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定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その3 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その3

関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

その1、その2をまだ見ていない人はこちらから。

 

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今回は、設問に挑戦しましょう。

問1と問2を取り上げます。

 

まずは問1から

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問1「教科書を教える」授業とはどのようなものだと筆者は考えているか、と設問にあるので、本文から対応する形式段落を確認すると、1~4段です。

設問に関わる段落(または部分)はどこかをつかむ

 

 参考のため、本文を再掲します。

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次に、選択肢を吟味します。

 

a~eの特徴は、選択肢の文が、「教科書を教える」授業とは、で始まります。

「教科書教える」となっている点に注意。「教科書教える」と間違えないこと。

では「教科書教える」授業とはどのようなものでしょうか。

1段落

近代学校における原則

・教師は「教える主体」であり、

・教科書は教えるための「教材」である

・教科書とは教師が教えるための道具や手段にすぎない

 

2段落

「教科書教える」ことが教師の役割であると考えるならば、転倒した事態となる=本末転倒

・子どもからすれば教科書が目的で、

・教師は手段や道具としての位置にすぎない

 

これらを踏まえて、選択肢を見ると

 

a教師は「教える主体」であり×

bも、教師は「教える主体」であり×

c 2段の要旨を満たしているので、これが○

dは近代学校における原則のようなものが×

eは教師は「教える主体」であり×

 

正解はCです。

文で説明すると、ややこしそうですが、難しくない問題でした。

 

次は問2です

 

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問2 日本の教科書観と教科書検定の関わりについて

これに対応する形式段落は、4~7段です。

形式段落の要旨を再掲しておきます。

 

4学校には教科書がなくてはならないものと考える

 教科書信仰=教科書を神聖視

5「教科書訴訟」の底流には「教科書信仰」的な教科書観

6文部省は教科書検定権を手放さないー国民に教育を保証するのは国家の責任

 「教科書信仰」は文部省だけでなく国民の大多数が共有

7教師側も教科書を教える方がずっと楽―教えるべき内容と範囲がはっきり書かれている、マニュアルも

  ↓

 教師を怠惰にしている

 

では、問題を解いていきましょう。

問2は、選択肢の分量が増えました。問1は1文だったのに対して、問2は、2文または3文です。

読む時間が取られる点、吟味する部分が増えた点が注意するポイントです。

選択肢の内容が本文の記述と合っていたら○、違っていたら×をつけます。

aから見ていきましょう。1文目は○、2文目は「教科書教える」が×。「教科書を教える」が正しいですね。したがって、aは×

b 1文目は○。2文目も「教科書教える」となっており○。だから、bは○です

ここで残りの選択肢も確認しておきましょう。

c  1文目「常に衝突が~」が×。3文目も「教科書観が大きく変わっていった」が×。cは×。

d 1文目は「近代学校教育の目的なので」が×。したがってdは×。

e 1文目は「教育現場の教員には多い」が×。2文目も×。したがって、eは×。

正解はbでした。

実際に問題を解くときには、制限時間があるので、ゆっくり吟味する時間が取れないことが多いです。

少しでも×の部分があれば、その選択肢は除いて、正解を絞り込みましょう。これが消去法と呼ばれるやり方です。

 

今回のまとめ

 

今回は、問1と問2をやりました。関西大学の問題の特徴は、漢字や語句問題から始まらずに、いきなり内容を問う問題が続いている点です。

 

本文の読解をしっかりやって、○印や線引きを駆使して、どこに何が書いてあったかを視覚化することがポイントです。

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その2 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その2 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

前回の続きです。その1を見てから読むことをおすすめします。

 

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 続きの問題文を読んで、○印をつけ、線を引く作業をやりましょう。

2ページからです。

赤色の線が、前回よりも細くなってしまいました。やや見づらいかもしれません。

2ページ

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2ページに○印と線を入れたものです。

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3ページ

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3ページに○印と線を入れたもの

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4ページ

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4ページに○印と線を入れたもの

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5ページ

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5ページに○印と線を入れたもの

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15分程度でできましたか?

