           |
    学習や教育の場のデザイン
3 講義ー語りの部分だけでも多様な捉え方が可能
        ↓
  世界は多義的でその意味と価値はたくさんの解釈に開かれている
4 「後でテストする」は授業の持つ多様性をしぼり込む→記憶すべき一連の知識として設定
5 デザインとはーある目的を持って意匠・考案・立案すること
         |
      意図的に形づくること、その構造  
         ↓
  ひとのふるまいと世界のあらわれについて
6 私たちーデザインという概念をどう捉えようとしているのか
7 デザインの語源は印を刻むことー自分たちが生きやすいように自然環境に印を刻み込み、自然を少しづつ文明に近づけた
       |
  今ある現実に「人間が手を加えること」
8 環境の改変ー人間の何よりの特徴
  デザインーまわりの世界を「人工物化」することーアーティフィシャル
9 今ある秩序を変化させるーことなる意味や価値を与える
  例ー本にページ番号をふる→任意の位置にアクセス可能
    ・一日の時の流れを二四分割すること
    ・地名をつけて地図を作り番地をふること
     ↓
 こうした工夫によって現実は人工物化され、これまでと異なった秩序として知覚されるようになる 
10 今とは異なるデザインー現実の別のバージョンを知覚
   あるモノ、コトに手を加え、新たに人工物化し直すこと=デザインすることで、世界の意味は違って見える  
例ー湯飲み茶碗に持ち手をつけると珈琲カップになる
      ↓
   モノから見て取れるモノの扱い方の可能性=アフォーダンスの変化 
11 モノは、たたずまいの中に、モノ自身の扱い方の情報を含んでいる
  鉛筆ー「つまむ」 バットー「にぎる」
12 モノの物理的形状の変化は、ひとのふるまいの変化につながる
13 ふるまいの変化はこころの変化につながる
   たくさんのカップー可搬性の変化ー知覚可能な現実そのものが変化
14 デザインー「対象に異なる秩序を与えること」
   物理的な変化、アフォーダンスの変化、ふるまいの変化、こころの変化、現実の変化
  例ーはき物をデザインー自然の摂理が創り上げた運命を簡単な工夫が乗り越えてしまう
15 私たちの住まう現実ー文化的意味と価値に満ちた世界
              |
    文化や人工物の利用可能性や文化的実践によって変化する自分たちの身の丈に合わせてあつらえたオーダーメイドな環境
人間が「デザインした現実」を知覚し、生きてきた
16 デザインによって変化した行為を「行為(こういダッシュ)」と呼ぶ
  例ー本の読みかけの箇所を探す時
    素朴な探し出し「記憶」→ページ番号に助けられた「記憶(きおくダッシュ)」活動
17 人間になまの現実はなく、すべて自分たちで作ったと考えれば、すべての人間の行為は人工物とセットになった「行為(こういダッシュ)」だといえる
18 人間ー環境を徹底的にデザインし続け「環境(かんきょうダッシュ)」を生きている
心理学への批判ー「記憶(きおくダッシュ)」を人間本来の「記憶」と定めた無自覚さ
19 人間の現実をデザインするという特質ー本質的、基本的な条件
        ↓
   人間性ー社会文化と不可分のセットで成り立つ
        ↓
   「原心理」は想定できず、文化歴史的条件と不可分の一体である「心理学」として再記述される(べき)
        |
   「文化心理学」ー人間を文化と深く入り交じった集合体の一部であると捉える

 

 *「記憶(きおくダッシュ)」以下の(~ダッシュ)は、「ダッシュ記号」が表示できなかったため、記入しています。

 

問題文の分析をしました。設問の分析は予備校や塾などのものを参考にしてください。

 

例としてあげられた項目が受験生にとって身近なものなので、内容が理解しやすい。
・授業内容のテスト
・本にページ番号をふる
・湯飲み茶碗に持ち手をつけると珈琲カップになる
・鉛筆、バット
・ビーチサンダル
・(自転車、電話、電子メール)
・台所ブーツ
・買い物の暗算、百マス計算、そろばん、表計算ソフト

8、15、16段落の要旨が重要。

「行為(こういダッシュ)」という考えを理解し、心理学が批判されている理由をつかむ   

長文なので、本文に目印を付けたり(線を引く)、メモをとったりすることが必要。ただし、時間がかかる

アフォーダンスという概念は初めて聞く者が多かったのでは。

引用の人名は「ヴィゴツキー」一人だけなので、知らない名前からくる不安も小さい。
(やたらとロラン・バルト、レヴィストロース、フーコーが云々と引用されても困ります)

