bluesoyaji’s blog

定年後の趣味、大学入試問題の分析、国語の勉強方法、化石採集、鉱物採集、文学、読書、音楽など。高校生や受験生のみなさん、シニア世代で趣味をお探しのみなさんのお役に立てばうれしいです。

谷崎潤一郎の名作「吉野葛」に学ぶ 小説の描写 

谷崎潤一郎「吉野葛」にある柿の描写が好きなので、その魅力を考えてみました。

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次の三点についてみていきましょう。

  • 比喩が美しい
  • 一文の長さが心地よい
  • 感覚に訴える描き方がエモい

 

その三 初音の鼓

ずくしは蓋し熟柿であろう。空の火入れは煙草の吸い殻を捨てるためのものではなく、どろどろに熟れた柿の実を、その器に受けて食うのであろう。しきりにすすめられるままに、私は今にも崩れそうなその実の一つを恐々手のひらの上に載せてみた。円錐形の、尻の尖った大きな柿であるが、真っ赤に熟し切って半透明になった果実は、あたかもゴムの袋の如く膨らんでぶくぶくしながら、日に透かすと琅玕の珠のように美しい。市中に売っている樽柿などは、どんなに熟れてもこんな見事な色にはならないし、こう柔らかくなる前に形がぐずぐずに崩れてしまう。主人が云うのに、ずくしを作るには皮の厚い美濃柿に限る。それがまだ固く渋い時分に枝から捥いで、成るべく風のあたらない処へ、箱か籠に入れておく。そうして十日程たてば、何の人工も加えないで自然に皮の中が半流動体になり、甘露のような甘みを持つ。外の柿だと、中味が水のように融けてしまって、美濃柿の如くねっとりとしたものにならない。これを食うには半熟の卵を食うようにへたを抜き取って、その穴から匙ですくう法もあるが、矢張手はよごれても、器に受けて皮を剥いでたべる方が美味である。しかし眺めても美しく、たべてもおいしいのは、丁度十日目頃の僅かな期間で、それ以上日が立てばずくしも遂に水になってしまうと云う。
そんな話を聞きながら、私は暫く手の上にある一顆の露の玉に見入った。そして自分の手のひらの中に、この山間の霊気と日光とが凝り固まった気がした。昔田舎者が京へ上ると、都の土を一と握り紙に包んで土産にしたと聞いているが、私がもし誰かから、吉野の秋の色を問われたら、この柿の実を大切に持ち帰って示すであろう。
結局大谷氏の家で感心したものは、鼓よりも古文書よりも、ずくしであった。津村も私も、歯ぐきから腸の底へ沁み徹る冷たさを喜びつつ甘い粘っこい柿の実を貪るように二つまで食べた。私は自分の口腔に吉野の秋を一杯に頬張った。思うに仏典中にある菴摩羅果もこれ程美味ではなかったかも知れない。

 

 比喩が美しい

・円錐(えんすい)形の、尻の尖(とが)った大きな柿であるが、真っ赤に熟し切って半透明になった果実は、あたかもゴムの袋の如(ごと)く膨らんでぶくぶくしながら、日に透かすと琅玕の珠のように美しい

円錐形、尻、とくれば、女性の体つきを連想させます。谷崎特有の表現です。

風景に女体を見る場面もありました。

琅玕(ろうかん)とは、翡翠(ひすい)のことだそうです。透明なものほど高級だとか。

熟柿がまるで透明に近い翡翠のような美しさがあると言うのです。こんな表現、石好きでないとできません。

・甘露のような甘み 

 天が降らす甘い露という意味だそうです。中国古来の伝説。漢文の知識ですね。

・私は暫く手の上にある一顆の露の玉に見入った。そして自分の手のひらの中に、この山間の霊気と日光とが凝り固まった気がした。

 一顆の露の玉ですよ、美しい。しかも「山間の霊気と日光とが凝り固まった」ものなんです。

ここで梶井基次郎の「檸檬」の描写を連想するのは私だけでしょうか。

 