 

時間がかかった、線を引いた箇所が違った、どこに線を引くかわからない、などいろいろ思うことがあるでしょう。

でも、全然かまいません。

やっているうちに慣れますから。

 

形式段落の要旨を載せておきます。数字は形式段落の通し番号です。

 

5「教科書訴訟」の底流には「教科書信仰」的な教科書観

6文部省は教科書検定権を手放さないー国民に教育を保証するのは国家の責任

 「教科書信仰」は文部省だけでなく国民の大多数が共有

7教師側も教科書を教える方がずっと楽―教えるべき内容と範囲がはっきり書かれている、マニュアルも

  ↓

 教師を怠惰にしている

8近世と連続した意識―手習塾や儒学の学習

9手習塾は「手本」を教科書に習字学習する

 「手本」という「教科書」のない手習塾はない

  ↓

 「教科書を学ぶ」構造で成り立っていた

10儒学は絶対化された経書をひたすら学び続けること

11儒学の学習において経書という「教科書」は絶対的権威をもつ無謬のテキスト

 学問は徹頭徹尾「教科書」を学ぶこと

 教師は「教科書を教える」ことを任とする人、経書に導く案内人

12学習の方法はメタ・レベルのものー文化に滲み込んだもの=簡単に変化するものでない

 近代になっても教科書観自体に変化は起こらなかった 

13近代学校教育は、教師が多数の生徒に、一斉授業の形式によって行う

 限られた時間で、効率的・合理的で正確に教えることが追求される

 概念化され理論化され言語化された知識が「教え込まれ」ていく

14「教える主体」としての教師が中心となり「教育」が構想される

 近代教育学は教師の立場からの学問

 近代学校と「教室」は「教え込み」の教育方法の原理が支配する場

15日本の近代学校は、ヨーロッパの近代学校教育を忠実に採り入れた

 教育方法も「教え込み型」の原理

16日本の学校の教科書観は明らかに教科書が重視されてきた

 近世との連続性がはっきり見える

  ↓

 教育の諸問題の、見えなかった「根」の部分

問題をときほぐす改革の手だても構想されてくる

 

問題文を最後まで根気よく読み終えることができた人は、それだけで十分、読解力ありです。普段はこんな文章を読むことがあまりないでしょう。

 

4月下旬の現在、全国の高校生は休校中です。

オンライン授業を受けている人も多いと思います。

この問題文の内容は、今の状況にも関わることが書かれているように思います。

「教え込み型」の一斉授業から離れて、学び方について考えるいい機会になるかもしれません。

 

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その1 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

国語問題の解き方を説明します。

入門編なので、すでにわかっている人は、他の勉強をしてください。

第1問の評論を解いてみましょう。

  1. 形式段落(1マス下がったところ)に通し番号を付けます。
  2. 本文の接続語、重要語を○で囲みます。
  3. 大事だと思う部分に線を引きます。

初めは適当にここだと思う箇所にどんどん線を引いてください。

慣れてくると、筆者の主張が述べられた部分に線を引けるようになります。

 

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次の画像に、通し番号、○印、傍線を赤色で書きました。参考にしてください。

みなさんは、シャープペン、鉛筆の黒色でかまいません。

漏れがあったり、違うところに線を引いていたりしても、大丈夫です。

やっているうちに慣れてきますから。



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段落要旨

形式段落の要旨をまとめました。

 

1日本の先生は、教科書を教えることが授業だと思っている。

 近代学校の原則は、教科書で教えるというのが本来

2教科書が目的で教師は手段や道具の位置に転倒している

3日本の教科書観と教師観はこの本末転倒

4学校には教科書がなくてはならないものと考える

 教科書信仰=教科書を神聖視



ここまでの作業をやってみて、まずは読解でやることが理解できましたか?

現代文は、「手で解く」ことが大事です。

 

今回は、ここまで。

 

本文の続きは、次回に掲載します。

 

 



 

国公立大学二次試験 国語記述対策にうってつけの良問 北海道大学 2020年 前期 国語 第一問 中屋敷均 「科学と非科学 その正体を知る」

北海道大学 2020年 前期 国語 第1問 中屋敷均 『科学と非科学 その正体を知る』

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形式段落の要旨をまとめました。通し番号は形式段落のものです。

 

1科学と生命は似ているー現在の姿から発展・展開させていく性質を内包する点

 過去の蓄積を記録する仕組みを持つ

 変化したバリエーションを生み出す能力が内在している

 

2科学の歴史―たくさんの間違いが発見され消えていった

 

3誤り、つまり現実を説明していない仮説の提出は日常茶飯事

 

4適応度の高い仮説は批判に耐え後世に残る

 その適応度をさらに上げる修正仮説が提出される

 生物の「適者生存」のよう

  ↓

 科学は、変化し、より適応したものが残り、成長、進化していく

 