新傾向の設問(問3)は容易、大学入学共通テストに向けての変化でしょう。
それから考えると、今後、求められる国語力、知力は、哲学的、抽象的な論理の世界を読み解く力ではなく、ある程度の量の情報の意味を理解する力といえるのではないでしょうか。

 

「デザインすることで、世界の意味は違って見える」という知は、受験生にとって、おもしろい(示唆的)ものだったでしょう。 

 

国公立大学の文系学部廃止の流れに対して、この評論は、広義で「文化」を重視し、文系を援護したものと読めるのですが。そうであるなら、出題者(大学入試センター)の良識?がうかがえる問題文であったといえます。

 

センター試験としてはあと2回で終わりなので、今後もぜひ良問を期待します。

 

高校国語教師が解いて考えた。大学入学共通テスト試行問題。記述編

 

センター試験に変わって行われる大学入学共通テストの試行問題が公表されました。
大学入試センターのホームページにあります。入手して解いてみました。

問題へのリンク

http://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011239.pdf&n=5-01_問題冊子_国語.pdf

解答へのリンク

http://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011249.pdf&n=01_国語.pdf

 

注目されるのが記述式の設問です。大問が5問あるうちの第1問が記述式となっています。その他は従来のセンター試験と同じマーク式(選択式)です。

第1問を解いてみました。
以前発表された記述式の例題が、賃貸駐車場の契約書という、なんとも高校生、受験生の興味、関心を無視した残念な内容でした。ブログにそれへの批判も書いておきました。

 

 

www.bluesoyaji.com

  2問目が駐車場の契約書問題です

 

今回は、そういった批判に考慮したのか、高校での部活動に関する生徒会での話し合いという内容です。
高校生に近寄せてきましたね。
近づけすぎで今後ネタに困るのではと心配になるほどです。
それはさておき、内容は、生徒会部活動規約を読ませ、資料1~3を踏まえて設問に答えるというものです。

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資料1は「部活動に関する生徒会への主な要望」という表です。読み取りは簡単。


資料2は「市内5校の部活動の終了時間」という表。これも簡単。


資料3は「青高生の主張」と題する高校新聞。円グラフと記事があり、読み取りに少し時間がかかります。

 

さて、問1 「当該年度に部を新設するために必要な、申請時の条件と手続き」を五十字以内で書け(趣意)。


これは規約から必要部分を抜き出し、指定字数内でまとめる。簡単です。
「同好会として三年以上の活動、四月第2週まで、所定の様式、生徒会部活動委員会」
これらの要素を盛り込むこと。普通に読解力があれば誰でもできます。心配ない。

 

次に第2問。本文のやりとりの中で空欄があり、それに当てはまる言葉を二十五字以内で答えるというものです。「言葉」となっているのが気になりました。一般的には「語句」が適切だと思うのですが。
まあ気にせず続けます。


兼部についての要望を答えるのですが、これも問1と同様に、生徒会部活動規約から読み取ります。「これまで認められてこなかった」というのがポイントで、体育部同士、文化部同士の兼部を認めてほしいと答えます。
これも易しいですね。普通に読解すればできます。

 

さて第3問。これが最長です。八十字以上百二十字以内で書けとあります。
しかも条件設定が細かい。


二文構成。
一文目は「確かに」という書き出し指定。具体的根拠を二点挙げ、時間延長に対する基本的な立場を示すこと、とあります。


二文目は、「しかし」という書き出し指定。終了時間の延長という提案がどう判断される可能性があるかを具体的な根拠と併せて示すこととあります。
そして「根拠」はすべて資料1~3によることと限定しています。


つまり、勝手に根拠を設定せず、(あなたの考えを自由に述べよではなく)あくまで資料の解釈に基づく記述を要求しています。

これらの条件をいちいち確認して3種類の資料から該当部分を見つけ出し、指定字数に納めるのは結構時間がかかりました。


模範解答と見比べてみると、要素の見落としがありました。


問1、問2と比較すると、やや手間がかかります。
「正答の条件」も細かいです。採点に時間がかかるのではないでしょうか。大丈夫ですか?
私ならこんなに条件の多い採点基準のある問題は作りません。採点が大変だから。