梶井基次郎が「吉野葛」の描写の影響を受けているのかも知れないと考えたのですが、

ちょっと気になるので調べてみました。

すると、梶井基次郎の「檸檬」は、1931年(昭和6年)刊行、ただし初出は、1925年(大正14年)です。

谷崎の「吉野葛」は、1931年(昭和6年)「中央公論」1月号、2月号に掲載です。

 

初出は梶井基次郎の方が早い、ということは、谷崎が「檸檬」を読んでいたかも知れないですね。あくまで仮定の話ですので、念のため。

・私は自分の口腔(こうこう)に吉野の秋を一杯に頬張った

 熟柿は吉野の秋の象徴になっています。その「秋を頬張る」んです。秀逸なキャッチコピーのようですね。

・思うに仏典中にある菴摩羅果もこれ程美味ではなかったかも知れない。

 菴摩羅果(あんもらか)とは、なんと「マンゴー」のことでした。知らなかった。

仏典中とあるので、「醍醐味」のような乳製品を思い浮かべたのですが、果物でした。

谷崎の教養の深さがうかがえました。

 

一文の長さが心地よい

引用した文章をワープロソフト「一太郎」で分析してみました。

「ツール」「文章校正」の「読みやすさ」によると、

文字数は840文字

文数は18文

段落数 3

平均文長 47文字

平均句読点間隔 16文字

文字使用率

漢字 33%

カタカナ 0%

 

これを平均的な文章である新聞のコラムと比べてみると、

平均文長 40文字

平均句読点間隔 18文字

文字使用率

漢字 48%

カタカナ4%

だそうです。(一太郎より)

 

平均文長が谷崎の方が長いのはイメージ通りです。

意外なのは、平均句読点間隔が新聞の方が長いこと。

谷崎は、あまり句読点を使わず、長々と続けると思っていたのですが。

漢字の使用率が少ないのは、谷崎の特長です。ひらがなが目立ちますね。

極論すると、古文に似た文章といえるのではないでしょうか。

 

感覚に訴える描き方がエモい

いいおっさんが「エモい」なんて使うな!とお叱りを受けそうです。

でも谷崎の文章を言い表すとしたら、今はこの「エモい」がぴったりします。

比喩でもいいましたが、女性の体つきに見立てる点は、「エモい」と言っていいでしょう。

それ以外にも、文全体が読み手の感覚に訴えてくることが魅力です。

 

最後に

ギターの練習方法に「耳コピ」という方法があります。

好きなギタリストの好きな演奏をそっくりそのまままねをすることです。そうすることで上達します。

小説を書くことにも「耳コピ」の方法を当てはめて、好きな作家の好きな表現を「筆コピ」するのはどうでしょうか。

きっとあなたの描写力も上がること間違いないと思います。

さあ、こんな時期だからこそ、うちで「筆コピ」しませんか。

 

吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3)

吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3)

 

 

アンモナイトの名前を調べてみた。自宅でできる遊び 初心者が化石の同定に挑戦

母岩から分離したため、形がはっきり見えるようになったので、アンモナイトの同定をやってみました。

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まずは白亜紀の羽ノ浦層で画像を検索。

すると、似たようなアンモナイトは、シュードハプロセラスか?

 

入手して置いた洋書を取り出してきて調べてみました。

Treatise on Invertebrate Paleontology

Volume4:Cretaceous Ammmonoidea

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デスモセラス科を見ていくと、ありました。

 

Pseudohaploceras

Moderately involute,slightly to moderately compressed,with convex sides;constructions regular,straight or sinuous,collaredin some;fairly fine,distinct,sharp or rounded,branching ribs between constractions,extending from umbilical edge and crossing venter.

