才能の見つけ方 天才の育て方 アメリカ ギフテッド教育最先端に学ぶ 石角友愛
子どもの才能を見つけ、伸ばす方法はどんなものがあるのかということが、気になっていて、見つけたのがこの本です。
30年ほど高校教育に携わっていて、自分自身も3人の子どもを育て中です。
その間、学校生活になじめない生徒を何人も見てきました。
原因や理由は人それぞれ。原因不明のこともよくあります。
高校生のみなさんは、自分もそんな傾向があると思っている人もいるかもしれません。
そこで、なんか学校がしっくりこない、なじめないという人の参考にこの本を紹介します。
一気に読了したので、考えたことなどを書いておきます。
「ギフテッド」という言葉が出て来ます。引用すると、
ギフテッドの定義とは?
誰にそうしろと言われたわけでも、期待されたわけでもなく、内から自然 に、生まれつき湧き出る能力をギフテッドと言うのです。
ギフテッドとは、才能を生まれつき持ち合わせている天才のことです。
特別な人のことのように思えますが、アメリカの公立校の7%の生徒がこれに当てはまるそうです。潜在的にはもっと多いでしょう。
アメリカは「ギフテッド」を探し、その才能を伸ばすことに熱心に取り組んでいます。
一方、日本の教育現場ではどうでしょうか。
公立学校では、まずアメリカのような考えや仕組みはないでしょう。
以下、本書の前半から気になった箇所を引用します。
誰もが自分の子どもに、自分を愛し、感情を上手くコントロールし、他者への 共感を示し、知的好奇心を強く持ち、逆境にもへこたれない強い精神力を持つ人に育ってほしいと願っていると思います。どのようにしたら、その芽を発見し、つぶさずに育てていけるのか、それを考えるきっかけにしていただければと思います。
15歳で膵臓がんの検知方法を開発した少年
ギフテッドの多くに見られる特徴の一つに、「インテンスである」ということが挙げられます。インテンスとは、強烈、極端、激しい、などと訳されますが、ジャックの8000種類ものたんぱく質への熱意は、まさしくインテンス以外の 何ものでもないと思います。
古今東西あらゆるジャンルで出現する天才
なんでも医学校時代の鷗外は、ドイツ語の授業で、ドイツ語を全て中国語に 翻訳して縦書きでノートを取っていたということです。
ギフテッド・チルドレンを発掘する取り組み
ギフテッド発掘率が100%のミシシッピー州やアーカンソー州では、発掘されたギフテッド・チルドレンの約40~45%が貧困層に属する子どもだったというデータもあります。
ギフテッド・チルドレンに共通する特徴
また、学校の成績に関していえば、オールAを取る子も多い一方、普通の教室形式での授業に退屈してしまう子も多く、テストを受けるスキル( 穴埋め テスト、単語暗記など)を持ち合わせていないこともあり、必ずしも成績にギフテッドネスが反映される訳ではないのも事実なのです。
IQが高い子の脳はどこが違うのか
IQが高い子どもの前頭前皮質の方がより可塑性と変動性を持っているということです。また、成熟するのが遅いということは、それだけ複雑なレベルの 認知回路を脳に構築するチャンスが多く与えられているのではないか、と言われています。
才能は平等だけれども、機会は平等ではない
文科省が発表した文部科学白書によると、親の年収が1000万円以上の家庭の子どもの4年制大学進学率は60%を超えるのに対し、400万円以下の家庭の場合、進学率は30%ほどにとどまるというデータがあります。
子どものポテンシャルを受け入れられない親もいる
ですから、第一に、親がギフテッドの存在を認識している必要があり、子ども が一日の様々なシチュエーションで見せるギフテッドの片鱗を見抜く洞察力 がないといけません。
彼女のように、優秀なプログラムに招待されても、経済上の理由などで通えない、親が認めないなどのケースは非常に多いのが実情です。
貧困層の子どもは、自己効力感が弱い?