5科学の知見は不動の真理ではない、常に不完全

 

6正しいか正しくないがあるのではなく、どれくらい確からしいかという確度の問題が存在するだけ

 

7原理的に不完全な科学的知見をどう使うか

 確からしさに対して正しい認識を持つべきだ

 

8確からしさを正確に把握し峻別する

 

9医学―指標化の試みー調査の規模や方法、分析手法で順位付け

 

10しかし、専門家でも意見が分かれることを非専門家が理解し判断することは現実的に相当困難

 

11権威主義―権威の高さと情報の確度を同一視して判断するやり方

  現在、この方法が主である

 

12専門家の意見は参考にすべき

  権威主義による判断もわかりやすく役に立つならそれで十分

 

13しかし、どこか拭い難い危うさー人の心の持つ弱点と関連

  権威にすがり安心してしまいたい、何かを信じて不安から逃れてしまいたい

 

 

解答例は河合塾、駿台、代ゼミのホームページにあります

https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/20/ho1-31a.pdf

 

本文の特徴は

・論旨が明確

・接続語を適切に使用

・極力、専門用語を使っていない

 

これらの点から、国公立大学の二次試験、記述問題の入門としてとてもよい問題だと思います。

 

入門といっても簡単ではありません。

本文の読解力と指定された字数で解答をまとめる力が必要です。

 

来年度から始まる共通テストも、こんな良い文章を出題してほしいと思います。

中身のない契約書やパンフレットなどの組み合わせ問題は、国語力もつかず、おもしろくもないのでやめてほしいですね。

 

余談ですが、問題訂正があります。

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本文の「生態系」を誤って「生熊系」と表記していたようです。

ギャグかと思いました。

「熊」が「生態」する北海道ならではのご愛敬でしょうか。 

京都大学に受かるには、幅広い教養が必要 京都大学 2020年 前期 国語 第一問 小川国夫「体験と告白」を解いて考えたこと

 

京都大学 前期 2020年 国語 第1問 「体験と告白」小川国夫

 

出典は随筆ですが、内容は文学評論です。

日本文学専攻の大学生でも、十分読み応えがある文章です。

設問は、文系は5問、理系は最後の第五問がなく4問です。

 

出典を探しましたが、簡単にはわかりませんでした。

ネットで検索してわかったのは、『雲間の星座』 冬樹社 1975 所収 

初出は「潮」昭和47年10月号

ということでした。

 

カーリルで検索してもありません。入手しにくいようです。

 

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形式段落の要旨をまとめてみました。通し番号は形式段落の番号です。

 

1或ることを証明するためにフィクションが必要

 

2言葉で事実を美化する→体験の真実を隠してしまう

 理由―語る人が客観化に心を砕くからーリアリズムの感覚

 

3非真実を本当らしく語る

 真実を知ろうとする人―言葉を剥ぎ取っていくこと、言葉の霧を透明化すること

  ↓

 高度のリアリズム精神

 

4井原西鶴の作品のキーワードー真実よりつらきことはなし

 

5自分を見過ごした人間にとっても自信の弱点のつらさを知っている

 ツルゲーネフー他人を有効に罵りたければ、自分の欠点を相手のこととして並べ立てればいい

 人間は共通の過敏な粘膜がある

 

6願望―人間に共有な過敏な粘膜を包み隠したい意思

  ↓

 リアリズム小説の第一の着眼点

 

7<あばく>ということ→人間はなぜ自分たちの弱点を書き、読むのか

  ↓

 小説を書いたり読んだりするのが面白いから

 

8人間が人間に対して抱く興味の矛盾

 アウグスチヌスー劇を見る人は他者をあわれむことを欲しているが、自分があわれであることは欲しない

 劇が人の心をとらえるのは酔うため、あわれな自己を直視するのを避けるため

 

9トルストイの思想も似ているー自分の小説含め大部分の小説を否定せざるを得ない

 

10体験談からは現れてこない人間の真実をあらわにする方法がリアリズム小説

 

11リアリズム小説のもたらした結果―人生は一つの崩壊の過程にすぎないという結論

 

12人の世は意味を隠し持つーそれをあきらかにしたい

  人生を形作っている要素―言葉、体験談

 

13鍵は体験談、告白という観念の識別、把握の仕方

 