 

 

単語の意味を調べてつなぐと、

 

ほどよくインボリュート曲線、ほんのり、ほどよく圧縮された、凸面;規則的な狭窄、まっすぐまたは波状の襟、かなり細かい、はっきりした、または丸みのある狭窄の間に分岐した肋、延伸したへその縁と交差する腹部

 

何のことかわからない文章になってしまいました。学生時代以来の英語に苦戦。

 

掲載されたイラストは全体が丸くて、この化石の、上下にへしゃげたフォルムとは異なります。

化石に圧力がかかり、形が変わることが多いそうです。

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他にもフィロパキセラス、シャスティクリオセラスといった名前も調べてみましたが、よくわかりませんでした。

 

さらにネットでいろいろあたってみて、このアンモナイトの名前は、シュードハプロセラスとしました。やれやれです。

間違っていたらごめんなさい。

 

ベランダで化石採集?ゴールデンウィークの自粛中にできる家遊び これ何?調べてみた

ベランダで化石採集した石を小割にして、化石を見やすくしてみました。

その時の記事はこちら。

 

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これはいったい何の化石なのか、調べてみました。

 

まずは図鑑です。

学生版 日本古生物図鑑 北陸館

原色化石図鑑 保育社

日本標準化石図譜 朝倉書店

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ところが、二枚貝もウニも、それらしきものが見つかりません。

google画像検索で調べてみると、象の目の画像ばかりが出てくる。

 

検索を続けていると、和歌山県立自然博物館の資料が参考になりました。

写真によく似たウニが載っています。

 

拡大すると

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ウニ
名前:ヘテラステル属の一種
学名:Heteraster sp.
産地:和歌山県有田郡湯浅町
地層:有田層
年代:中生代白亜紀前期(約1億3000万年前)

 

以前に入手したパンフレットにも、そっくりのウニの画像が載っていたので、これに決定しておきます。

ヘテラステル・マクロホルクス(Heteraster macroholocus)  

ブンブク類の一種 とありました。

ブンブクとは、昔話の分福茶釜から来ている名前だそうです。

 

 

トリゴニアは、これも和歌山県立自然博物館の資料からわかりました。


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二枚貝

名前:プテロトリゴニア・ポシリフォルミス
学名:Pterotrigonia pocilliformis
産地:和歌山県有田郡湯浅町
地層:有田層
年代:中生代白亜紀前期(約1億3000万年前)

 

 

いずれにせよ、白亜紀、およそ1億3千万年前という気の遠くなる時代に生きていた生物たちです。

人生百年と比べると、永遠ともいえる時代を石となって残り続けたこれらの化石に畏怖の念を抱きました。

 

ベランダで化石採集?ゴールデンウィークの自粛中にできる家遊び 初心者が化石のクリーニングに挑戦

1年前のゴールデンウィークは、徳島に帰省して、アンモナイトを探しに行っていました。

今年は、通行手形を持っていないと四国へ渡れないそうなので、自宅で自粛しています。

1年前のブログ記事です。ずいぶん懐かしい気がします。

 

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 ベランダに置いてあった化石を含む石を小割してみました。

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使う道具は、ハンマーの大と小、タガネの大きさいろいろ。小型のドリルの先などです。

 

1年以上ベランダに置いていた石は、ひびが入り、タガネを当てるとすぐに割れてしまいます。

貝の化石が真っ二つになり、あわてて水性ボンドで貼り付けました。

 

初心者なので、思うように石が割れません。

あれこれ試行錯誤するうちに、かなり時間が過ぎていました。

 

好きなことをやっているときは、時間がたつのも忘れ、没頭しています。

今日は天気もよく、風が適度に吹き抜けていくので、本当に気持ちがいい。

 

まるで、自然の中で化石採集しているようです。錯覚を楽しみながら、小割にした化石に、水性ボンドを水で割った液を塗りつけていきます。

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これは、化石を保存するため。

ボンドと水を、1対1の割合で混ぜたものを使いました。

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黒い泥岩は徳島で採集したもの。

茶色い砂岩は和歌山で採集したもの。

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これからしばらくの間は、化石採集に行けないから、家にある石を割って、化石クリーニングに励みます。

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その5(最終回) 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その5(最終回)

