『マチネの終わりに』で話題の平野啓一郎さんの『私とは何かー「個人」から「分人」へ』が明治大学の入試問題に取り上げられていたので、読んでみました。
2017年 明治大学 政治経済学部 『私とは何かー「個人」から「分人」へ』平野啓一郎
以下はその要旨の要約です。
「個人」という概念ー西洋文化独特のもの
・一神教であるキリスト教の信仰ー人間には幾つもの顔があってはならない
・論理学ー分けられない最小単位「個体」
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もうこれ以上は分けようがない、一個の肉体を備えた存在ー「個人」
日常生活で、多種多様な人々と向き合う
ごく自然に、相手の個性との間に調和を見いだそうとし、コミュニケーション可能な人格をその都度生じさせ、その人格を現に生きている
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複数の人格ー不可分と思われている「個人」を分けて、その下にさらに小さな単位を考え、「分人」とする。
疑問ーそんな複数の人格だけで生きていけるのか
一人の人間の中には、複数の分人が存在している。
個人を整数の1だとすると、分人は分数
相手との関係により分子も変わる
分人には中心が存在しない。常に環境や対人関係の中で形成されるーオートマチックに
継続性を持って特定の人と関わるー人格は反復で形成される一種のパターン
生身の人間だけでなく、ネット上の相手や文学・音楽・絵画でも分人を所有
設問は、接続語や四字熟語を問うもの、空欄補充、50字以内の理由記述、欠文補充、主旨など多岐にわたります。私大の入試問題の典型です。
「分人」という抽象的な概念を取り上げていますが、じっくり読めば理解できると思います。
こういった入試問題の文章を通じて新たな知が開けるところがいいですね。
単に点が取れた、取れなかったの次元だけでなく、自分の頭がよくなったと思える文章に出会えるところが入試問題の魅力でもあります。
ちなみに著者の平野啓一郎さんは、この明治大学の問題を解かれたのでしょうか?気になりました。