望ましい成果を出すために必要な行動をどれだけ自分が取ることができる かについての判断能力を指します。自尊心は自己全体に対する恒常的な評価であり、自己効力感は、ある具体的なシチュエーションや課題に対する 自分の能力の評価です。
森鴎外のエピソードは興味深いですね。
森鴎外と言えば、「舞姫」は、高校の現代文の教科書の定番教材です。おそらく全国数十万人の高校生が、「舞姫」を学習しています。
さて、本書には才能を見つけて伸ばすアメリカの取り組みが詳しく書かれています。
では日本ではどうでしょうか。
高校(公立)では、なぜ「ギフテッド」を見つけ、伸ばす教育ができないのか?
人数がネックです。一クラス40人が標準です。実際は30名以上でクラス編成されているところが多いです。
これを半数の20名程度にすれば、担任や他の教師の目も行き届きます。一人ひとりの生徒と向き合う時間も増えるので、才能に気づく機会も増えるでしょう。
難点は、学校行事などでクラス単位での参加が多いので、半数だと寂しい感じが出るかもしれません。
国がお金を教育にかけないので、一度に多くの生徒を一クラスに入れて教える方法をとっています。
全体の底上げや効率、コストを重視すると、今まではこのやり方でまだなんとかやれたのでしょう。
しかし、今後はグローバル化、AI、ロボットの時代。時代の変化に対応できるでしょうか。
たとえば、現在、プログラム教育を取り入れている学校は少ないでしょう。高校でも、パソコン、大きめのディスプレイ、ネット環境、これらを教室で使える所がどれだけあるでしょうか。ほとんどありません。
職員室の教師用パソコンですら、ソフトなど自由に使えないのです。
せめて、複数クラス分のパソコンまたはタブレットを使えるようにしてほしいですね。
教育面でのネット環境は、完全にお隣の韓国に負けています。
財務省は、教師と教育費の削減ばかりを考えないで、今後の日本の人材育成に金をかけることを考えてください。
また、もしあなた(あなたのお子さん)が「ギフテッド」なら、教室で「浮く」か「いじめ」のターゲットになってしまう可能性があります。
日本の学校は、同調圧力が強いのです。人より変わったところがあるだけで、いじめられます。スクールカーストなど特異な集団形成がなされる環境にあります。
何もトラブルが起こらなければそれはラッキー、何か起こっても不思議ではないのです。
教育現場は、現状維持、従来通りの発想で動いています。改革は非常に困難です。
金なし、人なし、自由度なしの学校現場で、何ができるでしょうか?
そうなると、学校には期待せず、個人で何とかしようとなります。
塾に行かせる?お金がかかりすぎです。
スタディサプリのような講座を利用して、わからないところは学校の先生に質問する、これがお金が一番かからない勉強方法です。
小学生、中学生は、高校生になるまでに、おもしろい(と思える)ことを見つけておきましょう。
必ずしも学校のクラブや勉強でなくてもいいでしょう。
ネットには、YouTubeやSchooのような動画学習の手段がたくさんあります。
また、図書館で好きな本を読みまくる、ゲームに没頭し、動画サイトに投稿する、なども熱中するという意味ではいいかもしれません。
その中から将来、宮本輝や米津玄師のように才能あふれる人が生まれてくるでしょう。
社会(大人)は、貧困家庭の子どもをもっと支援してほしいです。
国、自治体、企業、個人のいずれのレベルでも、もっと生徒(若者)を大事に育てようという気配が感じられるようにしてほしい。
少子化だと国中が騒ぐばかりではだめでしょう。
たとえば、不祥事を起こした企業は、テレビCMを自粛して浮いた宣伝費を貧困家庭の給付奨学金に回す、それだけでイメージアップです。
与党も野党も、高校3年生(18歳)は選挙権を持っていることを忘れていませんか?
彼らを引きつける政策なり、希望を持たせる考えなりを打ち出しましょう。
話が長くなりました。
才能ある子を見つけ、伸ばす。これは決して一部の人のことではありません。
だれしもかけがえのない力を秘めているはずです。それを現在の教育システムでは生かせていないことが残念です。