関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

 

初めての人は、こちらを参照してください。

 

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 今回で最終回になりました。

 

問5 近世の学習方法と近代学校での教育方法の違いについて

 

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12段、13段、14段を見ます。

 

12段 時代の変化によっても、学習における教科書の位置は変化しない

 

13段 近代学校教育―限られた時間、多数の生徒、大量の知識→「教科」に類別、発達段階や年齢を考慮した合理的カリキュラムやプログラムにしたがってなされる

言葉によって「教え込まれ」ていく

 

14段 教える主体としての教師が中心、「教え込み」の教育方法の原理

 

これらのポイントを確認して、選択肢を見ていきます。

 

a 11段にあった「教師は~案内人」の記述に注意。後半も上で見た内容と一致するので○。

b 暗記という方法は時代遅れが×。

c どのような「教科書」を教えるかが、教師の重要な素養となっていたが×。

d 異なった「教科」が教えられることになったが×。

e 「教科書で学ぶ」という構造で成り立っておりが×。

したがって正解は、aでした。

 

問6 近代学校における「教え込み」の原理について

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これも13段、14段が該当します。

選択肢を見ていきましょう。

a 一斉授業の形式、効率的、合理的で正確に教える、概念化され理論化され言語化された知識が教え込まれるなど、すべての要素が○。

b 教える知識に段階性をもたせた「教科書」→「教科」の間違いなので×。

c 「教科書」→「教科」の間違いなので×。

d 「教科書」→「教科」の間違い、教師はさらに「教科書」の内容を補って、大量の知識を教え込むが×。

e 一定の合理的なカリキュラムやプログラムの中で追求された大量の知識が一方的に教え込まれるが×。

したがってaが正解です。

 

どうでしょう、選択肢の文言が微妙ですね。どうかと思うものもあります。これでは、あら探しにすぎないという見方もありますが…

 

気を取り直して問7です。

 

問7 日本の学校教育について

15段、16段を見ると、

15段 明治初期に導入された日本の近代学校は、ヨーロッパの近代学校教育を忠実に採り入れた。教育方法も「教え込み型」の原理

16段 しかし日本の学校の教科書観は明らかに教科書が重視されてきた。これは近世との連続性がはっきり見える。長い歴史のなかで形成された文化に滲み込んだもの

  ↓

そう気づくことで、教育の諸問題の、見えなかった「根」の部分が見えてくる。問題をときほぐす改革の手だても構想される

 

選択肢を見ると

a やがて欧米とは異なり独自の教科書観が浸透するところとなったが×。後半も×。

b あらたな改革の「根」の発見につながるが×。見えなかった「根」が見えてくるが正しい。

c 「教科書で教える」が×。

d 「根」から見直すべきことを示唆するが×。

e 欧米とは異質のように見える、長い歴史のなかで形成された文化~、「根」のところからときほぐす糸口ともなる、すべての要素が○。

したがってeが正解です。bとdが微妙ですね。まぎらわしい。

河合塾の解答も、(bとdも排除しがたい)と異例の注釈付きでした。

 

選択肢が一つ4行もあり、情報量が多いなかで、この微妙な言葉遣いの違いのみを正否の判断とするのは「いかがなものか」と思います。

これは、センター試験廃止の後の「共通テスト」を意識した設問ではないかと思われます。

端的に言うと、本質的な読解よりも、情報処理能力を重視するというものです。

これは、本当の意味の国語力ではありません

関西私学の雄である関西大学が、この情報処理力を重視する、安易な傾向に流されてはいけないと思います。

 

最後の漢字問題です。

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問8

 

あ フウチョウ 風潮 a 丁重 b 潮流 c 大和朝廷 d 調書 e 徴収 正解はb

い リンショ 臨書 a 林間学校 b 臨海学校 c 駐輪場 d 隣接 e 風鈴 正解はb

う シュウレン 修練 a 修理 b 終了 c 就寝 d 執念  e 囚人 正解はa

え ソザツ 粗雑 a 簡素化 b 粗衣粗食 c 狙撃 d 阻止  e 直訴 正解はb

お ジュンキョ 準拠 a 従順 b 潤沢 c 準備 d 巡回 e 殉職 正解はc

漢字問題は、選択肢の漢字もしっかり確認しておきましょう。他で出題されることもあるからです。

 

以上で、関西大学の問題は終わりました。みなさん、どうでしたか?