長くはない文章で井原西鶴、ツルゲーネフ、アウグスチヌス、トルストイに言及しています。

受験生は、この4人について、ある程度の知識を持っていないとイメージがわきにくかったでしょうね。

また、リアリズム、私小説についても、知っているとわかりやすいかもしれません。

 

後半の11段落以降が少しわかりにくいと思います。

 

解答例は、河合塾、駿台、代ゼミのホームページに解答速報として掲示されています。

 

河合塾https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/20/k01.html

 

解いてみて自分の解答は、盛り込む要素が不足していたり、言い換えや要約ができていなかったりで、やや難しく感じました。

 

面白いのは、河合塾、駿台、代ゼミで、かなり違いがあることです。

 

言い回しが難しめなもの、比較的本文の記述によったもの、解答の方向性が異なるものなど、個性的です。

 

受験生のみなさんは、各校の解答例文を見比べて、どこのが一番しっくりくるかを検討してみてください。それも大切な記述の勉強法です。

 

私は、駿台の解答が一番すっと入ってきました。

 

リアリズムや私小説については、深い知識もなかったので、この入試問題は新鮮でした。

 

来年から導入される共通テストの出題方針で示される、実用的な文章とは対極にありますね。

 

グラフや契約書、パンフレットばかり読んでいて読書を怠ると、この二次試験には手も足も出ないでしょう。

 

本当の意味の読解力、記述力が求められる良問だと思います。

 

京都大学を目指す受験生は、幅広い知識と教養を、読書を通じて身につけておきましょう。

理系を目指す受験生も広い教養が求められる 京都大学 理系 2020年 前期 国語 第二問 『妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心』小松和彦 を解いてみた

 京都大学 理系 2020年 前期 国語 第二問

『妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心』小松和彦

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形式段落の要旨をまとめました

番号は形式段落の通し番号です。

 

1谷崎潤一郎『陰翳礼讃』―昭和の初めころには、闇の消失が目立ったものになってきた

2屋内の「眼に見える闇」―幻覚を起こしやすい

 闇に魑魅、妖怪だけでなく女も住んでいた

 逆に女の体から闇が出されていたのかもしれない

3燭台、行灯の明かりと陰にできる闇の調和に日本文化の美しさが

 明る過ぎる電灯により陰翳ある世界が消失することを憂う

 光りと闇の織りなす陰翳

4日本の美の理想

 美のみでなく日本人の精神や日本文化全体、人間全体にとっても重要

5闇の消失は電線が全国に張りめぐらされた大正から昭和にかけて

 近代化の波、資本主義、近代的消費社会のシステムへ編入

 同時に妖怪の姿も消え去る

6大正時代の童謡『かなりや』の一節「後ろの山」

 闇の領域としての恐怖に満ちた山

 前近代が抱えもつ深い闇の恐怖空間

 大人にも謎めいた闇の空間として生きていた

7仏壇や納戸の暗さー「向こう側」「背後」を隠しもっている恐さ

8子どもだけでなく大人も同様

 『かなりや』-大人の心を揺さぶる

 

本文の読み取りは、難しくありません。

2段落は、身の回りのものや風景に女体を見る、谷崎ワールド全開です。

 

 

設問は3問。問二のみ「本文に即して」という条件がついている点に注意。

解いてみた感想は、問一と問二の解答が重なりそうになってしまい、本文の範囲のどこを使うかが難しいなということ。

 

解答例は、河合塾のサイトを参照してください。  

https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/20/k01-32a.pdf

 

 

 

京都大学が理系の受験生にこの問題を課したねらいを考えてみました。

 

科学は世界のすべてを解き明かす事ができる訳ではない、

日本の美や精神、文化、人間全体、あるいは妖怪的なものに対する関心や知識を持つことが理系にも必要だ。

広く言えば、人間に対する人文学的アプローチも重視せよ。

 

といったところでしょうか。

 

谷崎潤一郎は、戦後、京都に住んでいた時期があります。お墓も京都にあります。

京都ゆかりの谷崎の「陰翳礼讃」は読んでおくようにということでしょう。

「感性」が注目されてきた現代、建築を目指す人はもちろん、どの理系分野でも発想のヒントになると思います。

ぜひ読書をおすすめします。

 

 

陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫)

陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫)

 

 

 

共通テストで予告されている実用的な文章、契約書やパンフレットを読んでも、おもしろくもないし、読解力がつく訳でもありません。

 