まあ、採点にブレが出ないようにということでしょう。

まとめると、本文(生徒同士のやりとり)、資料1~3の読み取りは簡単。設問は問1、問2は簡単。問3がやや手間がかかるということです。

最後に、「検討中」とある「作問のねらい~」という文章が添付されていて、それを読んで気になった点を書いておきます。


「大学入試共通テストにおいて問いたい『思考力・判断力・表現力』」という項目のうち、

「考えを解答する問題」④テクストの精査・解釈を踏まえて発展させた自分の考えを解答する問題(自由記述式/小論文)
テクストに書かれていること(構造や内容)を把握した上で、テクスト全体から精査・解釈し、それを踏まえながら発展的に自分の考えを形成することができる

 とあるのですが、今回の試行テスト記述問題では、自分の考えを求められる設問はありませんでした。


今後、本試験に向けてこの項目はどうするのか、大変気になりました。

 

才能の見つけ方 天才の育て方 アメリカ ギフテッド教育最先端に学ぶ  石角友愛 を読んで、日本の教育の現状について考えました。

 

 

才能の見つけ方 天才の育て方 アメリカ ギフテッド教育最先端に学ぶ 石角友愛

子どもの才能を見つけ、伸ばす方法はどんなものがあるのかということが、気になっていて、見つけたのがこの本です。

30年ほど高校教育に携わっていて、自分自身も3人の子どもを育て中です。

その間、学校生活になじめない生徒を何人も見てきました。

原因や理由は人それぞれ。原因不明のこともよくあります。

 

高校生のみなさんは、自分もそんな傾向があると思っている人もいるかもしれません。

そこで、なんか学校がしっくりこない、なじめないという人の参考にこの本を紹介します。

 

一気に読了したので、考えたことなどを書いておきます。

 

「ギフテッド」という言葉が出て来ます。引用すると、

ギフテッドの定義とは?

誰にそうしろと言われたわけでも、期待されたわけでもなく、内から自然 に、生まれつき湧き出る能力をギフテッドと言うのです。

 ギフテッドとは、才能を生まれつき持ち合わせている天才のことです。

特別な人のことのように思えますが、アメリカの公立校の7%の生徒がこれに当てはまるそうです。潜在的にはもっと多いでしょう。

 

アメリカは「ギフテッド」を探し、その才能を伸ばすことに熱心に取り組んでいます。

一方、日本の教育現場ではどうでしょうか。

 

公立学校では、まずアメリカのような考えや仕組みはないでしょう。

 

以下、本書の前半から気になった箇所を引用します。

 

誰もが自分の子どもに、自分を愛し、感情を上手くコントロールし、他者への 共感を示し、知的好奇心を強く持ち、逆境にもへこたれない強い精神力を持つ人に育ってほしいと願っていると思います。どのようにしたら、その芽を発見し、つぶさずに育てていけるのか、それを考えるきっかけにしていただければと思います。

15歳で膵臓がんの検知方法を開発した少年

ギフテッドの多くに見られる特徴の一つに、「インテンスである」ということが挙げられます。インテンスとは、強烈、極端、激しい、などと訳されますが、ジャックの8000種類ものたんぱく質への熱意は、まさしくインテンス以外の 何ものでもないと思います。

 

 

古今東西あらゆるジャンルで出現する天才

なんでも医学校時代の鷗外は、ドイツ語の授業で、ドイツ語を全て中国語に 翻訳して縦書きでノートを取っていたということです。

 

ギフテッド・チルドレンを発掘する取り組み

ギフテッド発掘率が100%のミシシッピー州やアーカンソー州では、発掘されたギフテッド・チルドレンの約40~45%が貧困層に属する子どもだったというデータもあります。

 

ギフテッド・チルドレンに共通する特徴

また、学校の成績に関していえば、オールAを取る子も多い一方、普通の教室形式での授業に退屈してしまう子も多く、テストを受けるスキル( 穴埋め テスト、単語暗記など)を持ち合わせていないこともあり、必ずしも成績にギフテッドネスが反映される訳ではないのも事実なのです。

IQが高い子の脳はどこが違うのか

IQが高い子どもの前頭前皮質の方がより可塑性と変動性を持っているということです。また、成熟するのが遅いということは、それだけ複雑なレベルの 認知回路を脳に構築するチャンスが多く与えられているのではないか、と言われています。

 

才能は平等だけれども、機会は平等ではない

文科省が発表した文部科学白書によると、親の年収が1000万円以上の家庭の子どもの4年制大学進学率は60%を超えるのに対し、400万円以下の家庭の場合、進学率は30%ほどにとどまるというデータがあります。

子どものポテンシャルを受け入れられない親もいる

ですから、第一に、親がギフテッドの存在を認識している必要があり、子ども が一日の様々なシチュエーションで見せるギフテッドの片鱗を見抜く洞察力 がないといけません。

彼女のように、優秀なプログラムに招待されても、経済上の理由などで通えない、親が認めないなどのケースは非常に多いのが実情です。

貧困層の子どもは、自己効力感が弱い?