難しいところもありましたが、全体的には、標準的な(やさしいという意味ではなく)良問だと思います

現代文問題の解き方の基本を学んで、どんどん他の過去問にも挑戦してみてください。

少しでも参考になれば、うれしく思います。

 

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その4 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史  

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その4

関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

 

初めての人は、その1を参照してください。

 

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今回は、設問のみ掲載しています。本文は、以前の記事その1、その2を参照してください。

問3 手習塾の「教科書」について

 

 

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これは9段を見ましょう。

 

「手本」は、師匠が書いた手書きの「手本」―初心者

        ↓

     市販の印刷冊子の「往来物」―量をこなす、テキストの内容に重点

        |

 子どもが忠実に似せ模倣する、暗唱する対象

 

選択肢を見ると、「手本」と「往来物」を異なるものとしたのが、a、b、d、eであり、同じものとしたのはcだけ。正解はc

 

問4 「学問」(儒学)の学習における「素読」と「教科書」について

 

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これは10段、11段を見ましょう。

 

ちなみに「素読」の読みは、「そどく」です。「すどく」は×。意味を考えずに文字を声出しして読むこと。

 

教科書としての位置をしめるものー「経書」=申請で特別な書→「素読」まるごと暗唱するーみずからのうちに内在化、身体化

初学者も大学者も教科書(経書)の権威は変わらない

絶対的権威をもつ無謬のテキスト→学問とは「教科書を学ぶこと」

 

選択肢を見ると、

a 「経書」は、広く用いられた点で「往来物」とは異なっていた→×

b 暗唱によって~権威を保証するという点において→×。意味不明。

c  大学者と異なり→×

d 内在化、身体化、絶対的権威、無謬のテキスト→○

e 正確に読む努力をしなければならなかった→×

したがって、正解はd

 

どうでしたか?

問3、問4ともに、設問に関わる段落を見つけ、その内容をつかんでおくと、選択肢の吟味はそう難しくはありません。

 

前回(その3)で指摘したように、本文に○印、線引きすることが基本です。

 

その5に続く

 

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その3 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その3

関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

その1、その2をまだ見ていない人はこちらから。

 

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今回は、設問に挑戦しましょう。

問1と問2を取り上げます。

 

まずは問1から

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問1「教科書を教える」授業とはどのようなものだと筆者は考えているか、と設問にあるので、本文から対応する形式段落を確認すると、1~4段です。

設問に関わる段落(または部分)はどこかをつかむ

 

 参考のため、本文を再掲します。

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次に、選択肢を吟味します。

 

a~eの特徴は、選択肢の文が、「教科書を教える」授業とは、で始まります。

「教科書教える」となっている点に注意。「教科書教える」と間違えないこと。

では「教科書教える」授業とはどのようなものでしょうか。

1段落

近代学校における原則

・教師は「教える主体」であり、

・教科書は教えるための「教材」である

・教科書とは教師が教えるための道具や手段にすぎない

 

2段落

「教科書教える」ことが教師の役割であると考えるならば、転倒した事態となる=本末転倒

・子どもからすれば教科書が目的で、

・教師は手段や道具としての位置にすぎない

 

これらを踏まえて、選択肢を見ると

 

a教師は「教える主体」であり×

bも、教師は「教える主体」であり×

c 2段の要旨を満たしているので、これが○

dは近代学校における原則のようなものが×

eは教師は「教える主体」であり×

 

正解はCです。

文で説明すると、ややこしそうですが、難しくない問題でした。

 

次は問2です

 