京都大学には、今後もこのような良問をぜひ出題してほしいですね。

教育格差を取り上げた東京大学 2020年 前期 国語の問題を解いてみて、出題の意図を考えてみた 『神の亡霊』小坂井敏晶 東京大学出版会

東京大学 2020年 前期 国語

出典『神の亡霊』小坂井敏晶 東京大学出版会

 

第一問 現代文を解いてみました。

段落の要旨を形式段落の番号順に載せています。

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学校教育で階層構造が再生産される

教育機会の均等で貧富差の解消、公平な社会にと期待

 

機会均等のパラドクス

戦前-庶民と金持ちが別々の学校に行く

戦後―一律の学校制度

どちらも結果は変わらない

見かけは自由競争だが、実は出来レースーより大きなハンディキャップを弱い者が背負う

貧乏が原因で進学できないなら当人のせいではない、不平等な社会は変えるべきとなる

自由競争の下では、成功しないのは自分に能力がないから

 

3アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)

個人間の能力差には適用されない

人種・性別など集団間の不平等を是正すれば、あとは各人の才能と努力次第

 

4学校は子供に平等に知識を培う

能力別に人格を格付けし、差異化する矛盾

能力主義(メリトクラシー)自らの力で未来を開くー機会均等

かえって階層構造を固定し、閉じるイデオロギーに

近代の人間像が導く必然

 

家庭条件による能力差は避けられない

 

近代は個人を生み出したー自由意志に導かれる主体

家庭条件や遺伝形質(外部)から切り離された才能や人格(内部)を根拠に自己責任を問う

 

7 これは虚構

才能や人格は遺伝形質に社会影響が作用して形成→我々は外来要素の沈殿物

偶然も外因

意志や意識は記憶と外来情報の相互作用を通して形成

自己責任の根拠はない

 

8当人の所与である以上、当人の責任―能力差を自己責任とみなす論理

 

9封建制度やカースト制度―神や自然など、区別の根拠が共同体の外部にあるため、社会秩序は安定

 

10自由な個人が共存する民主主義社会―平等が建前

しかし現実にはヒエラルキー、貧富の差が発生―既存秩序に不満、社会は不安定

 

11支配関係に対する被支配者の合意がなければヒエラルキーは長続きしない

 

12貧困は差別や社会制度のせいではなく、自分の資質、能力が他人より劣るからー自己防衛が不可能、人間には住めない地獄の世界

 

13さらなる平等化の必要が叫ばれる理由

人間は常に他者と自分を比較し優劣をつける

民主主義社会では人間に本質的な差異はないとされる

お互いに比べあい、小さな格差に悩むー自らの劣等性を否認するため社会の不公平を糾弾する

 

14格差を正当化する必要―人間は自由であり、努力しない者の不幸は自業自得だとする

近代は不平等を隠し、正当化しただけ

 

 

要約の感想

12、13段落がわかりにくかったです。もう少し噛み砕いた説明があればわかるのですが。

 

解答例は、河合塾や代ゼミが公表しているので、そちらを参照してください。

https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/20/t01.html

 

 

解いてみた感想

 

わたしの解答は、予備校の解答例のようには要約や言いかえが出来ていなくて、本文の引用をつなぎ合わせたものになってしまいました。

 

受験生のみなさんは、解答例のようなきっちりとした文はなかなか書けないのではないでしょうか。

 

でも、がっかりしなくてもいいですよ。予備校の講師は、その道のプロですから。

解答例と少しでも近いところがあれば良しです。

 

さて、東大生(受験生)は、この問題文をどう読んだのでしょうか?

共通テスト風に発展問題を考えてみました。

 

東大を受験する人は、

親は金持ち(*下記参照)

家庭条件○

遺伝形質○

社会影響○

 

*「東大生の親は金持ち」は本当だった!(キャリコネ編集部)

https://news.careerconnection.jp/?p=6969

 

A君「自分は恵まれているなあ。感謝して、社会に少しでも貢献できるようになろう」

B君「東大に来ない人たちは、努力、意識が足りない。自己責任は当然だ」

 

Cさん「東大生は、国家や企業、団体のリーダー的立場になることが期待されている。社会にはそうなれない人たちが多数いるので、その人たちの境遇にも思いを馳せなければならない…」

 

とにかく、こういう内容の問題文を選ぶのも、ひとつのメッセージであるので、東京大学の出題の意図を聞いてみたいですね。

 