望ましい成果を出すために必要な行動をどれだけ自分が取ることができる かについての判断能力を指します。自尊心は自己全体に対する恒常的な評価であり、自己効力感は、ある具体的なシチュエーションや課題に対する 自分の能力の評価です。

 

森鴎外のエピソードは興味深いですね。

森鴎外と言えば、「舞姫」は、高校の現代文の教科書の定番教材です。おそらく全国数十万人の高校生が、「舞姫」を学習しています。

 

 

さて、本書には才能を見つけて伸ばすアメリカの取り組みが詳しく書かれています。

では日本ではどうでしょうか。

 

 高校(公立)では、なぜ「ギフテッド」を見つけ、伸ばす教育ができないのか?

 

人数がネックです。一クラス40人が標準です。実際は30名以上でクラス編成されているところが多いです。

これを半数の20名程度にすれば、担任や他の教師の目も行き届きます。一人ひとりの生徒と向き合う時間も増えるので、才能に気づく機会も増えるでしょう。

難点は、学校行事などでクラス単位での参加が多いので、半数だと寂しい感じが出るかもしれません。

 

国がお金を教育にかけないので、一度に多くの生徒を一クラスに入れて教える方法をとっています。

全体の底上げや効率、コストを重視すると、今まではこのやり方でまだなんとかやれたのでしょう。

しかし、今後はグローバル化、AI、ロボットの時代。時代の変化に対応できるでしょうか。

たとえば、現在、プログラム教育を取り入れている学校は少ないでしょう。高校でも、パソコン、大きめのディスプレイ、ネット環境、これらを教室で使える所がどれだけあるでしょうか。ほとんどありません。

 

職員室の教師用パソコンですら、ソフトなど自由に使えないのです。

 

せめて、複数クラス分のパソコンまたはタブレットを使えるようにしてほしいですね。

教育面でのネット環境は、完全にお隣の韓国に負けています。

 

財務省は、教師と教育費の削減ばかりを考えないで、今後の日本の人材育成に金をかけることを考えてください。

 

また、もしあなた(あなたのお子さん)が「ギフテッド」なら、教室で「浮く」か「いじめ」のターゲットになってしまう可能性があります。

 

日本の学校は、同調圧力が強いのです。人より変わったところがあるだけで、いじめられます。スクールカーストなど特異な集団形成がなされる環境にあります。

何もトラブルが起こらなければそれはラッキー、何か起こっても不思議ではないのです。

 

教育現場は、現状維持、従来通りの発想で動いています。改革は非常に困難です。

金なし、人なし、自由度なしの学校現場で、何ができるでしょうか?

 

そうなると、学校には期待せず、個人で何とかしようとなります。

塾に行かせる?お金がかかりすぎです。

スタディサプリのような講座を利用して、わからないところは学校の先生に質問する、これがお金が一番かからない勉強方法です。

 

小学生、中学生は、高校生になるまでに、おもしろい(と思える)ことを見つけておきましょう。

必ずしも学校のクラブや勉強でなくてもいいでしょう。

ネットには、YouTubeやSchooのような動画学習の手段がたくさんあります。

また、図書館で好きな本を読みまくるゲームに没頭し、動画サイトに投稿する、なども熱中するという意味ではいいかもしれません。

その中から将来、宮本輝や米津玄師のように才能あふれる人が生まれてくるでしょう。

 

社会(大人)は、貧困家庭の子どもをもっと支援してほしいです。

国、自治体、企業、個人のいずれのレベルでも、もっと生徒(若者)を大事に育てようという気配が感じられるようにしてほしい。

少子化だと国中が騒ぐばかりではだめでしょう。

たとえば、不祥事を起こした企業は、テレビCMを自粛して浮いた宣伝費を貧困家庭の給付奨学金に回す、それだけでイメージアップです。

 

与党も野党も、高校3年生(18歳)は選挙権を持っていることを忘れていませんか?

彼らを引きつける政策なり、希望を持たせる考えなりを打ち出しましょう。

 

話が長くなりました。

才能ある子を見つけ、伸ばす。これは決して一部の人のことではありません。

だれしもかけがえのない力を秘めているはずです。それを現在の教育システムでは生かせていないことが残念です。