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問2 日本の教科書観と教科書検定の関わりについて

これに対応する形式段落は、4~7段です。

形式段落の要旨を再掲しておきます。

 

4学校には教科書がなくてはならないものと考える

 教科書信仰=教科書を神聖視

5「教科書訴訟」の底流には「教科書信仰」的な教科書観

6文部省は教科書検定権を手放さないー国民に教育を保証するのは国家の責任

 「教科書信仰」は文部省だけでなく国民の大多数が共有

7教師側も教科書を教える方がずっと楽―教えるべき内容と範囲がはっきり書かれている、マニュアルも

  ↓

 教師を怠惰にしている

 

では、問題を解いていきましょう。

問2は、選択肢の分量が増えました。問1は1文だったのに対して、問2は、2文または3文です。

読む時間が取られる点、吟味する部分が増えた点が注意するポイントです。

選択肢の内容が本文の記述と合っていたら○、違っていたら×をつけます。

aから見ていきましょう。1文目は○、2文目は「教科書教える」が×。「教科書を教える」が正しいですね。したがって、aは×

b 1文目は○。2文目も「教科書教える」となっており○。だから、bは○です

ここで残りの選択肢も確認しておきましょう。

c  1文目「常に衝突が~」が×。3文目も「教科書観が大きく変わっていった」が×。cは×。

d 1文目は「近代学校教育の目的なので」が×。したがってdは×。

e 1文目は「教育現場の教員には多い」が×。2文目も×。したがって、eは×。

正解はbでした。

実際に問題を解くときには、制限時間があるので、ゆっくり吟味する時間が取れないことが多いです。

少しでも×の部分があれば、その選択肢は除いて、正解を絞り込みましょう。これが消去法と呼ばれるやり方です。

 

今回のまとめ

 

今回は、問1と問2をやりました。関西大学の問題の特徴は、漢字や語句問題から始まらずに、いきなり内容を問う問題が続いている点です。

 

本文の読解をしっかりやって、○印や線引きを駆使して、どこに何が書いてあったかを視覚化することがポイントです。

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その2 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その2 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

前回の続きです。その1を見てから読むことをおすすめします。

 

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 続きの問題文を読んで、○印をつけ、線を引く作業をやりましょう。

2ページからです。

赤色の線が、前回よりも細くなってしまいました。やや見づらいかもしれません。

2ページ

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2ページに○印と線を入れたものです。

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3ページ

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3ページに○印と線を入れたもの

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4ページ

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4ページに○印と線を入れたもの

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5ページ

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5ページに○印と線を入れたもの

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15分程度でできましたか?

 

時間がかかった、線を引いた箇所が違った、どこに線を引くかわからない、などいろいろ思うことがあるでしょう。

でも、全然かまいません。

やっているうちに慣れますから。

 

形式段落の要旨を載せておきます。数字は形式段落の通し番号です。

 