大学入学共通テストの内容について、大学入試センターから発表がありました 傾向と影響について書きました

2021年から実施される大学共通テストの出題方法などについて、大学入試センターから発表がありました(2020年1月29日)

大学入学共通テストについての資料はここにあります。

https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/index.html

 

特に注目の国語、数学、英語については、

 

国語 マーク式 80分 200点

 

数学Ⅰまたは

数学Ⅰ・数学A マーク式 70分 100点

 

数学Ⅱ または

数学Ⅱ・数学B マーク式 60分 100点

 

英語 マーク式

      リーディング 80分 100点

       リスニング 60分 100点

ただしリスニングは、60分のうち解答時間30分、作動確認、音量調節が30分

 

国語は記述問題がなくなり、センター試験と同じ80分、数学Ⅰまたは、数学Ⅰ・数学Aが70分に、英語はリーディングとリスニングがそれぞれ100点の配点になりました。

問題作成方針

注目の文言を一部抜粋します。

第Ⅰ 問題作成の基本的な考え方

〇 知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視する

〇 「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場面設定

 高等学校における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮し、授業において生徒が学習する場面や、社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等を基に考察する場面など、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する。

 

「授業改善のメッセージ性も考慮し」とあるが、入試で高校の授業を改善するという発想がそもそも間違っていると思います。

ちゃんと高校の現場の意見を聞き、教師数を増やすなど地道なことをまずやらないと、改善などできません。

「場面設定を重視する」とありますが、すぐにネタ切れになる、あるいは、問題がパターン化されるでしょう。

そうなると「深い学び」を問うはずが、すぐに受験テクニックに組み入れられてしまうでしょう。

 

第2 出題教科・科目の出題方法、問題作成のねらい、範囲・内容等

〇 問題作成のねらい、範囲・内容

 「なお、高等学校における通常の授業を通じて身につけた知識の理解や思考力等を新たな場面でも発揮できるかを問うため、教科書等で扱われていない資料等も扱う場合がある」

 

 

「新たな場面でも発揮」とは、応用力があるかを問いたいということ。センター試験など従来の入試問題は、知識偏重だと批判されていたので、変えたいのでしょう。学びの基礎としての知識は大事だと思うのですが。

「教科書等で扱われていない資料」を出すというのは、センター試験が教科書から出されると言い続けられてきたことへの反動でしょうか。あるいは、出題内容への批判をかわすねらいがあるのかもしれません。

第6 大学への成績提供等

〇 「科目ごとの9段階の段階表示および国語における大問別得点を提供する」

 

 

「9段階の段階表示」の内容がわかりません。ベネッセのGTZ(学習到達ゾーン)のようなものを想定しているのでしょうか。謎です。まさかベネッセのシステムに丸投げではないでしょうね。

 

出題教科・科目の問題作成の方針

国語について

「文章から得られた情報を多面的・多角的な視点から解釈したり、目的や場面等に応じて文章を書いたりする力などを求める」

 

 

これは、「実用化」を求めているからでしょう。実用文を書く力をわざわざ大学入試で求める必要があるのか疑問です。

「情報」を解釈するとなっている点に注目です。深い思考力や創造的な発想力を求めているのではなく、結局は大量の情報を手際よく処理する力を求めているのです。

共通テストで求める「国語力」がこれでいいのかなと疑問に思います。

 

「問題の作成に当たっては、大問ごとに一つの題材で問題を作成するだけでなく、異なる種類や分野の文章などを組み合わせた、複数の題材による問題を含めて検討する。」

 

 

 

これは、試行テストにあったような問題形式のことで、契約書やグラフ資料など複数の資料を読ませて「思考力」を問うもの。

 

現在の高校生が使っている国語の教科書には、このような文章はないです。しいて上げるなら、「国語表現」の教科書に、プレゼンテーションやポスターなどの「実用的」な資料は載っています。

率直に言うと、グラフや契約書など、無味乾燥の資料を読んでおもしろいと思う高校生がどれだけいるのでしょうか

生徒に学習への関心を持たせる重要なポイントは、その文章が知的におもしろいかどうかです。

共通テストで出される問題文がどんな内容になるのか大いに注目したいですね。

 

感想

共通テストの難易度は確実に上がります。国語だけを見ても、センター試験と同じ80分の中で、複数の資料や文章を読み、多角的な考察が求められる設問がなされる。

どう考えても時間が不足します。センター試験でさえ、大問4問をそれぞれ20分で解くと、マークの確認時間がありません。

それ以上に共通テストは、時間不足になる可能性が高いです。しかも、試行テストは、新たにはやらない。実際に受験してみないとわからないのです。

受験生には酷な試験となるでしょう。

 

あくまで私見ですが、国公立大学が第一志望ではない、私大志望の受験生は、共通テストを敬遠するのではないでしょうか。

上位校はともかく、中堅校以下の大学を受験する人は、その大学のAO入試、公募推薦入試から受験し、一般入試は大学の個別の入試を受けることで、共通テストを受けなくてもチャンスが複数回あります。

どんなものか予想できない共通テストの対策に時間をかけるより、今まで通りの勉強に時間をかける方がいいと考える人が出てくるでしょう。

 

来年度の共通テストが難しくなり、ややこしい問題が増えると、それ以降の受験生は減少し、共通一次試験の初期のように、国公立大学を目指すものしか受けない試験になっていくかもしれません。

 

共通テストを受験する人が減少すると、国公立大学の競争率は下がり、ベネッセなど模擬試験を行っている教育産業は打撃を受けるでしょうね。

 

2020 センター試験国語 第1問 評論「河野哲也『境界の現象学』」の分析と解き方を書きました。

センター試験国語の第1問評論「河野哲也 『境界の現象学』」を解いてみました。

今年が最後のセンター試験になるということで、長年、国語を教えてきた立場で、今年の評論の特徴を分析しました。また、書き込みで汚い所もありますが、解き方の手助けにもなればと思い、私が解いた問題用紙も画像で掲載します。

今求められる「国語力」とはどんなものなのか。受験生、高校生はもちろん、大人のみなさんも一度トライしてみてください。

問題と解答はこちらのリンクからどうぞ

https://nyushi.sankei.com/center/20/1/exam/3910.pdf

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段落の要旨をまとめました。通し番号は形式段落の番号です。問題文にも番号が振られています。

1環境問題専門家の比喩

2港に停泊しているヨットと荒海のヨットで、コップの水を運ぶときの違い

 波に対するレジリエンスの向上を求められる

3レジリエンスとは、攪乱を吸収し、基本的な機能と構造を保持し続けるシステムの能力

4もとは、物質が元の形状に戻る弾性のこと

 六〇年代に生態学や自然保護運動で用いられる、環境変化に対し動的に応じる適応能力

5回復力、サスティナビィリティと類似するが、微妙な違い

 回復力―ベースライン、基準に戻ること

 レジリエンスー変化に合わせて流動的に姿を変更する

6サスティナビィリティー唯一の均衡点が期待される

 レジリエンスーダイナミズム

7八〇年代は心理学や精神医学、ソーシャルワークの分野で使われる

 ストレスなどへの抵抗力、病気から立ち直る心理的な回復力

8フレイザーの主張―ソーシャルワーク、教育の分野でのレジリエンスの重要性

 従来―患者の問題を専門家がどう除去するか

 レジリエンスー患者の自発性、潜在能力に着目し患者中心の援助

9ソーシャルワークの特徴―人間と社会環境の相互作用に働きかける

 クライエントの支援―レジリエンスが活かせる環境を構築すること

10レジリエンスに重要な意味を持つのが脆弱性

 脆弱性は変化や刺激に対する敏感さを意味し、環境の不規則な変化や悪化にいち早く気づける

11近年、エンジニアリングの分野で、安全に関する発想法として登場

 適度な冗長性を持ち、柔軟性に富む組織の能力を高める方法

12レジリエンスの概念の特徴は、自己と環境の動的な調整に関わること

 環境を選択したり、改変したりすることが求められる

 レジリエンスは、システムが変化する環境のなかで自己を維持するため、環境との相互作用を連続的に変化させながら柔軟に適応していく過程

13レジリエンスをミニマルな福祉の基準とする

 変化に適切に応じる能力を持つようにすることが福祉の目的

 他者から与えられるものを受け取るばかりではなく、自分自身でそのニーズを能動的に充足する力を持つ必要がある

14レジリエンスとは、個人が持たねばならない最低限の回復力

自己のニーズを満たせなくなった個人に対してケアする側がなすべきは、物を修復したり、補償の金銭を付与したりではなく、自分のニーズを満たせる力を獲得するように支援すること

 

各設問について

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問1 お約束の漢字問題。今年の漢字は易しい。

 本来は、本文の中での意味を確認して解きますが、今年はこの問題を見るだけで解けるレベル。

 