5「教科書訴訟」の底流には「教科書信仰」的な教科書観

6文部省は教科書検定権を手放さないー国民に教育を保証するのは国家の責任

 「教科書信仰」は文部省だけでなく国民の大多数が共有

7教師側も教科書を教える方がずっと楽―教えるべき内容と範囲がはっきり書かれている、マニュアルも

  ↓

 教師を怠惰にしている

8近世と連続した意識―手習塾や儒学の学習

9手習塾は「手本」を教科書に習字学習する

 「手本」という「教科書」のない手習塾はない

  ↓

 「教科書を学ぶ」構造で成り立っていた

10儒学は絶対化された経書をひたすら学び続けること

11儒学の学習において経書という「教科書」は絶対的権威をもつ無謬のテキスト

 学問は徹頭徹尾「教科書」を学ぶこと

 教師は「教科書を教える」ことを任とする人、経書に導く案内人

12学習の方法はメタ・レベルのものー文化に滲み込んだもの=簡単に変化するものでない

 近代になっても教科書観自体に変化は起こらなかった 

13近代学校教育は、教師が多数の生徒に、一斉授業の形式によって行う

 限られた時間で、効率的・合理的で正確に教えることが追求される

 概念化され理論化され言語化された知識が「教え込まれ」ていく

14「教える主体」としての教師が中心となり「教育」が構想される

 近代教育学は教師の立場からの学問

 近代学校と「教室」は「教え込み」の教育方法の原理が支配する場

15日本の近代学校は、ヨーロッパの近代学校教育を忠実に採り入れた

 教育方法も「教え込み型」の原理

16日本の学校の教科書観は明らかに教科書が重視されてきた

 近世との連続性がはっきり見える

  ↓

 教育の諸問題の、見えなかった「根」の部分

問題をときほぐす改革の手だても構想されてくる

 

問題文を最後まで根気よく読み終えることができた人は、それだけで十分、読解力ありです。普段はこんな文章を読むことがあまりないでしょう。

 

4月下旬の現在、全国の高校生は休校中です。

オンライン授業を受けている人も多いと思います。

この問題文の内容は、今の状況にも関わることが書かれているように思います。

「教え込み型」の一斉授業から離れて、学び方について考えるいい機会になるかもしれません。

 

15分でできる大学入試国語問題の解き方 入門編 その1 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

 関西大学 2020年 全学日程 国語 『「学び」の復権ー模倣と習熟』辻本雅史

国語問題の解き方を説明します。

入門編なので、すでにわかっている人は、他の勉強をしてください。

第1問の評論を解いてみましょう。

  1. 形式段落(1マス下がったところ)に通し番号を付けます。
  2. 本文の接続語、重要語を○で囲みます。
  3. 大事だと思う部分に線を引きます。

初めは適当にここだと思う箇所にどんどん線を引いてください。

慣れてくると、筆者の主張が述べられた部分に線を引けるようになります。

 

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次の画像に、通し番号、○印、傍線を赤色で書きました。参考にしてください。

みなさんは、シャープペン、鉛筆の黒色でかまいません。

漏れがあったり、違うところに線を引いていたりしても、大丈夫です。

やっているうちに慣れてきますから。



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段落要旨

形式段落の要旨をまとめました。

 

1日本の先生は、教科書を教えることが授業だと思っている。

 近代学校の原則は、教科書で教えるというのが本来

2教科書が目的で教師は手段や道具の位置に転倒している

3日本の教科書観と教師観はこの本末転倒

4学校には教科書がなくてはならないものと考える

 教科書信仰=教科書を神聖視



ここまでの作業をやってみて、まずは読解でやることが理解できましたか?

現代文は、「手で解く」ことが大事です。

 

今回は、ここまで。

 

本文の続きは、次回に掲載します。

 

 



 

家でできる趣味生活 化石クリーニングに挑戦した結果、何これ?という物体が出てきた

前回の続きです。

 

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乾燥でひび割れがした母岩の化石をクリーニングし出すと、見事に割れてしまいました。

およそ1億年前の白亜紀の化石が、割れてしまった!

すごくショックです。

ボンドで接着して母岩を復活させます。

ここまでが前回の記事で紹介した内容です。

 

割れたパーツを組み合わせます。

 

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立体的なジグソーパズルのようです。やったことないけど。

 

なかなか手間がかかりました。

 

母岩が復元できました。

 

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ここで疑問が。

 

この化石、どんな形をしているのか?

 

ひらがなの「つ」文字のようでもあり、「る」文字のようでもある。

 

どこに、どのように、つながっているのか、考え込んでしまいます。

 

ネットで調べてみると、似たようなアンモナイトが「アナハムリナ」

異常巻きと呼ばれるアンモナイトです。

 

産地が同じなので、これかもしれません。

 

でもこの化石にはアンモナイトの肋が見当たらない…

 

ためつすがめつしてみると、ヘビのとぐろのよう。

 

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ちょっと不気味に思って、クリーニングを中断して、小分けのビーニール袋に入れて保管しました。

 

クリーニングの技術が向上するまで、しばらく封印します。