 (エ)カタヨって の選択肢が「国語のヘンサチが上がった」というのは、易しすぎ。

もうちょっとひねってほしい。

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問2「微妙な意味の違い」の説明は、5段落、傍線部の直後にある。本文から根拠を見つけ、選択肢の文言と照らし合わせる。易しい問題。

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問3 「脆弱性」の説明は、10段落、これも傍線部の後にある、「いち早く反応するセンサー」と9段落にある「本人が持つレジリエンスが活かせる環境を構築すること」が根拠になる。選択肢の前半と後半では、根拠になる部分が離れているため、探すのにやや時間がかかる。

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問4 「ミニマルな福祉の基準」の説明。13段落と14段落に根拠がある。

余談ですが、この「ミニマル」は当然、「基準」にかかるのですが、筆者の主張を読むと「ミニマルな福祉」つまり、国や他人が関わるのは最小限でよいと言っているように読めてしまいます。いわゆる「自己責任論」です。

誤読を避けるなら、「福祉のミニマルな基準」と書き直すのが適切でしょう。

 

 

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問5 最近のセンター試験のお約束、生徒の話し合いの設定です。共通テストへの布石でしょうが、個人的には全く感心しません。ネタ切れ、バリエーション不足が目に見えています。

「発展成長する動的過程」「動的」がヒントです。易しい問題ですね。

 

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問6 設問が(ⅰ)適当なもの、(ⅱ)適当でないもの と意地悪く?変えてあるので、ケアレスミスに注意。選択肢を一つ一つ吟味する時間が少しかかります。

 

 

感想

各段落の要旨を見ると、情報量が多く、それらを的確につかみ、設問の要求に応えなければなりません。一番求められている力は、論理の力というより、情報の分析力です。

時間があれば、それほど難しくはない文章ですが、20分程度の時間でこれだけの情報と分析をこなさなければならないのは、かなりたいへんです。

内容的には、二元論、自己責任論といったところが関連キーワードとしてあげられます。

残念なのは、13段、14段の筆者の主張に、具体性が欠ける点です。福祉の分野で、現実のどういうケースのことが論じられているのか、ちょっとわかりませんでした。

論理の展開が、複雑だが明晰である文、世界の真実の一端に触れるような深遠な文を来年の「共通テスト」には求めたいと思います。

緊急事態発生 大学入試の混乱に思うこと

本日11月1日、来年度の英語外部試験の大学入試への利用が見送られました。

ニュースでも話題になっています。

数日前に文科大臣の身の丈発言があり、混乱に拍車がかかりました。

読売新聞に政府内からも延期論が出ていると報じられたので、これは流れが変わってくるなと思っていたところでした。

今まで翻弄された高校生、その保護者は、ほっとされた方が多いのではないでしょうか。

 

当然、高校は大混乱です。

勤め先も今日一日は、この話題と今後の対応についてもちきりです。

 

さて、受験生の立場で考えてみると、とりあえず来年度に、英語外部試験を受ける必要はなくなりました。

いつ、どこで、どの試験を受けるのか、悩まなくて済むのは助かります。

当然、高い検定料も必要ありません。入試科目の勉強に専念できます。

今の高校3年生も、万が一、浪人することになっても、外部試験は必要なくなったので、面倒な共通IDの発行手続きをしなくて済みます。

 

文科大臣の声明には令和6年度、2024年度の入試から始めるとありました。現在の中学1年生のみなさんが高校3年生になる時です。

私は、それまでには、英語民間試験の利用そのものが中止になると思います。それほどこの仕組みは問題が多過ぎなのです。

来年度は、現行のセンター試験が廃止され、共通テストに移行します。

これも、国語と数学に一部、記述問題が導入されます。

採点の体制や精度に不備が多いと指摘されているので、今後、見直しや延期が出てくるかもしれません。

いずれにしても、国が勝手に決めて、あとは民間に丸投げ、手間は高校生と高校に負わせる、こんな教育政策でよいのでしょうか?

社会の要請だ、変化への対応だと言いながら、現状は劣化の道を歩んでいるように思えます。

私が子供の頃描いた未来は、もうちょっとましな世の中になっているはずでした。

なんだか歳を重ねるほど、希望が失われ、矛盾や混乱が増え、格差が広がる時代になった感が強いです。

高校生のみなさんは、どんな実感を持っているのでしょうか。